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もめない介護

別居介護のストレスを減らすには情報共有がポイント もめない介護11

横断歩道を自転車で渡る女性のイメージ
コスガ聡一 撮影

親の介護が始まると、子どもと親の間だけではなく、きょうだい間の情報共有のありかたを見直す必要が出てくることがあります。

たとえば、離れて暮らすきょうだいが、それぞれ認知症の親をサポートするとします。訪問できるペースも人によってさまざま。親のもとを訪れるスケジュールそのものはある程度、事前に相談できたとしても、現場で起きることや親の反応はその場に行ってみないとわかりません。

「トイレットペーパーが切れているから買ってきてほしい」

親からリクエストされるままに買いに行ったけれど、実は先週、他のきょうだいが訪れたときに、たっぷりストックが買ってあったということもあります。逆に、「大丈夫。まだある」という親の発言が記憶違いや勘違いだというケースも。

些細なすれ違いも、度重なるとイライラの原因になります。

介護者みんなで情報を共有するためには

「お母さんは認知症なんだから、うのみにしないでちゃんと確認してよ」
「そっちこそ、きちんと伝えておけばいいでしょ」
「だいたい、アンタはいつもそう……!」
「いつもって、何なの!?」

協力し合って、親のサポートをするはずが、きょうだい喧嘩に発展してしまっては本末転倒です。では、どうやって情報を共有するか。

介護が必要になったご家庭でよく使われている方法として、ケアマネジャーさんやヘルパーさんに教えてもらったのは「『情報共有ノート』を用意して、家族はもちろん、ケアチーム全員が日付と一緒に、他の人にも知っておいてほしいことを書き込む」という方法でした。

たとえば、「トイレの洗剤がもうすぐなくなりそうなので買っておいてほしい」といった要望があるときは、その旨をノートに書いておく。次に訪問した人はまずノートをチェックし、そこに書かれているリクエストに対応します。

この方法は1冊のノートに情報が集約されるのが最大のメリット。全員が同じノートを見るので経緯も把握しやすくなります。ただ、訪問頻度が少ない場合、ノートにリクエストを書いても、次の人が対応するまでのタイムラグが発生するというデメリットもあります。

ネット通販などの活用も

うちの場合はまさに後者のパターンで、介護が始まったばかりのころは、ヘルパーさんの訪問が週2回、家族の誰かが実家に行けるのは月に2~3回程度。そこで、ケアマネジャーさんとも相談し、「日用品の購入希望も含めたヘルパーさんからの情報」は、キーパーソンであるわたしに連絡をもらい、義姉や夫とは無料対話アプリ「LINE(ライン)」のグループトークを使って相談するという方法をとりました。

たとえば、ヘルパーさんから「シャンプーがもうすぐなくなりそうです」と連絡が入ったとき、近日中に訪問予定があれば、実家に行く途中などに買って行きます。訪問予定まで間があくようであれば、Amazonや楽天などネット通販を使い、実家に直接送っていました。

認知症介護が始まったばかりのころは、義父母だけでも宅配便の受け取りはできていました。でも、ほどなく、ダンボールの始末が難しくなっていることがわかり、配達時間はできる限り、ヘルパーさんがいる時間にあわせて調整。到着する商品の内容や時間はあらかじめ、ヘルパー事務所にも連絡しておくようになりました。

義父母の要介護度が上がり、ヘルパーさんがほぼ毎日訪問する体制になって以降は、前述の「情報共有ノート」に移行。義父母は自分たちだけで買い物に行くのが難しくなり、ヘルパーさんにお願いするようになったというのも、ノートに移行した理由のひとつです。

自分も相手も無理のない介護を目指して

普段の買い物については、ヘルパーさんが義父母の意向をヒアリングした上で、各曜日の担当さん同士で情報共有。家族は、ケース買いしているペットボトルのお茶や水、尿パッドやリハビリパンツなど適宜補充していくという役割分担に変わっていきました。できるだけ早く対応したほうが良さそうなことについてはノート記入ではなく、これまでどおり、直接、電話やメールで連絡をもらって対応。「いつなにをネット通販に注文したか」「次回の訪問時になにを買う必要があるか」といった情報は、家族のLINEグループ(義姉、私、夫が参加)でも共有しています。
それでも、時には「LINEグループに書いておいてくれればいいのに」あるいは「書いてあったのに……」という行き違いが発生します。

介護の状況や、かかわるメンバー次第で、ベストな情報共有や買い物の方法は変わります。「自分も無理をしないし、相手にも無理をさせない」をどう実現するか。ストレスが少ない方法を探ることは、介護ストレスの軽減につながっていきます。

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