医療介護だけでなく農業もITも連携して進もう 新潟県立看護大学チーム
看護学生による認知症を対象とした啓発活動
学内のサークル活動「認知症オレンジサークル」を通じた認知症サポーター養成講座の実施やボランティア活動の紹介をはじめ、医療と介護を学ぶ看護学生ならではの活動。またボランティア活動の意義、重要性について。
トラブルと不安乗り越えて得た達成感
大久保奏(おおくぼ・かなで)
20歳、新潟県立看護大学看護学部3年、「認知症オレンジサークル」所属
1回目のプレゼンを終えた後、現地のマレーシアの看護学生からセルフィーをしようと声をかけられました。その後、同じ看護学生としてこれからの医療について2、3、質問し、会話を交わしました。アジア各国の次世代を担う若者同士が発表し、交流することから、私自身が会議の次のステップへと活動を継続するための大きな力を与えられたと感じています。また、国際会議という大舞台で、若者が発表をするという取り組みはとても魅力的でした。
今となってはどうってことのない話なのですが、クアラルンプール(KL)に着くまで、いろいろトラブルに見舞われました。私と古高さんは、それぞれ新潟県内の実家から成田空港に向かい、そこで落ち合いました。成田空港ではターミナルを間違えたり、乗り継ぎの飛行機が遅れたり……。KLへはベトナム・ホーチミンを経由して8時間かかりました。やっとKL空港に着いてもホテルまでの経路が聞いていたものと違っていました。やっとの思いで会場に到着しましたが、今度は想像以上の規模に圧倒され、不安になりました。
会議の初日、改めてこの会議の規模の大きさに驚きました。また各国の発表者の様々なプレゼンを見て、自分の普段の学習のフィールドとその視点がいかに狭かったのかを痛感しました。でもアジア各国での認知症の人々を取り巻く状況や取り組み、問題点など様々な観点から学ぶことができました。同じ日本チームのなかでも、いろんな発表があって勉強になりました。
発表者の英語を完璧に理解していた自信はありませんが、どの発表も自分の想像より多岐にわたる分野を網羅していて、認知症の人々とその家族のために活動をされていると感じました。各国のプレゼンだけでなく、引率してくれた「認知症の人と家族の会」理事の鷲巣典代さん、川井元晴先生。「認知症フレンドシップクラブ」理事の徳田雄人さんや「DAYS BLG!」代表の前田隆行さんら、日本国内で認知症に関わるトップランナーの方々とお話ができて、普段得られない経験ができました。
「自分はどのような看護職を目指すべきなのか」「これから何ができるのか」「会議での経験をどのように大学の仲間に共有すればいいのか」など、今回いろんなことを考えさせられました。驚くほど様々な分野の人が、認知症の人とその家族、彼らを取り巻く環境を改善するために活動していることを肌で感じることができました。会議に参加した、ということだけで終わらせるのではなく、いま活動している認知症オレンジサークルで、今回の経験をどういう風に生かせばいいのか考えていきます。
医療・介護以外の領域との連携の重要性に気づいた
古高瑞穂(こたか・みずほ)
21歳、新潟県立看護大学看護学部4年、「認知症オレンジサークル」所属
現在はまだ認知症の人が少ない国でも、認知症に大きな関心を抱いていることに驚きました。日本は認知症対策の先進国だと思いますが、認知症の人が多いにも関わらずの認知症に対して世間の関心が薄いと思っています。だからこそ啓発活動が急務であると実感しました。
認知症の当事者の数が増えれば、介護する人も増えます。同時により具体的なサポートの需要が増加するでしょう。認知症の人がリラックスできる社会的な活動の場の提供や、認知症の人へ効果的な対応方法を得ることができるメディアの活用も重要だと思います。これらを実現するためには、福祉の分野だけでは限界があります。福祉にとどまらず、例えば農業や情報産業など、あらゆる分野からの参画が必要不可欠だと思います。
日本からの他の参加者の発表を聞いて、福祉以外の分野からでも認知症にアプローチしている人がいることを知りました。医療や介護以外の様々な領域の特性を活かした社会全体の多面的なサポートが重要だと感じました。
プレゼンでは英語原稿の準備とパワーポイントの作成を二人で分担して行う必要がありました。ところが私は、卒業研究や試験で手いっぱいだったため、休暇中だった大久保さんにお願いしました。申し訳ないのでパワーポイント作成では頑張るつもりでしたが、こちらも付き添いで現地に来てくれた新潟看護大准教授の原等子先生の超高速添削、修正によって見違える出来栄えに仕上がりました。プレゼンの英訳でも准教授のサイモン・エルダトン先生に大変お世話になりました。
プレゼン当日は、会場近くの空きスペースで、大久保さんと二人で直前まで読み合わせの練習をしました。目の前を行き交う会議の参加者やホテルスタッフ、宿泊者は私たちを見ておかしく思ったに違いありません。
看護師、保健師などの看護職は、患者さんを全人的視点でとらえて、「その人らしさ」を保つ生活が送れるように必要な援助を行ったり、支援につなげたりすることができます。1人の援助者としても、支援のコーディネーターとしても活躍できるからこそ、率先して認知症ケアに関わっていくことができる職種であると思います。まずは、ケア技術を身につけることで、認知症の方とそのご家族に安心していただける看護を実践できる援助者を目指したいです。その中で、認知症サポーター養成講座のような認知症啓発活動も続けていきたいです。また、看護以外の分野における認知症支援に関してもっと広く知ることで、認知症支援を多面的に理解していきたいと思います。
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