1億人のスイッチを切り替える

「認知症は嫌」、それって知ったかぶり? ~認知症フレンドリーを目指して1

「1億人のスイッチを切り替える」と題したトークセッション

「1億人のスイッチを切り替える~認知症フレンドリー社会を目指して」

詳報1/全3回

「なかまぁる」は9月22日、認知症の母親との日々をブログなどで発信するフリーアナウンサーの岩佐まりさんと、「注文をまちがえる料理店」発起人の小国士朗さんにご登壇いただき、トークセッションを開催しました。進行役は「なかまぁる」編集長の冨岡史穂が務めました。3回に分けてお伝えします。

明るい介護ブログが人気

岩佐まりさん(以下、岩):ケーブルテレビなどでキャスターやリポートをしています。55歳で若年性認知症を患った母は、現在70歳。15年間、このアルツハイマー型認知症と向き合ってきました。私はアナウンサーの仕事をしながら、在宅で、シングルで介護しています。

フリーアナウンサーの岩佐まりさん
フリーアナウンサーの岩佐まりさん

私はブログ(「若年性アルツハイマーの母と生きる」 岩佐まりオフィシャル介護ブログ)をやっているんですけれども、これが介護ブログでけっこうな人気なんですよ。つらいことや悲しいこともたくさんあるなかで楽しいこともいっぱいあるよ、というような、本当に明るいブログです。

小国士朗さん(以下、小):私は2003年にNHKに入って、「クローズアップ現代」や「NHKスペシャル」といった情報系のドキュメンタリー番組を作るディレクターでした。2013年に9カ月間、広告代理店で企業留学して、戻ってからは番組を一切作らず、番組以外の方法でどうやったら情報や価値を届けられるかというチャレンジをしてきました。

「注文をまちがえる料理店」発起人の小国士朗さん
「注文をまちがえる料理店」発起人の小国士朗さん

大切なことをどう伝えるか、というチャレンジ

「注文をまちがえる料理店」は、そのチャレンジの一環と言いますか、テレビとは違う形で大切なことをどうやって伝えられるだろうかとという考えから、立ち上げました。注文を受けて配膳するホールスタッフがみんな認知症の方のレストランです。認知症介護のプロである和田行男さんという方のグループホームを「プロフェッショナル仕事の流儀」という番組で取材したときに、このコンセプトを思いつきました。

ロゴデザインは、テヘッと笑って、ペロッと舌を出す、間違えたときのおばあちゃんの表情をモチーフにしています。大事にしたのは、「間違えちゃったけど、まあいいかと言える社会になったらいいよね」ということ。昨年6月と9月の2回オープンして、たくさんの反響をいただきました。海外メディアからも注目され、世界150カ国に発信されました。

「注文をまちがえる料理店」は今、一般社団法人になっています。僕はこの7月にNHKを退局して、フリーのプロデューサーとしてやっています。

注文をまちがえる料理店 正規
注文をまちがえる料理店のロゴ

編集長・冨岡史穂(以下、冨):介護する家族の立場として認知症と向き合っている岩佐さん、社会課題を自分の力を生かしてどう解決するかという視点で認知症に関わる小国さん。私は自分の取材テーマであり、最近は自分もいつか認知症になるかもしれないという思いがあります。このように、三者三様の視点から、話を進めていきたいと思います。

お二人が会うのは今日で2回目ですが、岩佐さんから小国さんに聞いてみたいことはありますか。

「なかまぁる」編集長の冨岡史穂
冨岡史穂「なかまぁる」編集長

岩:なぜそもそも「注目をまちがえる料理店」をつくろうと思ったのか。どうしてここまで認知症に関して伝えたいという思いが芽生えたのでしょうか。

間違いは、周囲が受け入れれば間違いじゃなくなる

小:取材で訪れた和田行男さんの施設は、認知症になっても最後まで自分らしく生きることを支える介護を目指しているグループホームでした。だから入居者は掃除、洗濯、炊事、なんでもやるんです。ある日、献立がハンバーグだと聞いていたんですけれど、僕の目の前に出てきたのがギョーザで。そのことに僕は「違いますよね」って言おうとしたんですけど、そんなこと気にしているのは僕だけでした。当の本人も介護者も何も気にしていない。そのことに、僕はすごく恥ずかしさを覚えました。

おいしければ、どっちでもいいじゃないですか。間違いっていうのは、その場にいる人たちが受け入れてさえしまえば、間違いじゃなくなるんだということに気づかされたんです。こっちの世界のほうが、よっぽどすてきだなと思って。こういうすてきな風景をふつうに街の中につくってみたいと思いました。

「あ、おもしろいな」が認知症のハードルを下げる

恥ずかしいんですけど、和田さんの施設に行くまで、認知症にはネガティブなイメージがありました。だから全然違う世界がそこにあったので感動というか、びっくりした。僕みたいに、認知症って言葉は知っているけど実は知ったかぶりしている人って多いんじゃないかと思って。僕みたいな知ったかぶりしている人に向けて、認知症へのハードルを低くして触れられる場所をつくりたいっていうのが一番のモチベーションでした。

最後の写真 フレンドリー1本目
認知症の「ハードル」について語る小国さんと岩佐さん(右から)

岩:「注文をまちがえる料理店」の本を読んだときに、認知症へのハードルが下がったなと思ったんです。認知症って、どこか隠さなきゃいけない、嫌な病気だ、恥ずかしいっていう印象があって、家族や自分が認知症になったって言えなかったりする。でも、そんなに認知症って嫌ですかって私は問いたいです。そんなに恥ずかしいですか。私の母はそんなに変ですか。

母は一生懸命子どもを育ててきて、55歳で病気になったわけですけど、そしたら周りからの目線が変わってしまう。行き場がなくなった。仕事がなくなった。でもこれで本当にいいんでしょうか。この病気は、誰しもが向き合うことになると思うんですよ。そのときに、そういう白い目で見られるような状況であってはいけないと思っているんです。

「注文をまちがえる料理店」のロゴデザインの「る」がひっくり返っているところは、笑いにもっていってくださった。こうすることによって、世間の目が「あ、なんか面白いな」と捉えてくれたと思うし、興味をもってくれた人がたくさんいたと思います。こうやってもっとハードルを下げて、嫌なもの、苦しいものではない何かを伝えていけたらいいなって思います。

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