「雨ニモマケズ」は熱中症対策の呪文? 認知症の母が喜ぶ毎日ごはん
撮影/百井謙子
フードライター大久保朱夏さんが、認知症のお母さんとの生活のなかで見いだしたレシピを紹介します。食前のお散歩と音読。喉の渇きから自然と朝食のお吸い物に手が伸びます。水分を嫌がる母に、さりげなく熱中症対策。
※料理は普通食です。かむ力やのみ込みに配慮した介護食ではありません
雲行きが怪しい梅雨寒のある日、朝食前に母と散歩に出かけた。
実家がある団地の緑道をぐるりと1周、普通なら2〜3分もあれば歩ける距離だが、体の動きが悪くなってきたため、15分ほどかけて散歩する。
紫陽花が大きく揺れるほど強い風が吹いたとき、母が「風ニモマケズって言うわよね」と、言った。
「雨ニモマケズは宮沢賢治だよ」と教えると、母もそこから記憶をたぐり寄せて、「ソウイウモノニワタシハナリタイ、か」と言う。
母に「雨ニモマケズ」を音読してもらおうと思いつき、夫に頼んで大きなカレンダーの裏に書き写してもらった。やることがなくなって落ち着きがなくなったときに、一緒に音読を始める。母はよく「南ニ死ニサウナ人アレバ 行ッテコハガラナクテモイイトイヒ」のところで涙をためた。口にはしないが、死に対する恐れがあるのかもしれない。
そして、「ソウイウモノニワタシハナリタイ」のところで、母は「えらいわねぇ、どんなお母さんに育てられたのかしら?」と、いつも同じことを聞いてくる。
試してみればわかっていただけるだろうが、音読すると喉が渇く。
日ごろ、トイレに行きたくないと水を飲むのを嫌がったが、食前に散歩と音読をすると水も飲んでくれるし、朝ごはんのお吸い物もゴクリゴクリ。汁物から水分がしっかりとれる。ズッキーニは初夏の定番のお吸い物だった。
ズッキーニのお吸い物
ズッキーニは軽く火を通すと透明感が出て涼やかに。蒸し暑さでバテ気味でも、さっぱりいただけるお吸い物になります。しょうがの香りがアクセントになり、さわやかに。冷蔵庫で冷しても喉ごしよくいただけます。
材料 2人分
だし汁 400ml
みりん 小さじ1
塩 小さじ1/2
しょうゆ 少々
ズッキーニ 1/2本(80g)
しょうがのせん切り 適量
作り方
- ズッキーニは縦半分に切り、厚さ7〜8mの半月切りにする。
- 鍋にだし汁、みりん、塩、しょうゆを入れて中火にかける。沸騰したらズッキーニを加えて、1分ほど煮て火を止める
- お椀に2を注ぎ、しょうがのせん切りをのせる