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五十路娘 母の住まい探しに迷走中!

母はやっていける?見学3軒で感じたグループホームのメリット・デメリット

 とあるグループホームの光景 「私の生きがい」チャキチャキおばあさん マイペース母 お母ちゃんとは合わなさそうやな

いつかはやってくると思いつつ、ついつい先送りしてしまう親の介護の準備。関西在住のイラストレーター&ライターのあま子さんもそんな一人。これまで一人暮らしを続けていた母が、2022年正月早々に転倒し、骨折→入院という経緯で認知症を発症。姉と兄による“介護押しつけバトル”を経て、いったん母は首都圏に住む兄一家のところで暮らすことになったのですが、あっという間に関西に戻ってくることになりました。再び、母の住まい探しが始まりました。新たに入居先の検討候補として挙がったのがグループホーム。3つのグループホームを見学して、考えたり、感じたりしたこととは…。

少人数のグループホームで母はやっていけるだろうか

前回のグループホームを見学した数日後のことです。あるグループホームの暮らしを取材したテレビ番組を目にしました。入居者のチャキチャキしたおばあさんに密着して、おばあさんが冷蔵庫の食材をチェックする様子や、スタッフさんと炊事したり、ほかの入居者と話をしたりする姿などを紹介しています。コメンテーターは「生きがいがある暮らしでよいですね」「キビキビしてお元気ですね」と好意的でしたが、私の感想は「こんなリーダーっぽい人がいると、あとから入居する人はしんどいやろな~」というものでした。数か月前なら私もコメンテーターと同様の感想だったでしょうが、いまは母のために実際にグループホームを見学した経験から見る目がすっかり変わってしまいました。

入居したい!と思ったグループホーム しかし現実は厳しかった

古いグループホームは人間関係ができているので、母のように引っ込み思案な人はなじみにくいと思っていたら、偶然にも近所で新規オープンのグループホームがありました。経営母体は介護施設や訪問看護などの介護事業を幅広く展開する事業者です。

見学8:2023年1月 A市のグループホーム

<施設情報>
●1カ月の料金:家賃、共益費(水道光熱費込み)、食費、管理費あわせて約18万円
別途、入居一時金28万5千円、介護保険利用料、レンタル費用、電気代、医療費、生活消耗品代など
●部屋:個室 洗面台・収納スペース・エアコン・緊急通報装置(ナースコール)
●食事:施設内で湯せん調理
●人員配置:夜間1人
●特徴:掃除などの手伝いで報酬をもらえる

閑静な住宅街の中にできたグループホームで、2階建ての建物は当然ながらピッカピカ。あたたかみのある外観は一見すると高齢者施設に見えません。中に入るとモノトーンの絵画が数枚飾られており、玄関からすでにオシャレ。案内してくださった女性(30代かな?)は感じがよくて高齢者にも好かれそうです。
開設間もないということで、1階フロアにはまだ入居者がおらず、日当たりのよいリビングで説明をうけました。
このホームで私が感じた最大の魅力は、家事が報酬になること。掃除をしたり、調理補助をしたり、自分ができることをすれば1回500円など決まった額の報酬を得ることができます。人の役に立って、お金をもらえるなんて、めちゃくちゃステキ。月に2万円くらい稼ぐ(?)人もいるそう。母が元・調理師という話をすると「それはステキ! ぜひお手伝いを」と言ってくださいました。数日前も電話口で「まだまだ働きたいねん」と言っていた母が、この話を聞けば、がぜん張りきるにちがいありません。
また、老人ホームの入浴は週2回が相場ですが、こちらでは希望に合わせて柔軟に対応してもらえるというのも、風呂好きの母にとってはうれしいポイント。コロナ禍でも、外出・外泊が自由なのもありがたい。
説明後の施設見学で、部屋が狭めなことや、居室にトイレがないことなどのマイナスがいくつかありましたが、それを補って余りある魅力を感じました。

このホームに入居したいと考えたものの、そう話はうまく進みません。私もあちこちのホームを見学してきたので、パンフレット等に記載している金額にプラス3万円ほどは必要だろうと覚悟はしていました。ですが、説明された金額を計算していくと、想定を軽くオーバーしてしまいました(泣)。一例をあげるとベッドは介護保険外の自費サービスとなり、自分で用意するかレンタル料を払って借りることになるそうです。母の場合、これまでベッドは介護保険を使ってレンタルしていたので、持ち込むベッドはありません。ベッドとシーツをリースすれば月1万円ほどの費用が発生します。照明やカーテンも自分で用意する必要がありました。入居者に心地よい生活を提供するには、ある程度の費用がかかるのは当然でしょう。とはいえ、こちらのお財布事情は別問題。少し検討させてくださいとお伝えして見学を終えたのでした。

 ホームあるある「ステキなホームは料金も高い」うう・・・ムリでした 新築やし、立地もいいし

【感想&後日談】

 このホームについては、ケアマネさんなど数人からよい評判をききました。私もよいホームと思いましたが、結局お断りを入れました。母があと何年生きるかわからないのに、無理して予算オーバーのホームへ入居するのは怖かったからです。私がもっとお金持ちだったらよかったのになあ。
この原稿を書くために、1年ぶりくらいにホームの情報を検索サイトで見ると、待機者が何人もいるようでした。やはり人気があるようです。ちなみに料金も上がっていました。値上げラッシュの昨今ですから無理もありません。施設を選ぶときは、ある程度の値上げも見込んでおくことが必要だなと思いました。

グループホームのまとめ

私が資料を取り寄せたグループホームは6軒で、見学したのは3軒です。そのなかで、私が感じたグループホームの特徴やメリット・デメリットなどをまとめてみました。

グループホームは「認知症の人を専門にした小規模(1ユニット5~9人)の住まい」です。リビングで一緒に過ごすなど、家庭的な雰囲気が特徴です。
私の感じたグループホームのよい点は、認知症ケア専門のスタッフが常駐していることや、顔なじみのメンバーで生活するので入居者が穏やかに暮らせること。自分のできる範囲で家事をするのも、生きがいや自信につながっていいと思いました。
一方、難点は、少人数ゆえに人間関係がうまくいかないとつらいだろうということ。冒頭のニュースで見たようなチャキチャキおばあさんと、マイペースな私の母は絶対に合いません。また、施設を紹介している人からは、「開設から年数がたっているグループホームでは、入居者の認知症が進行しており、新規で比較的元気な人が入ると慣れるのが大変」という話を聞いたこともあります(スタッフさんがうまく調整してくれるとは思いますが)。

こんな風に書いてしまうとグループホームはよくないように聞こえるかもしれませんが、認知症が進んでいる人には、サ高住などの住まいより、専門的なスタッフがケアしてくれるグループホームが安心だと思います。私も、母の認知症がもっと進行したら、再検討する日がくるかもしれません。施設選びは、その人の「その時の状態」に合うことが大切だと感じる今日このごろです。

登場人物【あま子】アラフィフのライター&イラストレーター。関西で夫と2人暮らし。優柔不断な性格。【母さん】91歳。要介護3。娘2人の世話で1人暮らしをしていたが…性格はマイペース。【カン太】あま子の夫。突然の施設探しに右往左往するあま子のよき協力者。【カラ美】あま子の6歳上の姉。気の強いしっかり者。兄とは犬猿の仲。3児の母。【ツヨシ】あま子の3歳上の兄。首都圏在住。小さいころからオレ様気質。3児の父。※年齢は施設探しを始めた2022年当時のもの
登場人物

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