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バイオテック侍のシリコンバレー日記

2年ぶりに旧知の友人一家を訪ねて ダラスで過ごした年末年始

テキサスは大都会ですが、カウボーイ文化も残されており、アメリカらしさを楽しめる最高の観光地です。最近は日本人の移住も急増しています
テキサスは大都会ですが、カウボーイ文化も残されており、アメリカらしさを楽しめる最高の観光地です。最近は日本人の移住も急増しています

“侍”として米国社会に挑む心意気で2001年に渡米し、バイオテック(製薬)企業で新薬開発に努めてきた木下大成さん(56)。カリフォルニア州のシリコンバレーで妻、息子との生活を過ごしてきましたが、数年前から少しずつ見られていた記憶や理解力の低下が顕著になり、2022年10月、若年性アルツハイマー型認知症と診断されました。認知症とともにある人生を歩み始めた木下さんが、日々の出来事をつづります。今回は、2年ぶりにダラスに住む友人一家を訪ね、年末年始を過ごしたお話です。

年末年始(2023年末から24年初めにかけて)、私たち家族は、米国テキサス州のダラス近郊に住んでいる日本人の男友だちの一家を訪れました。元々は私が独身時代に親しくしていた日本人グループの一人です。私と同様にアメリカの土地に根を張って働きながら、時折、顔を合わせて、喜びや苦しみを分かち合ってきました。その後、共に結婚し、双方に同じ年齢の一人息子がいます。2017年に彼の家族は、サンフランシスコのエリアからテキサスに引っ越したのですが、家族ぐるみの交流がずっと続いています。

思い起こすと最初に彼と出会ったのは、当時UCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)に在籍していた別の友人夫妻に誘われて、サンフランシスコ市で催されている市民マラソン大会(Bay-To-Breakers)に出向いたときのこと。ちなみに、その友人夫婦が、米国で何年も独り身で暮らしていた私を心配して、当時日本に居た、現在の我が妻を紹介してくれたので、みんな顔見知り。この夫妻とも、今でも付き合いが続いています。

ダラスの中心地。アメリカ各地からたくさんの観光客が訪れていました
ダラスの中心地。アメリカ各地からたくさんの観光客が訪れていました

前回、ダラスで暮らす彼らを訪れたのは、2021年の年末でした。その翌年5月から私の体調の変化による休職が始まりました。複数の病院で何度も検査を経て若年性認知症との診断へ、と慌ただしく過ぎていき、なかなかリアルでは会えていませんでした。

そんな中、私の診断が下りてまだ間もない頃、動揺する私たちに「いっそのこと、うちの近所に引っ越してくれば?」と言い放つや、その数日後には近所のモデルハウスに出向いて、フェイスタイム(ビデオ通話アプリ)で実況中継を届けてくれました。一体どこまで本気なのかはわかりません。しかし、画面に映る彼らの喜々とした様子を見る限り、やる気満々。私の妻は半信半疑ながら友人夫妻の気遣いに、最初こそ感激して大泣きしていましたが、次第に彼らのペースに引き込まれ、新築の大きな家に、すっかりその気になっていました。

彼らの励ましは奇想天外で、事あるごとに人から“考え過ぎ”と言われるほど慎重に動く私にとっては新鮮でもありました。八方塞がりのように見えた状況でしたが、重い失望にとらわれて必要以上に深刻に考えていたのかもしれないと思いが至った時、胸のつかえが少し取れたのを感じました。

2年前に訪れた際、帰る間際の空港で。当時、8歳の両家の一人息子たち
4年前に訪れた際、帰る間際の空港で。当時、8歳の両家の一人息子たち

さて、2年ぶりとなったダラス訪問は、両家の一人息子たちも、とても楽しみにしていました。同じ年に、偶然にも2週間違いで生まれた幼なじみの彼らは、会えなかった間も時々Zoom(Web会議アプリ)で連絡することで、互いの顔を見ながら、まだ幼い友情をつなぎ留めてきました。ですから、しばらくぶりに面と向かった時には、喜びを爆発させるのかと思いきや、毎回、会ってからの数分の間は、恥ずかしいのか何だか微妙な空気。中学生になったとはいえ、まだまだちびっ子のようです。

ジョン・F・ケネディ大統領暗殺は、いまだに陰謀説が絶えない未解決事件です
ジョン・F・ケネディ大統領暗殺は、いまだに陰謀説が絶えない未解決事件です

滞在中は、ゆっくりと時間を過ごしたかったこともあり、あれこれと遠出はせず、ダラス市内の観光地となっているシックスフロアミュージアムに立ち寄りました。そこはアメリカ第35代大統領のジョン・F・ケネディが、約60年前のパレードの最中に公衆の面前で銃によって殺害された現場です。しかし、残念なことに、年末の観光客による大混雑でミュージアムの当日券はすでに完売。やむなく、現場周辺の公園や、狙撃者が隠れていたと言われる建物などを見て帰ってきました。それ以外の時間は、私たち男性陣が、息子たちをゴーカート場やレーザータグ(レーザー光線を発する銃で打ち合いをするゲーム)、ボウリング場へと連れまわし、子どもたちには目を光らせながらも、合間を縫って、父親同士は互いの近況報告にいそしみました。

大人も楽しめる本格的なゴーカート。私に似て慎重な息子とともに安全運転で楽しみました
大人も楽しめる本格的なゴーカート。私に似て慎重な息子とともに安全運転で楽しみました

大みそかの夜は、NHKの紅白歌合戦を見ながら友人が揚げた天ぷらで年越し蕎麦を食べ、シャンパンで年越し。元日は日本酒を飲みつつ、おせち料理を食べました。友人は本当に料理上手で、毎食こだわりを込めて、丁寧に仕上げてくれる朝のオムレツは焼き具合も秀逸。ついつい食べ過ぎる私たちのせいで、1週間の滞在中に、36個買ってあった卵がほぼなくなったそうです。

おせちや雑煮。友人の得意料理のローストビーフで新年を祝いました
おせちや雑煮。友人の得意料理のローストビーフで新年を祝いました

友人一家には、忘れてはいけない家族の一員がいます。犬のハナちゃん。人間の子どもたちと体重が同じくらいのハナちゃんは、7歳の女の子です。大きな体なのに、つぶらな瞳で下から見上げるような視線が愛(いと)おしく、私の家族は皆、彼女の大ファンです。しばしば1階窓近くの日当たりのいい場所で、大きな体と四肢をうつぶせに床に投げ出しては、たれ目の上目遣いで甲羅干しをしているかのような姿はかわいいを通り越してコミカル。私たちは、いつもハナちゃんに会うたびに”犬欲しい願望“が高まり、自宅に戻った後は、数日間ほど、ハナちゃんレス病に陥っています。

皆のアイドル・ハナちゃん。7歳! 大きな体で愛嬌たっぷり
皆のアイドル・ハナちゃん。7歳! 大きな体で愛嬌たっぷり

楽しい時間もいつかは終わり、翌日にはテキサスを去る時が近づいていることが、私たちの意識に挙がるようになってくると、子どもたちも微妙にテンションが下がり気味になっていきました。夕方近く、皆でハナちゃんを連れて近所の公園に散歩に出た後は、そんな空気を一掃すべく、最後はテキサス名物、豪快なバーベキューを、肉は当分食べなくても良いくらい食べて締めくくりました。やっぱり、うまい!! 店を出ると意外なほど雨が強く降り出してきました。滞在中は冷え込んだ日もありましたが、快晴続き。ここまで、天気が持ってくれてありがとう!という気持ちで帰路につきました。

別れの前夜は、訪問したら必ず食べるテキサス名物のBBQを満喫
別れの前夜は、訪問したら必ず食べるテキサス名物のBBQを満喫

また近いうちに必ず会える。どちらの家族もそのことを心配する必要がないことが、仲間であるという証し。次の再会がどのようにして訪れるのか? そして何を分かち合うのか? 今から楽しみです。

Thank you! また、お邪魔します
Thank you! また、お邪魔します
今回もBB-8(のカバン)がご同行。そろそろ最後の旅か?と感慨深く思います
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友人一家を訪問するたびに息子たちが作る基地。年々、本格的になり、今回は寝袋で1週間の合宿です
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