1億人のスイッチを切り替える

デートで介護を話題に。そのとき相手の男性は  ~認知症フレンドリーを目指して2

(右から)小国さん、岩佐さん、冨岡編集長

「1億人のスイッチを切り替える~認知症フレンドリー社会を目指して」

詳報2/全3回

認知症の母親との日々をブログにつづるフリーアナウンサーの岩佐まりさん、「注文をまちがえる料理店」発起人の小国士朗さんとのトークセッション詳報です。進行役は「なかまぁる」編集長の冨岡史穂が務めました。

クマのぬいぐるみが便器に さてどう考える?

小国士朗さん(以下、小):これは僕からの岩佐さんへの質問です。ブログや本を読むと、笑える話が結構あります。もちろん葛藤や大変な部分もあるのですが、お母さんとの日常を笑って突っ込んでいくようなコミカルな描写もたくさんあって。発信するときは、どんなことを意識しているのでしょうか。

フリーアナウンサーの岩佐まりさん フレンドリー2本目
フリーアナウンサーの岩佐まりさん

岩佐まりさん(以下、岩):ものって考えようだと思っているんです。認知症になるといろんなもの忘れが始まって、あり得ない行動をすることがあります。例えばクマのぬいぐるみがトイレの便器に入っていたり、私のパジャマが入れられていたり。洗濯機の中にオムツが入っていたりすることもあります。

でもこれって、本人は嫌がらせをしようと思ってやっているわけではないんですよね。本人なりの思いがあって、困らせるためにはやっていない。そう考えたときに、私たち家族はこれに対して怒る必要があるのかと。

問題行動ととってしまうかもしれないけれど、これは問題な行動ではなくて、何か理由がある行動なんですね。たとえばクマがトイレに行きたいと言って連れていってあげようと思ったのかもしれない。パジャマがトイレに入れられていたのは、水が張ってあるのでパジャマを洗おうとしたんですよ。便器の中にごみを捨ててしまうのは、ゴミ箱だと思って、掃除しようと思ってやっている。もちろん便器を詰まらせるためにやってはいないんです。そういう見方が介護していく上で必要だと思うし、一つひとつ怒って問題行動だと捉えることには問題があると思っています。

車いすの母と韓国へ どこへでも行ける

冨岡史穂編集長(以下、冨):小国さんが和田さんの施設に取材に行ってすてきな所だと思ったというのと、岩佐さんの問題行動と捉えるのではなく見方を変えるというお話は、共通の視点ですよね。こちら側がどう見るかで、認知症というものがだいぶ違うものに見えてくるんだなと。

岩:来月、母と韓国旅行に行ってきます。母は今、要介護5。車椅子生活です。認知症になったら韓国に旅行に行くのは難しいと、きっと皆さん思うでしょう。でも、旅行に連れて行くのはふつうのことですよ。当たり前のことを、ただしたいだけなんです。認知症になったらできない世の中であってはいけない。認知症になってもどこへでも行ける、そういう世の中がこれから必要で、その世の中をみんなでつくっていかなきゃいけないと思っています。

冨:楽しみですね。旅の様子は、私が編集長をしている「なかまぁる」でリポートしていただく予定です。

認知症が遠いと、恐怖や不安に感じる

冨:私からも、岩佐さんにお聞きしたいと思っていたエピソードがあります。合コンやデートに行った話を本にも書かれていますが、介護の話、男性が引くんですか。

岩佐まりさん(左)と小国士朗さん
岩佐まりさん(左)と小国士朗さん

岩:ちょっと傷ついた思い出があるんです。ある男性から食事に誘われて、すてきなお店でご飯を食べているときに、私はなんとなく介護の話をしました。なんとなく、ふつうにですよ。「大変ですねぇ」なんて話をしたら、その男性は「僕の家は金持ちだから、あなたのように在宅介護する人の気持ちが分からない」と言ったんです。そして、まだ料理がたくさん残っているにもかかわらず、「お母さん、今デイサービスで待っているんでしょ。だったら早く帰ってあげなさい」と言って、私、帰されたんです。それから全く連絡がありません。どうですか、男性のみなさん。

小:僕は一緒に食事しますよ、せっかくお料理があるんだから。でも、その男性の気持ちが分かるなと思うのは、認知症とか介護というものがすごく距離が遠いから、知らない怖さというか不安があるんだと思います。介護という見たことも触れたこともない何かが、岩佐さんの背後にあって、それを見ておびえちゃうことってあるよなって。

介護の人、認知症の人ではなく、本人を見て

僕が和田さんのグループホームに取材に行ったときも、そうでした。これは取材者として本当に恥ずかしいんですけど、認知症の知識なく行ったので、怖かったんです。その男性は、無知だけど知ったかぶりをしちゃっているものだから、岩佐さんを見ているんじゃなくて、その未知なる介護や認知症の人と話しているというか。とんでもなく失礼なやつだと思いますけど、目の前の岩佐さんを見ろよと思いますが、知らない怖さというのは分かります。

「注文をまちがえる料理店」発起人の小国士朗さん フレンドリー3本目
「注文をまちがえる料理店」発起人の小国士朗さん

岩:そんなに怖いですか。そんなふうに見られてしまうのが嫌なんです。介護しているから、この人には近寄らないでおこう、面倒くさい、と思われてしまうのが、とっても悲しい。子どもを連れて離婚する女の人っているじゃないですか。芸能人でも、離婚して子どもがいて、また再婚している人も多くいる。子どもを抱えて再婚はできるのに、介護していたら初婚すらできない。これ、どこにどういう差別的な目線があるんですか。

冨:子育てですら、今、子どもが少ないですから、自分の周りに子どもがいない人がたくさんいて、なかなか話題にしづらいという社会になっています。さらに介護はまだまだ、身近ではない人たちにとっては未知のもの、怖いというのが先に来てしまうテーマなんだな、というのを岩佐さんの体験からもとても感じます。

続編はこちらです

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