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五十路娘 母の住まい探しに迷走中!

勧められた施設は片道2時間⁉︎ 関わる気のない人たちの好き勝手な口出し

好き勝手言う人たち・・・「○○のホームがいいらしい」「山奥やったら安いやろ」「入ったら終わりとちゃうぞー!だれが世話すると思ってるんじゃー!」

いつかはやってくると思いつつ、ついつい先送りしてしまう親の介護の準備。関西在住のイラストレーター&ライターのあま子さんもそんな一人。これまで一人暮らしを続けていた母が、2022年正月早々に転倒し、骨折→入院という経緯で認知症を発症。姉と兄による“介護押しつけバトル”を経て、いったん母は首都圏に住む兄一家のところで暮らすことになったのですが、あっという間に関西に戻ってくることになりました。再び、母の住まい探しが始まりました。新たに入居先の検討候補として挙がったのがグループホームです。

ケアマネさんから母の住まいにグループホームをすすめられた話は前回書きました。
私は、「入居者が掃除や洗濯などの家事を分担して生活する。できることは自分でやり、必要な部分を介助してもらう」というグループホームの在り方に、いいなと思いました。兄もサービス付き高齢者住宅(サ高住)よりグループホーム推しでした。理由は、サ高住に比べてグループホームのほうが安いと思っていたから。グループホームより部屋が広く、居室にトイレもあるサ高住は、料金も高いと思っているようでした。
でも、これは誤った思い込み。私も兄同様、当初、グループホームの料金は安いと思っていましたが、実際に調べると施設形態の違いより、立地や設備等による料金差のほうが大きいことがわかりました。便利な場所で、人員や設備も整っていればグループホームもサ高住も高いし、逆もまたしかりです。兄にも説明しましたが、納得したかどうかはわかりません。

介護をしていない兄弟・親せきが、介護をしている人に対してあれこれ口を出すというのはよく聞く話ですが、ウチも例外ではありません。たとえば「山奥の安い老人ホームでええやん」とか。ほかにも「〇〇の老人ホームが安くて評判もいいらしいから、そこにしたら」と言われて調べたら、私の家から2時間近くかかる場所だったこともありました。自分が介護に関わるイメージを持っていないのでしょう。だからこそ、安易なむちゃぶりができるのだと思います。

老人ホームに入居したら、あとはホームに丸投げというわけにはいきません。入居後も家族にはそれなりの負担があるものです。施設によっては、血圧が高いとか、○○がなくなりましたとかの連絡が頻繁にきたり、通院の付き添いに呼び出されたり…。そんなとき、だれが手伝ってくれるというのでしょう。だからこそ私は思うのです。親の住まいは、絶対にキーパーソンが通いやすいところがよいと(もちろん、親が快適に過ごせそうな住居であるのは大前提ですが)。

見学7:2023年1月 A市のグループホーム

前回、はじめてのグループホーム見学で戸惑いをおぼえましたが、サ高住も見学当初は“お年寄りばかり”という当たり前の光景に腰が引けたのですから、グループホームも1軒でダメと決めつけるのは早計。というわけで、自転車で行ける距離にあるグループホームを見学しました。

<施設情報>
●1カ月の料金:家賃、共益費(水道光熱費込み)、食費、管理費あわせて約19万円
別途、介護保険利用料、電気代、医療費、生活消耗品代など
●部屋:個室約15m² 洗面台・収納スペース・エアコン・緊急通報装置(ナースコール)
●食事:施設内で調理
●人員配置:夜間2人
●特徴:お風呂は個浴

設立から20年近く経っているので、古びた施設を想像していましたが、レンガ造りの外観はとてもきれいでオシャレ。お天気がよかったせいもあって全体的に明るい印象のホームでした。施設長は40代くらいで物腰の柔らかい男性です。
今回は、入居者が家事をしている姿を見たいと事前にお願いしていました。うかがったのは食事前の時間で、施設説明よりも先にダイニングキッチンに案内されました。3人の入居者が食事準備を手伝っていて、配膳や野菜を切るなどの調理補助をしています。スタッフが明るく声がけしながら、うまく誘導している感じ。イスに座っている人や、スタッフとおしゃべりしている人もいます。部屋で寝ている人もいるそうですが、前回のグループホームに比べて元気な人が多い気がします。母も楽しく調理に参加できそう——と、前向きなイメージを持つことができました。

いいやん!と思ったグループホーム 施設長の一言で奈落の底へ

「○○になったら退所です」「えっ!?」さようならー一気に奈落へ

見学後、案内されたテーブルの横に本棚があり、小説や写真集などが置いてありました。図書館のように背にラベルが貼ってあるのが印象的です。本好きの母にとって自由に本が読める環境は好ポイントです。現在、満室とのことで居室の見学はできませんでしたが、前回よりも広いのは下調べ済み。建物内の日当たりもいいし、ええホームやん♪と思っていたのですが、最後に奈落が待っていました。退去事項の説明で「車いすになったら退去していただきます」。えー、そんな!さっき車いすの人がいたよね…と思っていたら、その人たち(3人)はもうすぐ転居するらしい。だから見学申し込みの電話では「空きがでる」って言っていたのか。うーん、90歳を超える母は、明日転倒しないとも限りません。実際、去年も転倒して腕を骨折したし、車いすのお世話になる可能性は高いのです。入居しても、即退去となるかもしれない綱渡りのような生活はリスキーすぎます。転居先は紹介しますと言われたものの、そこが母によいところかはわかりません。満室ということもあり、申し込みは保留にして見学を終えたのでした。

【感想&後日談】

 グループホームには看護師の配置義務がなく、医療行為は行いません。ただし、最近では、看護師がいたり、訪問看護ステーションが設置されていたりする施設も増えており、看取りまでおこなう施設もあるそうです。
あとで調べたら、今回のグループホームの経営母体は医療法人でした。介護老人保健施設やサ高住も経営しているので、車いすになった人には、そちらを紹介するシステムができているのかもしれません。それらの施設の場所はいずれも別の市で、なにかあっても母が転居するには難しい場所でした。退去を迫られながら新たな住まい探しをする大変さを想像して、最終的に、今回のホームへの申し込みは断念しました。

登場人物【あま子】アラフィフのライター&イラストレーター。関西で夫と2人暮らし。優柔不断な性格。【母さん】91歳。要介護3。娘2人の世話で1人暮らしをしていたが…性格はマイペース。【カン太】あま子の夫。突然の施設探しに右往左往するあま子のよき協力者。【カラ美】あま子の6歳上の姉。気の強いしっかり者。兄とは犬猿の仲。3児の母。【ツヨシ】あま子の3歳上の兄。首都圏在住。小さいころからオレ様気質。3児の父。※年齢は施設探しを始めた2022年当時のもの
登場人物

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