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副業ヘルパー

相棒は自転車 アラフィフ編集者が週1ヘルパーの二足のわらじを履いたわけ

訪問時に相棒となる自転車
訪問時に相棒となる自転車

新卒で入社した出版社で、書籍の編集者一筋25年。12万部のベストセラーとなった『87歳、古い団地で愉しむ ひとりの暮らし』(多良美智子)などを手がけた編集者が、40代半ばを目前にして、副業として訪問介護のヘルパーを始めました。まったく畑違いの職種に飛び込んで、見えてきた情景と思いをつづります。まずは、自己紹介を兼ねて、編集者&ヘルパーの二足のわらじを履くに至った経緯から——。

私は出版社で書籍の編集者として働いています。新卒で入社し25年、ずっとこの仕事だけをしてきました。そんな私が3年ほど前から、本業の編集者の仕事を続けながら、週のうちの“半日”に限って、訪問介護のヘルパーの仕事を始めました。要介護の高齢者宅を訪問し、介護サービスを提供します。訪問するのは、自宅から自転車で行ける距離のお宅。所属する訪問介護事業所から支給された制服を着て、自転車に乗り出勤!
コロナ禍を経て、必須となった介助前の手指消毒を済ませた後、排泄(はいせつ)介助からお食事の用意、服薬管理、口腔(こうくう)ケア、歩行の見守り…といったサービスを行います。

訪問先のお宅に着くと、最初に必ず、携帯ソープと消毒液で手指消毒をおこなう
訪問先のお宅に着くと、最初に必ず、携帯ソープと消毒液で手指消毒をおこなう

アラフィフ編集者がなぜヘルパーを?

副業を考え始めたのは、2020年のころ。
前年から、政府が旗振り役となって始まった「働き方改革」。その流れが私の職場にも押し寄せ、勤務先の編集部は裁量労働制になりました。さらにコロナ禍で在宅勤務も浸透し、働く時間の融通はききやすくなっていました。そして、次なる働き方改革のキーワードとして、世の中で「副業」が盛り上がってきてもいました。
40代も半ばとなり、ちょうど自分の働き方を見つめ直していた時期でした。
私たちの世代が社会人になった20数年前は、60歳定年が普通でした。でも今は、70代になっても働くのが珍しくない時代です。
仕事人生の後半戦、まだ30年近くある。編集者の仕事は好きだけれど、常に新しさを求められ、プレッシャーの多い仕事。この先ずっと、今のペースで走り続けられるかわからない。編集者以外の違う仕事を持っておきたい…。そんな気持ちが湧いてきたのです。
本業の編集者稼業はこれまで通り続けるけれど、副業として今から少しずつ別の仕事を始めておく。そうして、たとえば50代になったら副業の割合を増やす。60代以降は副業をむしろメインにして、本業の方をペースダウンする…。そんなスタイルもありじゃないかな、と。実際にそうなるかは別として、未来に向けて様々な選択肢を用意しておきたいと思ったのです。

未知の業界 介護職へ飛び込もう

また、せっかく副業をするなら、出版業界とはまったく違う業界がいい。副業選びでは、現職のスキルを生かして、というのが王道とされますが、それよりも、未知の業界に飛び込む方が楽しそうだし、自分の世界も広げられそう…。
そうして思い至ったのが、「介護職」でした。
実家の母が認知症だったため、デイサービスや老健の職員さん、ケアマネさんやヘルパーさんなど、介護現場の方と接する機会が多くありました。介護の仕事はどういうものか、リアルにイメージできていました。おばあちゃん子だったこともあり、お年寄りと接するのが昔から好きでした。“楽しそうな仕事だな”と思っていました。いわゆる“エッセンシャルワーカー(人々の日常生活を維持するために不可欠な労働者)”で、時に “虚業”と言われる編集者とはまた違ったやりがいがありそう、とも。

週1回、3時間ほどの勤務 そんな求人あるの?

こんな格好で在宅介護のお宅へ向かいます
こんな格好で在宅介護のお宅へ向かいます

とはいえ、当時、我が家の子どもたちも小学5年生と2年生で、この先の教育費などを考えると、本業の編集者の仕事のペースを落とすわけにはいきません。本業に支障が出ない程度に副業をするとして、週1回、それも午前中だけ、午後だけなどの3時間ほどでしょうか。週1回、しかもたった3時間の勤務…。そんな、虫のいい働き方がOKなところがあるものだろうかと、介護職の求人を探してみたところ、意外にもたくさんあったのです。
それが、訪問介護の登録ヘルパーでした。3時間どころか、「週1回、1時間からでOK」としている事業所の求人が次々と出てきました。
それだけ、人手不足の職種だということでしょう。高齢化が進む今後、さらに必要とされる職種だとも思いました。実際に、知人で70代のヘルパーさんがいます。80代で現役の人もいると聞きます。将来的にやっていけるという意味でも、私にとって、ヘルパー以上にうってつけの副業はないんじゃないの…。
こうやって、副業=ヘルパーという方向性が定まったのです。

ただ、ここで課題が…。
どのヘルパーの求人にも、「介護職員初任者研修」という資格が必須と書かれていたのです。
まずは、介護職員初任者研修とは何か調べるところから、私の副業・ヘルパーへの道が始まることになりました。

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