不穏な満月の夜 食欲を刺激するワンプレート 認知症の母が喜ぶ毎日ごはん
撮影/百井謙子
フードライター大久保朱夏さんが、認知症のお母さんとの生活のなかで見いだしたレシピを紹介します。食欲が落ちた時は、ワンプレートメニューがおすすめ。一口で栄養素をバランス良くいただけます。
※料理は普通食です。かむ力やのみ込みに配慮した介護食ではありません
昨日と今日、今日と明日が同じように続いていくのは、元気な証拠。
どういうわけか満月の日は、朝から不穏で、夜も興奮して寝てくれないことが多かった。デイサービスから帰宅すると不思議な話をしはじめた。
「そんすけくんという変な名前をつけられた男の子が、住所がわからず、ママがいなくて何もできず困っていた」と言う。そんすけくんの「そん」は、損得の損と書いて損助くんらしい。「なんとも気の毒な名前だね、なんでそんな名前をつけたのかな?」と、聞いてみると「少子化の影響なのよ」と答えた。母なりの解釈があるようだ。かわいそうな損助くんの話が繰り返され、私は夕食の支度をしながら相づちを打つ。住所がわからず、何もできずに困っていた損助くんは、頭が混乱した母の分身なのだろうか……。
こういう不穏な日は集中力も食欲も落ちるので、ワンプレート料理の方がいい。エネルギーになるパスタと、たんぱく質食品の魚がひと皿でとれる、さば缶とミニトマトのペンネは喜んで食べてくれた。作っているときから、にんにくの香りで食欲を刺激する。
さば缶とミニトマトのペンネ
ロングパスタはフォークにうまく巻きつけられず、食べにくそうでした。パスタを短く折ってゆでる方法もありますが、多少のびてもおいしく食べられるペンネがおすすめです。さばとトマトのうまみたっぷりなので、少し時間がたってからでも美味! 食欲が落ちているときは、何回かに分けて召し上がってください。
材料 2人分
ペンネ 乾100g
さば水煮缶 1缶(190g)
小松菜 1/2束(100g)
ミニトマト 10個
オリーブ油 大さじ1
にんにく(つぶす) 1かけ
赤唐辛子(種を除く) 1/2本
しょうゆ 小さじ1
塩・粗びき黒こしょう 各少々
作り方
- 小松菜は約5cmに切り、ミニトマトはヘタを除いて半分に切る
- ペンネは分量外の塩で袋の表示時間どおりにゆでる。ゆであがる1分前に小松菜を加えて、ペンネと一緒にざるにあげる
- フライパンにオリーブ油、にんにく、赤唐辛子を入れて火にかけ、香りが出たらミニトマトを加えて炒める
- トマトの汁気が飛んできたらさばの水煮を加えて1分ほど炒め、さらに2を加えて全体を和える
- しょうゆ、塩少々で味をつけ、黒こしょうをふる