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副業ヘルパー

目からウロコ!味変と幼児用食品で、高齢者の食の細さやマンネリを解決

幼児用魚肉ソーセージは通常のものよりずっと小さい
幼児用魚肉ソーセージは通常のものよりずっと小さい

新卒で入社した出版社で、書籍の編集者一筋25年。12万部のベストセラーとなった『87歳、古い団地で愉しむ ひとりの暮らし』(多良美智子)などを手がけた編集者が、40代半ばを目前にして、副業として訪問介護のヘルパーを始めました。今回は、ヘルパーとして伺ってきたご家庭から学んだ高齢者向けの食事の工夫についてです。

食が細い方に、いかに召し上がってもらうか悩みどころ

これまでのヘルパー経験で、食事の用意ありのサービスには多く入りましたが、どのお宅でも「どんどん箸が進む」ということはありませんでした。
高齢者は若いときと比べ、そもそも食が細くなっています。あまり体を動かさないのでおなかがすかない、ということもあるでしょう。ご病気で食欲がない方もいます。さらには、咀嚼(そしゃく:かむこと)や嚥下(えんげ:のみ込み)のしにくさ、入れ歯の不具合などによって、食べづらくなるケースも少なくないように思います。
無理に食べさせる、などということはできませんが、体のためにやはりある程度の量は召し上がってほしいし、必要な栄養はしっかりとっていただきたい…。ヘルパーとしては悩みどころです。

「幼児用の食品」という方法

そのような状況への工夫として、あるお宅でご家族が用意されていたのが、「幼児用の食品」でした。
冷蔵庫に、アンパンマンのイラストがパッケージに描かれた魚肉ソーセージが入っているのを初めて見たとき、ちょっと驚きました。えっ、80代の方に1歳児向けの食べ物…!?
しかし、あらためて考えてみれば、幼児用の食べ物に「◯歳から」という年齢の下限はあっても、「◯歳まで」という上限はありません。大人が食べても何ら問題ないはずです。
そのお客様はとくに食の細い方でしたが、このソーセージが「大好きなの」とお気に入りのようで、お出しするといつも喜んで完食されました。2本目をお代わりされることもありました。少量ではあるものの、貴重なたんぱく源であり、ありがたい存在でした。

幼児用の食品は、まだ歯が生えそろわず、あごの力も弱い幼児でもかめるように、やわらかくできています。小さな口に入るように、サイズも小さくなっています。それが高齢者の方にも合うようなのです。
通常の魚肉ソーセージと幼児用ソーセージを並べてみれば、一目瞭然。太さも量も全然違います。もちろん固さも。

幼児用ソフトせんべい。軽くかめて、パリッとした食感もちゃんとある
幼児用ソフトせんべい。軽くかめて、パリッとした食感もちゃんとある

このお客様宅では、アンパンマンのソーセージの他にも、幼児用のソフトせんべいが用意されていました。
おせんべい。これもまた高齢者には固くて食べられないことが多いものですが、おせんべいが好物な方が多いのも、また、事実。食べられないのは残念です。
その点、幼児用ソフトせんべいなら、やわらかくて食べやすい。薄味ですが、大人が食べても十分おいしいです。私も、我が子たちが小さい頃、一緒に食べていました。

なるほどなー、幼児用かぁ…。小さい子どもと高齢者には共通点があります。
こうしたご家族の工夫には、いつも学ばされます。

「味変」アイテムでマンネリを避ける

田楽味噌で豆腐を「味変」。玉子豆腐やごま豆腐のバリエーションも
田楽味噌で豆腐を「味変」。玉子豆腐やごま豆腐のバリエーションもある

お客様の食が細くなるのは、食事に「飽きる」ことも一因のように思います。
私の所属する訪問介護事業所では、1人のお客様を複数のヘルパーが担当することがほとんどです。月曜日はAヘルパー、火曜日はBヘルパーが伺う、といった形です。理想としては、1人のヘルパーが担当することなのでしょうが、要介護度の高いお客様が多く、毎日、あるいは1日数回サービスを利用されるため、1人で全サービスに入るのはなかなか難しいのです。利用頻度の高い方の場合、ヘルパー4~5人で受け持つのが平均的かなと思います。

このように、日替わりで別のヘルパーがサービスに入るわけですが、食事の用意がある場合、誰が担当になっても「再現性」があるように、メニューがある程度固定されていることが多いものです。「ご飯とみそ汁と冷凍おかず」、「パンとサラダとヨーグルト」…といった具合です。
その中身は少しずつ変わるものの、お客様としては「毎日同じ」。もう飽きて食べたくない…となるのも仕方ありません。これもまた、ヘルパーの悩みどころです。

おかゆのトッピングに海苔の佃煮やねり梅など
おかゆのトッピングに海苔の佃煮やねり梅など

あるお宅では、ご家族主導で1食分のメニューを決めていました。90代で、やはり咀嚼と嚥下に困難のある方でした。おかゆに豆腐、ゆで卵といった、かまずにラクにのみ込める組み合わせがメニューの定番でした。栄養の面も考えられています。
「この組み合わせ、なるほどだな~」と感嘆したのですが、さらにすごいなと思ったのが、「味変」アイテムをたくさん用意されていたことです。
温めた豆腐にかけられるように、チューブ入りの田楽ソースが何種類かそろえられていました。私も家で試してみましたが、これ、なかなかおいしいのです。保存もきいて助かります。さらには豆腐自体も、卵豆腐やごま豆腐という選択肢もあり、同じ味が続かずにすむようになっていました。おかゆには、のりの佃煮やねり梅などが味変アイテムとして用意されていました。こちらも保存がききます。

様々な工夫の仕方があるものだと思いました。ご本人の好みを知っているご家族だからこそ、食が進むものをピンポイントでご用意できるのだな、と思います。

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