懐メロが笑顔を取り戻す 音楽療法に毎月400人 ~特集「楽しむ認知症ケア」1

大人気音楽療法 “癒し”の時間

下は60代から上は92歳まで。毎回20人ほどが声を揃えて、「星影のワルツ」「有楽町で逢いましょう」など懐かしのメロディーを歌います。ここでは歌詞の「有楽町」を「じょうさいカフェ」に替えて歌うのがお約束。名古屋市中村区の偕行会城西病院が、認知症予防の一環として連日催している「ほっとカフエじょうさい」の音楽療法での日常です。

城西カフェ1-1
音楽療法のようす。連日20名ぐらいの参加者で賑わいます。この日も満員御礼です。

参加者の半分以上は男性。曲の合間には「テルちゃん」「マッカーサー」と、それぞれをあだ名で呼び合い、冗談を言い合います。

カフェの常連、元小学校校長の男性はこう話します。

「ここに来るとまた学校に来ているような感じがするんです。それぞれ全く違う人生を歩んできた仲間と心を一つにして歌を歌う。『癒し』というのはこういうことかと。今日初めて会った人とも最後に『今日も楽しかったね。またね』と笑顔で言葉を交わしあえる。こんな場所は他にはない。いまの自分のささやかな幸せです」

オリジナルCDも制作

ハーモニカが得意な人、相撲甚句(すもうじんく)が得意な人、歴史に詳しい人。ここはそれぞれの“得意”を自由に発表できる場でもあります。

2017年10月には参加者みんなでじょうさいカフェのオリジナルテーマソング『いつまでもこの町で』を制作。参加者の想いを集めるうちにできた曲といいます。

中村区に生まれた2人の武将、豊臣秀吉と加藤清正や地域のシンボル「赤い大鳥居」などをフレーズの骨格にしながら、「どっこいしょ」などの掛け声を追加。その詞に音楽療法士の堀内裕美子さんが曲をつけ、みんなでブラッシュアップして完成へ。

「命が絶えてもこれが残る」と、この歌を残そうという話も自然に出たといいます。カフェ参加者をはじめ、欲しい方には無料で制作したCDを配布しています。

「毎回必ずこの曲を歌って始まり、終わるんです。常連の方は歌に合わせて手話もできて、ソラで歌える人も多いです」(堀内さん)

城西カフェ2-2
オリジナルテーマソング『いつまでもこの町で』に合わせて手話ができる人も。

ここでの音楽療法が功を奏し、それまでは表情もなく、ほとんど話さなかった人が参加して2か月後には冗談まで言えるようになったという例も。

認知症カフェの運営については病院で働く医師・看護師・リハビリ・総合相談などの職員がチームで相談し、1510月から月一回開催して好評だったため、164月からは平日毎日1015時の開催になりました。17年4月からは音楽療法士の資格を持つ職員を採用して水曜日以外の平日午前1012時、週4日開催へ。スタート時は参加者23人の日もあったといいますが、口コミで徐々に参加者が増え、いまでは月に400人以上が訪れる人気の音楽療法に。

かつてこの町でうどん屋を営んでいた夫妻は当初、妻が、認知症の夫を連れてきていましたが、今では夫が率先して通うように。妻いわく、「ここに顔を出すようになってから夫の顔に笑顔が増え、私も周囲に夫が認知症であることを隠さずに話せるようになりました。いまでは地域全体で見守ってもらえるようになって安心できるようになりました」。

このカフェは参加者一人ひとりがボランティア精神でつくりあげている場と言います。

参加者が口コミで周囲の人を誘ってきたり、机やいすも毎回自分たちで運んで譲り合う。けっして押し付けではないので、皆さんいきいきと参加しています。

しばらく来なかった方が久しぶりに来ても、ここでは自然にまた輪に溶け込めるといいます。

人と人をやさしくつなぎ、居場所であり続けるほっとカフエじょうさい。病院入口で今日も楽しい歌声が響きます。

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音楽療法士の堀内裕美子さん(左)がキーボードを演奏、築出裕美さん(中央)はクラリネット。インターンの学生もトロンボーンで参加して盛り上げます。

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