ウソも方便。認知症外来を勧める時のポイントは? もめない介護7
編集協力/ Power News 編集部
親の様子で気になるところがある。年相応のもの忘れかもしれないけれど、認知症を思わせる言動もあって、「もの忘れ外来(認知症外来)」を受診したほうが良さそう。でも、親にどう切り出せばいいかわからない……。そんな悩みをよく聞きます。
「ストレートに伝えすぎたのか、父親が『親をなんだと思ってるんだ!』と怒り出して……」(58歳・男性)、「必要があれば、自分で行くからいいと拒否されてしまった」(62歳・女性)と失敗談は尽きません。また、中には「『考えすぎだ』とほかのきょうだいから非難された」というケースも。
一方、首尾良く受診につなげられた例としては「『健康診断』という名目で病院に連れて行った」(62歳・女性)、「かかりつけの内科で医師から『念のため詳しく検査しましょう』と専門外来の受診を促してもらった」(52歳・女性)、「『娘である私の受診に付き添ってほしい』という口実をでっち上げた」(45歳・女性)など。必ずしも正直な理由を言う必要はない……というより、むしろ、“ウソも方便”で受診にこぎつけていることがわかります。
ただ、自分がいざ、こうした事態に直面してみると「疑われて根掘り葉堀り聞かれるのでは……」「ウソがバレたら余計こじれるのでは?」とモヤモヤ。なかなか腹をくくれず、取った手段が「家族受診」でした。文字通り、まずは本人を除く家族だけで受診することを指します。
作戦失敗!?「家族受診」に現れぬ義父
当時、義母はもの忘れに加えて、「2階にドロボウがいる」「洋服を盗まれた」といった発言もありました。また、亡くなった祖父(義母の父)が遊びにきてくれたと話したり、義父がいなくなったと言って、外に出て行ってしまったり……といった行動も見られました。
まずは私と夫、義父の3人で受診し、義母の言動を相談。どうすればスムーズに義母の受診が実現するか、プロにアドバイスをもらおうと考えたのです。
ところが!
受診当日、待ち合わせ場所に行くと、義父の姿がありません。怪訝に思い、電話をかけると、なぜか義父はまだ自宅にいました。しかも、義父から「家内は外出の予定がある」と聞いていたのに、義母も一緒だと言うのです。
私たち夫婦は混乱しながら、夫の実家に向かいました。到着すると「みなさん、そろってどちらにおでかけ?」などと言いながら、上機嫌の義母が現れます。どうやら、義父が「家族みんなでおでかけ」をでっち上げたらしいのです。
怒り心頭の母を納得させた驚きの一言
あらかじめ相談してあった段取りをすべて無視した義父の行動に驚き、呆れ、(いったい、どうなってしまうのか……)と不安にも思いましたが、結果としてはファインプレー。はからずも、家族受診のステップを飛ばして、本丸である「もの忘れ外来受診」攻略に成功しました。
もっとも、騙し討ちのように見知らぬクリニックに連れてこられた義母は不審がり、不機嫌にもなりました。ただ、もの忘れ外来の医師や看護師は慣れたもの。うまく対応し、認知症にまつわる問診や診察を実施。すみやかに確定診断が下り、認知症治療をスタートさせることができたのです。
怒り心頭だった義母も、私が「もともとは夫(息子)のもの忘れが心配で受診したんだけど、そのついでにおかあさんも診てもらった」と伝えたところ、あっさり納得。苦し紛れの言い訳がまさかのヒットで、いろいろな意味で驚きっぱなしの1日となりました。