カレー屋さんオープンまでは山あり谷あり@八王子〜BLGの活動報告
認知症の人と「ともに生きる拠点づくり」を進める100BLGは、同じ思いを持つ全国各地の事業所とともに「学び合いのプラットフォーム」となるネットワークをつくっています。各事業所は、それぞれの土地柄や文化に合わせたかたちで運営されています。今回は、東京都八王子市にあるBLG八王子(DAYS BLG!はちおうじ)からの報告です。
こんにちは!
BLG八王子スタッフの谷村です。
今回は、様々なメディアでも話題になっているBLG八王子のカレー屋さんについてご紹介したいと思います。
2023年9月。東京都八王子市八幡町。かつて織物産業で栄えた街の面影を残す甲州街道沿いに、カレー屋さんがオープンしました。店長を務めるのは、BLG八王子のメンバーさんであるMさん。もともと大手ファミレスチェーンで35年勤務していました。料理長のKさんも、八王子市内で小料理屋の大将として長らく包丁を握っていました。初日から多くのお客様にお越しいただき、準備していた約50食はお昼すぎに完売。連日大盛況です。
そんなカレー屋さんですが、お店をやろうという話が出たのは今年の7月ごろのことでした。もともとKさんは、カレーやグラタン、スパゲッティなど、いろいろな料理をメンバーさんたちにふるまってくれていました。そんなあるとき、「やっぱり店でやりたいよね。」と言ったんです。
そんなタイミングに、八王子市高齢者あんしん相談センター大横のセンター長から、「甲州街道沿いのシェアキッチンで駄菓子屋さんをしませんか」というお話がありました。そこで、MさんやKさんはその場所を見に行き、「駄菓子屋ではなく、ぜひここでカレー屋さんをやりたい」ということになりました。このシェアキッチン「MACHI-HUG(まちはぐ)はちおうじ」にとっても、デイサービスに貸すという前例のないことだったと思いますが、私たちの活動に賛同いただき、ご協力してくださることになりました。
このメンバーさんの思いに応えるべく、地域の様々な方々が集まりました。スタッフや他のメンバーさんたちはもちろん、高齢者あんしん相談センターの職員さんたちや、医療福祉業界で勤務されている社員さんたち、地元の学生たちなどです。
さて、場所が決まったので次にメニューです。Kさんは普段仲間うちで食べるカレーを作っていたものの、お客様にお金をいただいて提供するというのは、10数年やっていません。そこで、どんなメニューにするのか検討と試作が始まりました。
1品だけではつまらないよね、ということで2種類のカレーを提供しようということになりました。最初に作ったのは、さば(鯖)カレーです。「実際に作ってみて食べないとわからないよね」という意見が多く、試作することにしました。しかし、「おいしい」という方と「さばの臭いがきつい」という方とで賛否両論……。採用は見送りとなりました。
次に「キーマカレー」に挑戦することに。初めて作ったときはトマトの配分が難しく、ミートソースっぽくなってしまいました。しかし、何度か練習を重ねるうちにレベルアップ。実際にお店でも出すことになりました。
他にも、コールスローサラダに塩を入れすぎてしまいしょっぱくなったり、大量に準備すると机上の計算通りにはいかず味が思ったものと異なったりと、開店までにもいろいろな試行錯誤がありましたが、なんとかみんなで開店の日を迎えることができました。
すでに開店から2カ月。Mさん、Kさんを中心にメンバーさんたちや、地域のたくさんの方々がチームとなって運営をしています。MさんやKさんは、認知症で一度は飲食店で働くことを断念しました。もちろん、1人だけではできないことがあります。でも、チームで一緒に取り組むことで、こうしてまた飲食店の仕事をすることができました。
メンバーさん同士や、ボランティアの地域の方々の中にも、本当にできるのかな、これは難しいんじゃないかな、といった気持ちはあったと思います。それでも、3カ月間の準備から始まり、お店の運営など一緒に過ごした時間を重ねる中で、自然と互いが理解し合い、共に働くパートナーになっていったのだと思います。
一緒に取り組む、共に過ごすことの大切さを改めて感じたカレー屋さんでした。