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かかしが繋(つな)ぐもの@きのこ〜BLGの活動報告

みんなでパシャリ
みんなでパシャリ

認知症の人と「ともに生きる拠点づくり」を進める100BLGは、同じ思いを持つ全国各地の事業所とともに「学び合いのプラットフォーム」となるネットワークをつくっています。各事業所は、それぞれの土地柄や文化に合わせたかたちで運営されています。今回は、岡山県井原市にあるBLGきのこ(在宅複合施設「西部いこいの里」)からの報告です。

みなさん、こんにちは。BLGきのこの川崎です。朝晩の冷え込みが日ごとに増す今日このごろ、体調管理には気を付けて過ごしていきたいですね。
今年の秋は食欲? 読書? スポーツ? 行楽? いやいや、今年は芸術の秋で決まりでしょ!! そんな出来事がBLGきのこに舞い込んできました。

私たちの暮らす岡山県井原市には、毎年秋になると田園風景が広がる中にポツンと“人”が集まる不思議な場所があります。それは遠くから見ると人に見えるが、近くで見ると人ではない。人の形をした何か……。その正体とは、毎年、地元地域で開催される「かかしコンテスト」出展作品の「かかし」たち。年に一度の地域行事として、毎年市内外から多くの作品が出展されています。

BLGきのこにも出展作品募集のチラシが舞い込み、メンバーさんに相談してみたところ、「見るのはいいけど作るのは大変そう」「昔、地域の役をしていたときに作ったことがある。大変だけど楽しいよ」「みんなでするなら大丈夫だろう!!」と前向きな声が上がり、さっそく挑戦してみることになりました。今回で2回目の参加となる私たち。前回とはメンバーさんも入れ替わり、初めての挑戦となる方が多く、どんなかかしができるのだろうかとワクワク感の中、取り組んでいきました。

今年のコンテストのテーマは「農業」。ちょうど夏にかけて畑でスイカを育て、みんなでおいしく食べた思い出を頼りに、体となる新聞紙を丸める作業が続きました。木の土台に体を取り付ける工程では、「ここはわしらの出番じゃ」と、男性陣がペンチとワイヤーを使い、手際よく作業をされました。

疲れたときは、「最優秀賞はお米1俵!! 参加賞でもお米1キロ!!」を合い言葉に、メンバーさん同士が協力して取り組む日々が続きました。大小2体のかかしが出来上がると、「もう1体作った方がバランスがいいんじゃない?」というメンバーさんの意見もあり、3体の親子かかしが完成しました。

かかしの手足を取り付け中(左)/見ないで! まだ服を着ていないよ!(右)
かかしの手足を取り付け中(左)/見ないで! まだ服を着ていないよ!(右)

1カ月の展示期間中は、施設内でもかかしの話題で盛り上がりました。家族も忙しく普段外出ができない方や、出掛けたくても足が悪くて出掛けられない方などに向けて、かかしの見学ツアーを開催するなど、私たちの作品を通して多くの方々が地域との繋がりを感じ、芸術の秋を楽しんでくれました。結果は……「最優秀賞!!」と言いたいところですが、残念ながらあと一歩及ばずでした。それでも見事「佳作」として表彰され、お米5キロをいただきました。「5キロってこんなに重たいんやな~」「おはぎはどう?」「やっぱり握り飯じゃろう!!」とみなさん、気持ちはもう食欲の秋へ。

BLGきのこから生まれた「かかし」が、西部いこいの里を利用して下さる方々へと、そして地域へと繋がり、メンバーさんの知らないところで、誰かが喜び笑顔になっていく。表彰されたことよりも伝えなければならない大切なことのように思えます。これからも地域との繋がりをより一層大切にしていきたいです。来年はどんなかかしが繋がりを運んでくれるのでしょうか? 今からワクワクしています。
メンバーのみなさん、本当にお疲れさまでした。

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