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幸せケアプラン

どれだけ、いつまでかかる?介護での「困った」の現実~お金編1~

あなたが介護保険で「使える枠」はいくら?/介護保険で使える金額要介護度で決まる【区分支給限度額」/【収入によって異なる】1〜3割自己負担、7〜9割介護保険給付、全額自己負担

公的な介護サービスを利用する際に欠かせない「ケアプラン」。けれど、どのようなことが記されているのか、どんな目的があるのか、案外、知られていないのではないでしょうか。ケアタウン総合研究所代表で、ケアプラン評論家の高室成幸(しげゆき)さんが、「幸せケアプラン」づくりを指南します。今回は、介護にまつわる「お金」がテーマです。

介護の「困った」の中でも、ご本人や家族がとっても気になるお金にまつわる悩みは3つです。
・どれだけかかるか?
・いつまでかかるか?
・公的な補助はどれくらいあるか?
自宅で介護を続けるにも、施設に入るにも、月々にかけられる「予算」と現実を折り合わせるためにどうするか。
とても悩ましい問題です。

使える金額に「枠」がある

介護保険では「使える枠」が要介護度で決まっています。
まず、どれだけ使えるのか…気になるところですね。
これを「区分支給限度額」といいます。区分支給限度額は「単位」で表され、要介護度によって枠が決まっています。多くの地域では、1単位は10円のため10倍すると総額になりますが、地域によって1単位の額に差があります。区分支給限度額を越えたら「実費(自費)負担」となります。これはわりと知られています。

【1単位10円の地域の区分支給限度額の金額】(要支援1)50,320円、(要支援2)105,310円、(要介護1)167,650円、(要介護2)197,050円、(要介護3)270,480円、(要介護4)309,380円、(要介護5)362,170円

でもこの枠をめいっぱい使い切っている人もいれば、なんと半分も使いきれていない人もいるんです。どうしてでしょう?

自己負担割合(1~3割)は「年金収入次第」の変動型!

介護保険サービスを利用するには「自己負担ルール」というのがあります。医療保険も同様ですよね。介護保険の自己負担割合は制度が始まった2000年には「1割」が基本でした。
つまり「90%Off」というのが介護保険サービスだったのです。
ところが、その後、利用する人の年金収入等によって「2割、3割負担」となるケースが生まれてきました。つまり、これらの対象となる人々は、1割負担の人と比較して「2倍~3倍」を自己負担することになります。

【単身者の場合の合計所得と自己負担割合の関係】

3割負担 ・・・年金収入などが340万円以上
2割負担 ・・・年金収入などが280万円以上340万円未満
1割負担 ・・・280万円未満の人

これって妙だと思いませんか?
世は働き手不足でシニアワーカーブームです。退職後の悠々自適な時間を少し社会還元&収入ゲットしましょう、というノリが一般的になってきています。
しかし、現実は年金だけでは生活をやっていけない、介護が続けられない、病気がちだけど週3日程度なら、と働くシニアが急増しています。
ところが収入がアップしたら年金は減らされる、一方で介護保険の自己負担割合はアップするようでは、働く動機づけになるでしょうか?
今後は年金収入の「所得基準」の引き下げが懸念されます。

ここでちょっとブラックな話題を1つ。
せっかく要介護3で月約27万円分使える介護保険サービスの枠(区分支給限度額)を持っていても、実際には月15万円程度しか利用していない人がいるんです。なぜでしょう?
その人は月々介護にかける予算が「15,000円」だからです。
これが「利用控え」のケースの1つです。
では、使っていない12万円部分(27万円-15万円)はどうなっているのでしょう?
結局、介護サービスをガマンする、家族介護でやり繰りするなどの「悪循環」になってしまう例を、私は多く見てきました。
こういう時こそ、ケアマネさんの腕の見せどころでもあるんですが…。

ちなみに「未使用枠」(先の例では約12万円分)が翌月に繰り越せられればいいのですが、それができないんです。
毎月ごとの「清算」がルールなのです。

介護サービスには「単価(価格)」が決まっている

介護保険サービスには「単価(価格)」があらかじめ決まっています。正確には「介護報酬」と呼ばれ、3年ごとに見直しがあります。
利用者のみなさんは自己負担の金額から「ワリと安いよね」と思われるかもしれません。でも、自己負担が1割の人は、それを10倍していただきたいのです。それが実際にかかっている「正価」です。
あくまでみなさんが払っているのは9割Offの「特別価格」なのです。
残りの部分は、税金や保険料からまかなわれています。

訪問介護やデイサービス(通所介護)、通所リハビリなどのサービスは、利用時間だけでなく、要介護度によって、支払う総額が変わります。「要介護度がアップすると報酬(単価)もアップ」するルールになっているからです。

例えば、要介護3で1割負担の人が2万円弱の負担でどのように在宅介護サービスが使えるか、シミュレーションしてみましょう。

##説明1:【1回分の単価】訪問介護(要介護3)身体介護(20分~30分)250単位(金額2,500円)、通所介護(要介護3)7時間以上~8時間未満 896単位(金額8960円)、通所リハ(要介護3)7時間以上~8時間未満 1,039単位(金額10,390円)/【1カ月分の総額】訪問介護(要介護3)週4回×4週=4,000単位(金額40,000円)、通所介護(要介護3)週2回×4週=7,168単位(金額71,680円)、通所リハ(要介護3)週2回×4週=8,312単位(金額83,120円)/総額194,800円/自己負担額19,480円
※1単位10円としてシンプルな形で試算してあります

在宅サービスには、このほかに訪問看護、訪問入浴、訪問リハビリ、福祉用具レンタルなどがあります。詳細に単価が決まっていて、利用した分の「積み上げ方式」です。それに、さらには認知症加算、入浴加算、機能訓練加算とかがあって超複雑です。
ケアプランの第2表「居宅サービス計画書」と第3表「週間サービス計画書」をしっかりと読み込んで、いくらかかるのか、不足はないか・ムダはないか、を吟味しましょう。その相方(パートナー)がケアマネさんです。合計金額の調整の相談に乗ってもらいましょう。

でも人気の小規模多機能型居宅介護や特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護付き有料老人ホームなどは「丸め」の計算です。要介護度ごとに1カ月分が決まっています。だから2割負担に跳ね上がったら調整はかなり困難なこととなります。

介護には「見えない実費分」がわりと意識されていない

「追加でこんなにかかるの!?」オムツ代、食事代

多くのみなさんは1割負担なので「親を一日昼間面倒みてくれて1回につき数百円だから割安よ」と言われますが、それ以外の実費もけっこうかかってますよ。
まず通所介護や通所リハなら「食事代(600円~800円)」を払わなければいけません。介護保険制度がスタート時はお昼代がもったいないというので、お弁当持参派の人もいましたが、今では衛生上の理由で「NO」となっています。
おむつ代だって請求されます。
それに利用者のみなさんはなんらかの病気を抱えていて通院や内服をしています。つまり「医療費」ですよね。この負担もあります。

それと声を大にして言いたいのは「介護保険料」です。払っている実感がないのは年金からの天引きだから。スタート時の約25年前は2,800円程度でした。それが3年前に平均5,500円/月となり、いずれは9,000円まで届くのではと予測する専門家もいます。

なによりご夫婦だと2倍ですよね。さらに同居されている中年の子どもさんが無職だと老親が負担しているというケースもあります。
ならば3倍…。つまり知らないうちに年金収入の手取り額がガンガンと減ってしまうのです。さらに、追い打ちをかけるのが物価の高騰です。

介護のお金には予算立てと収支バランスの検討がポイント

かつて介護がはじまると中年の子どもたちは仕事を退職して介護に専念するのが世の流れでした。「美しい親子愛」と認知されていました。
たしかにそれも大切な選択肢だと思います。
しかし、退職すると「かかってくる介護費用」が支払えない。だから介護サービスを極力少なくして家族介護で乗り切ろうとするとやがて破綻(はたん)する羽目になることもあります。
まずはどれだけ予算をかけるか…。どの時期にどれくらいかかるか予測する。その「収支バランス」が求められる時代です。
なにより所得水準次第で負担額が上下する時代になったのですから…。

次回は「お金編②」として、ではどのようにしたらよいのか、どのようにケアマネさんに相談したらよいのか、をお伝えしましょう。

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