「きれいだね」「おいしいね」 幸せとはこの瞬間を一緒に味わうこと
《介護福祉士でイラストレーターの、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
私は幸せを、
今ここで、
この瞬間に味わいたいの。
認知症になった今も、
それは変わらない。
誰だってそうでしょう?
なのに、
認知症の進行予防のためにと、
過去を話題にされることがある。
でも、ほどほどにしてね。
不用意に揺らされた思い出は、
後でさざ波を起こすこともあるのよ。
だから、今。
一緒にこの時を楽しみましょう。
私の希望は、
この今にあるのよ。
「認知症がある人には、思い出を語ってもらうといい。
昔のことは比較的覚えているから話も弾むし、
そのおしゃべりが進行の予防になったり、日々の意欲向上につながったりする」
そんな話を、誰でも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
けれど、慎重に、と思うのです。
というのも以前、認知症があるご本人さんが、
「進行予防のために」と他者から意図的に、過去を喚起されたことがありました。
その時間は、若かりし日の思い出語りを楽しまれたものの、
その夜から、ご本人は時間感覚も気持ちも混乱し、ご家族も困りはてたということがあったからです。
人によりけり、なのです。
認知症があってもなくても、
幸せに健康的に過ごすためには、
今を楽しむことに他なりません。
そのためには、
不自然に引き出した思い出や特別な話題は必要ないでしょう。
ご本人の歴史を大切にしつつ、
今、目の前にあるものに一緒に感動し、笑い、
「きれいだね」「おいしいね」と共に味わえば、
それはかなえられるのですから。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》