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「私たちはどう生きるか」認知症の7人がトーク 当事者サミット2

2018年12月、八王子ケアラーズカフェ「わたぼうし」と八王子市の共催で「eまちサミット~認知症になっても、みんなが笑顔になるまち~」が開かれました。前回に引き続きその様子をレポートします。

ユーモアのある丹野智文さん(右手前)の進行にかかれば、7人の当事者も本音が
ユーモアのある丹野智文さん(右手前)の進行にかかれば、7人の当事者も本音が

まだまだやりたいことはたくさんあるし、できるよね!

「eまちサミット」第2部では認知症当事者7人が登壇し、丹野さんの司会のもとで思いのたけを打ち明け合う「D7プラス1『認知症当事者からの発信』」が開かれました。
D7とは「ディメンシア(認知症)7」の略、7人のメンバーはこれまで1都6県をめぐってトークセッションを行っており、八王子が最終地点ということです。

丹野さんが「皆さん、これからどう生きていきたいですか」と尋ねると、誰もが笑顔でこんなふうにイキイキと語ります。
「私は自分が認知症とは認めておりません(笑)。普通の人間として普通に生きていきたいです」(根本功さん)
「実は最近、仕事が決まったんですよ。うちにはまだ学生の子どもが1人いて、お金がかかりますので、ありがたいことだと思っています」(中田哲行さん)
「もうじき69歳になります。子どもも大きくなり、親としての責任は果たしたと思っています。いままで企業戦士として働いてきましたし、ゴルフをしたり若いお姉さんとお酒をのんだり、やりたいことをやっていくつもりです」(竹内裕さん)
「月曜から金曜までボランティア活動をしています。月水金はデイサービスで、土日は自宅のある団地で働いています。定年まで国際協力機構(JICA)に勤めており、海外旅行も好きです。人種や宗教などの違いはあっても地球に生まれた人間であることは一緒、人とのつながりを大事にしたいと思っています」(永田邦昭さん)

当事者が何をしたいかを聞いてくれない認知症カフェはつまらない

丹野さんは、「認知症カフェに行くと病名や困っていることを聞かれ、せっかく話が盛り上がったところでさえぎられて『折り紙をしましょう』などといわれてしまう。当事者が何をしたいか聞いてくれないから、正直おもしろくないんですよね」といいます。

すると、広島で当事者同士の親睦会「たぬき倶楽部」を主宰する竹内さんが「折り紙はイヤだね」と返し、たぬき倶楽部の活動を紹介しました。
「うちのクラブでは、たとえば夜7時から中学校の校庭を借りてナイターでソフトボールをやったりしています。そうすると、甲子園出場経験のある元高校球児が来てくれたりしてね。若い女性たちが来てくれて、デパートでお茶会をしたりすることもあります。催事の決まっていない例会では、集まったメンバーに『今日は何する? ボーリングそれともカラオケ?』と聞くようにしています」

丹野さんが、「当事者同士でスポーツをするというと、すぐに『危ないでしょ』『ケガしたら誰が責任をとるの』という話になって、そういう発想にならないんですよね」と問いかけると、竹内さんは「ソフトボールをするときは必ず1回200円の簡易保険に入ってもらい、自己責任で楽しむことを徹底しています」と答えます。

行政が進めている認知症予防の取り組みについても、当事者ならではの声が聞かれました。
「『認知症にならないように頑張りましょう』という目標を掲げて予防教室などを行うと、そこで頑張ってきた人たちが当事者になったときに落第者のレッテルを貼られてしまい、外に出られなくなってしまいます。それより『認知症になってもいい、皆で支えるよ』という社会をつくるんだというメッセージを伝えてほしい」
丹野さんがそう指摘すると、「認知症は老化と一緒で予防できない。認知症になっても楽しく暮らしたいという気持ちに応える必要があるんじゃないかなぁ」(竹内さん)、「認知症予防よりは全身の健康増進が大事。手を振って大股で歩き、顔を左右に動かしていろいろなものを見るようにしています」(根本さん)といった声が聞かれました。

左から前田隆行さん、丹野智文さん、竹内裕さん。真剣な話をしつつ笑いが絶えません
左から前田隆行さん、丹野智文さん、竹内裕さん。真剣な話をしつつ笑いが絶えません

認知症サポーターの皆さん、オレンジリングをつけてください

第3部では、NPO法人「町田市つながりの開」理事長の前田隆行さんの司会のもと、丹野さんと竹内さんが当事者と家族や周囲の人々の「パートナーシップ」のありかたについて意見交換しました。
丹野さんは、「サポーターというと、当事者がサポートされなくてはいけない存在ととらえられてしまいます。当事者を一緒に生活を楽しむパートナー、仲間と考えてほしい」と訴えます。

「とにかく大きなお世話をする人が多すぎます。たとえば『トイレはどこですか』と聞いたとき、場所を教えてくれたり入口まで案内してくれたりするのはいいけれど、一緒に入ってきて隣に並んで用を足されたりすると出るものも出なくなってしまう(笑)。介護施設のサービスはこれに似てますね」
竹内さんは、「大きなお世話より小さな親切だよね。ぼくはまだわからないことを聞くことができるけど、文字が書けない、話せない人はなかなか難しい。外出先で助けてほしいと思ったとき、『オレンジリング』をつけた人がいるとありがたいよね」と指摘します。

オレンジリングとは、「認知症サポーター養成講座」の受講者に修了証とともに授与されるシリコンバンド(ブレスレット)のこと。竹内さんによると「認知症サポーターが全国で一千万人を超えたというのに、日ごろからオレンジリングをつけてくれている人まだまだは少ないんだよね」ということです。
丹野さんは、「この前、子どもの学費を払いに銀行窓口に行ったら、認知症サポーターの銀行員の方が『ATMのほうが手数料安いから』と案内してくれて操作を手伝ってくれました」と、街に認知症サポーターが増えたことを歓迎します。


その一方で、丹野さんは「認知症サポーターの方々に助けてもらうにしても、こちらから病名を伝えなければいけない。その最初の勇気はたいへんなものですよね」と指摘し、こんなふうに言葉をつぎます。
「ぼくらが好きなことをして笑顔で過ごせるのも、周囲の人々に当事者であることをオープンにし、できないことを助けてもらい、仲間としてできることをするという成功体験を重ねてきたからですよね。そのためにも、まずは当事者同士が出会い、経験を話し合うことが大切だと思います」

車座にD7のメンバーが一人ずつ加わると、話を聞き漏らすまいと体を乗り出す人もみられました
車座にD7のメンバーが一人ずつ加わると、話を聞き漏らすまいと体を乗り出す人もみられました

当事者と来場者が車座になって熱気あふれるディスカッション

eまちサミットの締めくくりは、来場者が登壇したD7のメンバー1人ひとりを囲んで車座になって自己紹介し、この会に参加した感想、当事者として、家族として、介護スタッフとして、日常生活で困ったこと、工夫していることなどを互いにシェアする「座談会」です。

このセッションでは、当事者や家族が認知症であることをオープンにすることでデメリットはないか、「物盗られ妄想」にどう対応したらよいかといった切実な問題に対し、それぞれが知恵を出し合いました。また、回想法や音楽療法などの非薬物療法を実践している当事者の体験談が語られたグループもあったようです。


来場者の1人は、こんな感想を聞かせてくれました。
「以前、『痴呆』と呼ばれた病気が認知症という病名になったいまでも、まだこの病気に対する正しい理解が進んだとはいえません。この会に参加した私たち1人ひとりが発火点となり、家庭や職場に帰って正しい理解が進むよう啓発に努めていかなければいけないと感じました」
冬の夕刻、それぞれに問題を抱えて来場した人々が、それぞれ上気した明るい笑顔で帰途につく姿が印象的でした。

パーソナリティの前田隆行さん(中央)と、守谷卓也さん(中央右)。脱線しながらのトークが肩肘張らない番組に仕上げています
パーソナリティの前田隆行さん(中央)と、守谷卓也さん(中央右)。脱線しながらのトークが肩肘張らない番組に仕上げています

ラジオ放送をこっそり収録「裏サミット」

大盛況のうちに幕を閉じたサミット。来場者が続々と出口に向かう中、登壇者控室ではこっそりラジオ収録が行われていました。ホワイトボードに大きく書かれていたのは、前田隆行さんがパーソナリティを務める「これからの介護~nea~(ネア)」の番組名。その名のとおり、これからの介護についてゲストとトークし、インターネットラジオ「町田大学ラジオ放送局」で不定期に公開しています。最初はゲスト出演だった「DAYS BLG! はちおうじ」代表の守谷卓也さんも途中からパーソナリティとして参加し、この日も2人体制でゲストを招いていました。

収録を横目に帰り支度をするほかの登壇者たちのざわつきが、なんとも言えない臨場感です。
ゲストは福祉を学んでいる大学生や、すでにデイサービスで働いている社会人など3組6人。前田さんと守谷さんは、「今日のサミットに参加して、何か変わったことや感じたこと」を質問する……はずが、トークの最中で帰っていく登壇者に「あ、帰る?」と話しかけてゲストそっちのけであいさつが始まったり、収録外の予定の話をしたりと、なんとも自由気ままに進んでいきます。

ただ、ひと息つけば質問を再開し、しっかりと答えを回収するところがさすがパーソナリティです。サミットを通してこれからの介護に必要なもの、そこに必要な意識などの話は、こちらで少し笑いながら聴けます。

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