話を繰り返す祖父母には「レバニラ大盛り7人前」これって介護の裏技?
青山ゆずこです! 祖父母がそろって認知症になり、ヤングケアラーとして7年間介護しました。壮絶な日々も独学の“ゆずこ流介護”で乗り切ったけれど、今思えばあれでよかったのか……? 専門家に解説してもらいました!
その話何百回繰り返すの?
文句やグチ、または思い出話など、気になったら何十回、何百回も繰り返し聞かされ続けることがあります。最初のうちは毎回違うリアクションを心掛けていても、それが続くと結構ツラいものがあります。ウチの場合は、ばーちゃんが感情的になって何時間も話し続けてしまう地雷がありました。それは、うそか誠か、昔はモテ男だったらしいじーちゃんの浮気話です。
「あの人は月曜に出て行って、日曜まで帰ってこなかった」など、突然脈絡もなくグチが始まり、お風呂に入ってもご飯を食べても、テレビを見ても一向に止まりません。
ゆずこの必殺ワザ「レバニラ大盛り7人前」とは?
自分のリアクションの引き出しの少なさに落ち込みつつも、ある変化に気付きました。それは、ばーちゃんの話に対して「どんな内容の言葉を返しているのか」ではなく、声色や表情など「どんな姿勢でどんな風に話を聞いているか」リアクションを重視しているということ。何かのきっかけで言葉が溢れ出すけれど、それに対して明確なアドバイスや会話のキャッチボールを求めているわけではまったくないと! むしろ、内容なんてほとんど聞いちゃいないのです。
「浮気性のじーちゃんに苦労させられた」という何万回も聞いた話でも、若造のわたしの意見なんて何を言ってもスルーされるだけ。それよりも、もの凄く驚いた顔で盛り上げてみたり、過剰な反応をするだけで、喜んでノリノリで話してくれます。言葉より表情。というか、オーバーリアクションだけでもいい感じに話が進みます。
相手の話を完全無視するのではなく、果てしなく繰り返されるので最初の1回を真面目に聞いておけば問題なし!
力の抜きどころも分かったからか、同じ話が繰り返される中でやってみたくなったのが、「表情と声色だけちゃんとすれば、何を言ってもバレないのか?」という挑戦です。
苦労話を何時間も語るばーちゃんに対して、「大変だったね」というような声のトーンと真面目な表情で、『レバニラ……』。「え、うそ!」と少々驚いた声のトーンで、『お、大盛り!?』。「それはひどいね……」と、驚きつつも相手をちょっとねぎらうトーンで『7人前ねぇ……』。
怪しまれることもバレることも一切なく、『レバニラ、大盛り、7人前』成功しました。真面目に向き合うだけじゃなく、自分の中で遊べる余裕も大事。
ただし『餃子には、酢コショウが、マイブーム』と挑戦してみたところ、「何をふざけたことを言ってんだい」とマジ突っこみを受けてしまったので、挑戦もほどほどに。
共感する力と「ある工夫」で状況は変えられる
こんなふざけた(?)ゆずこの対応策ですが、長年、高齢者医療に取り組んでいる横浜相原病院の院長で、『認知症は接し方で100%変わる!』(IDP出版)の著者、吉田勝明先生は「表情に加えて共感することも重要」と言います。
「もう一つの作戦としては、相手の話にとにかく共感してみること。言葉が欲しいわけでないのはゆずこさんもお分かりのようですが、意見を言うのではなくて、感覚を共有するだけでもいいのです。『大変だったわね~』という言葉だけでも会話は成立しますし、『自分のことを理解してくれる』という信頼感にも繋がります」
さらに奥の手として、「グチにはのっかる」作戦も。
「たとえば今回の場合だと、おじいさんへのグチが止まらないときに、あえてゆずこさんが『そんなひどい人だったの!?』『わたしならそんな人と一緒になれないわ』と大げさに言うんです。すると、相手は意外と『いや、そこまでひどくはないのよ……』と、肯定したりする(笑)。『実はこんないいところもある』と肯定してきた場合、その素敵な話を掘り下げてみる。自然と明るく楽しい話に方向転換することもできますよ」
煮詰まってしまう前に、ちょっとした工夫で自分も楽しんでしまうくらいの余裕が大切かも知れません。
〈つぎを読む〉認知症のばーちゃんに女中扱いされた孫の逆襲 これって介護の裏技?
- 吉田勝明先生
- 横浜相原病院院長。日本老年精神医学会専門医・精神科専門医。「今を楽しく」をモットーに、認知症の患者と全力で向き合う。著書に『「こころ」の名医が教える 認知症は接し方で 100%変わる!』(IPD出版)など。