母と妻を一人で介護し続けた番組スタッフの父親が、お土産に込めた思い
タレント、アナウンサーとして活躍する“コマタエ”こと駒村多恵さんが、要介護5の実母との2人暮らしをつづります。ポジティブで明るいその考え方が、本人は無意識であるところに暮らしのヒントがあるようです。今回は、訪問介護についてリポートした放送を見たフロアディレクターの父親が、駒村さんの言葉に共感していたと聞いた時のお話です。
訪問介護の人手不足
廊下でロッカーから荷物を出そうとしていたら、フロアディレクターの男性から声をかけられました。
「僕、先週実家に帰ってたんですけど、父が先日の(あさイチの)訪問介護のリポートを見て、それはもう、珍しいなっていうくらいジーンとしていて…」
彼とは「あさイチ」以前から別の番組で仕事をしていたこともあって、付き合いは15年以上になりますが、こんな風に言われるのは初めてです。そもそも放送したテーマについてスタッフさんから改めて感想を言われること自体あまりなく、ましてやご家族からなんて滅多にないので驚きました。
「それで、父が駒村さんにお土産を渡したいと言いまして…」
「え!? 有難うございます。お気持ちだけで…」
「いや、もう買ってきちゃって預かって来たんです」
地元富山で評判のお店のラーメン。わざわざ分厚い保冷剤とともに保冷バッグに入れて持ってきてくれたのです。「でもラーメン食べなかったら別のものも僕買ってきたので…」と、予備のお菓子も一緒に。フロアさんは心づかいの塊のような仕事ですが、普段から本当にきめ細やかで、こちらのほうが恐縮です。
「ラーメン食べます! 有難く頂戴いたします!」
番組では「最近ヘルパーが見つからない」「ヘルパーが突然やめてしまった」という、番組に届いた声をもとに訪問介護の事業者と人材の減少について放送しました。実際に訪問介護を生業にしている方からは、コロナ禍でベテランさんが感染を恐れて辞めてしまい、かなり忙しくなった、とか、自転車で移動しているが、電動自転車の購入もパンクの修理も自腹。台風の日も雪の日も稼働するが、特別手当もないという現実を嘆く声も。
我が家も訪問介護をお願いしていますが、どんな天候の日も変わらず来てくださいます。天気が良くても、最近の夏は焦げそうな日差し。猛暑の中を走り回るヘルパーさんは移動だけでも大変です。プライベートであれば雨宿りしてやり過ごすゲリラ豪雨も、訪問介護は時間厳守。一つ遅れると玉突きで次の予定もどんどん遅れてしまうので、そんなわけにはいきません。「介護の仕事が好きでやっているけれど、いつまで介護従事者の良心に頼る気でいるのでしょうか」という文面は心に刺さりました。
介護をテーマにしたリポートは何度か放送していますが、お父様がお土産をとまで思ったのには、理由がありました。
「親父は、数年前まで一人で祖母と母の二人を介護していたんです。祖母は後に施設に入ったんですが。僕が母の介助をしようとしたら母が嫌がったので、結局全部父に任せることになって。その頃ヘルパーさんに来てもらっていたんで、ヘルパーさんへの感謝を語っている駒村さんにすごい共感したみたいです」
そんな状況でいらしたとは。きっと私などが到底計り知れないご苦労があったはずです。今は介護を終えられたとのことですが、肩の荷が下りて、この先末永く健やかでいていただきたいと切に思いました。
家族にとって訪問介護は命綱です。ヘルパーさんの支えなくして日常生活はまわりません。にもかかわらず、介護関係者の苦境は本当に嘆かわしい限り。良心に頼るのではなく、訪問介護は尊い仕事であるということや実情を広く知ってもらい、その先に状況を改善できる光があると信じて、今後も取材を続行し、リポートできればと考えています。