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五十路娘 母の住まい探しに迷走中!

入院で知る母の認知症の進行 そんなときに見つけた入居金0円の老人ホーム

認知症あるある? すぐ目の前にあるものを見つけられない

 

いつかはやってくると思いつつ、ついつい先送りしてしまう親の介護の準備。関西在住のイラストレーター&ライターのあま子さんもそんな一人。これまで一人暮らしを続けていた母が、2022年正月早々に転倒し、骨折→入院という経緯で認知症を発症。姉と兄による“介護押しつけバトル”を経て、いったん母は首都圏に住む兄一家のところで暮らすことになりました。そんな中、母が肺炎で入院することになりました。今回は、前回に続いて母の入院のお話と、その間に見学した有料老人ホームについてです。

2023年2月半ば、首都圏の兄宅にいる母が肺炎で入院しました。電話では意外と元気そうな母の声に安堵(あんど)したのもつかの間、すぐに私は認知症の人の入院がいかに大変か知ることになりました。

まず、やることのない母は電話を頻繁にかけてきました。「なんでここにおらなあかんのやろ」と1日に何度もグチを言われるのは、けっこうメンタルにきました。
また、「読む本がほしい」「寒いからカイロがほしい」「お菓子が食べたい」などの訴えもありました。私が自分で行けるのであれば、問題ありませんが、こちらは遠く離れた関西。見舞いに行こうにも、当時はまだ新型コロナ感染症の影響で面会禁止。首都圏に住む兄、義姉に頼らざるをえません。2人にLINEをするときは、決して押しつけがましくならないように、失礼のないようにと、何度も文面を見直して送っていました。
すると、ここで認知症による行き違いが発覚します。義姉は、本を紙袋に入れて差し入れてくれていました。母にとっては、目の前に置いてあっても紙袋に入った本は「見えていない」=「ない」ものとなっていました。母に電話で紙袋の中を見るように言うと「あー、本がある!」。

また、義姉によると、病院では、カイロは低温やけどの恐れがあるので禁止。お菓子も当面はダメとのことで、母にも伝えたとのことでした。そこで、私からも母に、義姉から聞いた説明を伝えましたが、すぐに記憶が薄れるようです。また電話をかけてきては、同じ問答をくり返すことが続きました。

さらには、母は「治療はなにも受けてない」「薬も飲んでない」と私には話していました。もちろん、そんなことはありえません。義姉によると、点滴中に針を抜いてしまうこともあったようです。また、自分の病室がわからずウロウロするので、「〇〇さんの部屋はこちら」と書いた紙を、トイレから病室までの壁に何枚も貼ってもらっていたそうです。「点滴中の針を抜く」「自分の病室がわからなくなる」は、認知症の人が入院した場合には珍しくないようですが、これまでの入院では、母は目立ったトラブルをおこしたことはありません。「お母ちゃん、かなり認知症が進んでいるんやな」とショックでした。

○○さんの病室(やじるし)

見学13:2023年2月 B市の有料老人ホーム

今回は「有料老人ホーム」の見学です。有料老人ホームを大雑把に説明すると、入浴や排泄(はいせつ)、食事などの介護サービスと健康管理がついた住まい。
これまで私がしばしば見学してきた「サービス付き高齢者住宅(サ高住)」とは、契約の形式がちがいます。サ高住は、介護施設ではなく住宅なので「賃貸契約」を結びます。介護サービスは付いておらず、別途、介護業者との契約が必要で、サービス料は使った分だけ払います。
一方の、有料老人ホームは、介護サービスをホームで行い、サービス料は介護度に応じた定額制です。契約の多くは「利用権方式」と呼ばれるもので、部屋に住む権利や、生活支援などのサービスを利用する権利を得ます。

この利用権を購入する方法が、
①「一括」であったり、
②「月々の使用料との合算」であったり、
③「一部前払い+②」だったりするわけです。

チラシなどで目にする「入居金〇千万円」など目玉の飛び出しそうな施設は、たいてい有料老人ホーム。数千万円払ったのに、業者がつぶれて終(つい)の棲家がなくなったというニュースもありました。あまりにも、わが家の経済状況からはかけ離れた世界だと、これまで有料老人ホームはスルーしてきたのですが、入居金0円のホームを見つけました。利用料金もそこまでお高くない!ということで見学を申し込みました。

<施設情報>
●1カ月の料金:家賃、共益費(水道光熱費込み)、食費、管理費あわせて約18万円
別途、介護保険利用料、電気代、医療費、生活消耗品代など
●部屋:個室18m²~ トイレ、洗面台・収納スペース・緊急通報装置(ナースコール)など
●食事:施設内調理
●人員配置:夜間は2人
●特徴:認知症フロアあり

このホームは、駅前から歩いて数分の住宅街にありました。閑静な場所にありつつ、駅前にはスーパーや飲食店が立ち並ぶという理想的な立地。案内してくださったのは50代のパリッとした男性でした。ホームの母体がホテルというだけあって、ホテルスタッフのように礼儀正しく、施設説明の口調も丁寧でした。ほかのスタッフもキビキビと動いていました。
ここには一般の居住スペースのほかに、認知症対応フロアがあり、専門スタッフによって細やかなケアをしてもらえます。フロアの壁には昭和の懐かしいポスターが貼ってあったり、昭和半ばの居間を復元しているスペースがあったりしました。こういう場所は母も落ち着くかもしれません。
一方で、いろいろな運動器具を置いた部屋もあり、その人に合わせたトレーニングをさせてもらえるとのことでした。午前中は体を動かす運動があり、午後は様々なレクチャーが毎日行われます。ここなら、やることがなくてボーッとする時間は少なそう。
さらにうれしいのは大浴場。浴室は畳を模したマット敷きで、週に1回天然温泉を運んでくるそうです。温泉好きの母にはうってつけな気がしました。外観や部屋は、これまで見てきた施設とあまり違いはありませんでしたが、サービスは1番手厚い印象です。
これまでの例に漏れずいい施設は人気が高い。満室とのことでしたので、順番待ちの申し込みをして見学を終えました。

【感想&後日談】

 有料老人ホームとサ高住の違いを、もう少しだけ。サ高住は、自宅と同様にマイペースで過ごせますが、有料老人ホームは、ある程度1日のスケジュールが決まっており、毎日レクリエーションもあります。
施設探しを始めた当初は、自由度の高いサ高住を希望していましたが、母の認知症の進行や体調悪化を考えると、自由度は下がっても手厚く世話をしてもらえる施設のほうがよさそうだと思うようになりました。探せば今回のように手ごろな料金の有料老人ホームがあるとわかったので、今後は有料老人ホームを中心に探そうと思います。

登場人物【あま子】アラフィフのライター&イラストレーター。関西で夫と2人暮らし。優柔不断な性格。【母さん】91歳。要介護3。娘2人の世話で1人暮らしをしていたが…性格はマイペース。【カン太】あま子の夫。突然の施設探しに右往左往するあま子のよき協力者。【カラ美】あま子の6歳上の姉。気の強いしっかり者。兄とは犬猿の仲。3児の母。【ツヨシ】あま子の3歳上の兄。首都圏在住。小さいころからオレ様気質。3児の父。※年齢は施設探しを始めた2022年当時のもの
登場人物

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