「きれいだね」「おいしいね」 幸せとはこの瞬間を一緒に味わうこと
《介護福祉士でイラストレーターの、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
![猫と女性](http://p.potaufeu.asahi.com/c1fc-p/picture/28383335/8ee1b4246caab16848f2d73d79f691b2.jpg)
私は幸せを、
今ここで、
この瞬間に味わいたいの。
認知症になった今も、
それは変わらない。
誰だってそうでしょう?
![過去の話題に戸惑うひと](http://p.potaufeu.asahi.com/cc28-p/picture/28383338/89fe92e2589882f96058f663d71eab38.jpg)
なのに、
認知症の進行予防のためにと、
過去を話題にされることがある。
でも、ほどほどにしてね。
不用意に揺らされた思い出は、
後でさざ波を起こすこともあるのよ。
![笑顔のふたり](http://p.potaufeu.asahi.com/24c5-p/picture/28383340/a913512a0b55078b5305bfab20a10028.jpg)
だから、今。
一緒にこの時を楽しみましょう。
私の希望は、
この今にあるのよ。
「認知症がある人には、思い出を語ってもらうといい。
昔のことは比較的覚えているから話も弾むし、
そのおしゃべりが進行の予防になったり、日々の意欲向上につながったりする」
そんな話を、誰でも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
けれど、慎重に、と思うのです。
というのも以前、認知症があるご本人さんが、
「進行予防のために」と他者から意図的に、過去を喚起されたことがありました。
その時間は、若かりし日の思い出語りを楽しまれたものの、
その夜から、ご本人は時間感覚も気持ちも混乱し、ご家族も困りはてたということがあったからです。
人によりけり、なのです。
認知症があってもなくても、
幸せに健康的に過ごすためには、
今を楽しむことに他なりません。
そのためには、
不自然に引き出した思い出や特別な話題は必要ないでしょう。
ご本人の歴史を大切にしつつ、
今、目の前にあるものに一緒に感動し、笑い、
「きれいだね」「おいしいね」と共に味わえば、
それはかなえられるのですから。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》
![](http://p.potaufeu.asahi.com/nakamaaru/img/nakamaaru450_450.gif)