認知症とともにあるウェブメディア

お悩み相談室

もの忘れが増えた父 母に責められ、自信喪失が心配【お悩み相談室】

孤独な男性、Getty Images
Getty Images

認知症地域支援推進員で介護支援専門員の田中リエ子さんが、認知症の様々な悩みに答えます。

 Q.父(80歳)は最近もの忘れが多く、できないことが増えてきました。母は父に対して「さっき言ったじゃない」「こんなこともできないの?」と責め、父はどんどん自信を失っているようです。母に言い方についてアドバイスしたことはありますが響かないようで、父の精神状態が心配です(47歳・女性)

A.認知症ではなくても、高齢になるともの忘れやできないことが増えていきます。お母さんは、若くて元気だったころのお父さんのイメージが強く、変化した今のお父さんを受け入れられない状態なのだと思います。単にお父さんの言動にイライラしているわけではなく、強く言えば元に戻るのではないかという思いもあるのでしょう。年を重ねると変化を受け入れたり、対応したりするのが難しくなります。お母さん自身も高齢になって新しいことが覚えにくくなっている中で、お父さんも頼ることができないとなると余計に不安が大きくなって、お父さんにきつく当たってしまうこともあるかもしれません。

お母さん自身もお父さんにきつく当たるのはよくないと思いつつ、毎日顔を合わせていると、つい責めてしまい、そのたびに落ち込んでストレスをためるといった悪循環も起こりやすくなります。こうした状況のお母さんに対して、言い方を注意したところで、娘の言葉を素直に受け入れられないのは当然です。家族としてはまず、お母さん自身が加齢によって不安を感じていること、変化を受け入れにくくなっていることなどを理解することが大事です。

そしてお互いのストレスをためないためにも、お父さんとお母さんが離れて過ごす時間をつくれるといいですね。私が勤務している地域包括支援センターでも、こうしたご相談は非常に多く受けるのですが、その際には、地域で開催している介護予防教室や体操教室などをご案内します。地域の人とつながりを持っておくことは、今後のためにも大事ですし、同じような悩みを共有できる人と出会えるチャンスにもなります。認知症の家族会などでは、より同じような悩みを持つ人が集まります。お母さんのようなケースでは、「なぜ自分だけがこんな目に遭うのか」といった思いが強くなりやすいので、自分だけではないと思えると、気持ちが楽になることがあります。お母さんが気持ちを吐き出し、共感しあえる場があればストレスも解消され、お父さんにつらく当たる回数も自然と減っていくのではないでしょうか。まずは、相談者が地域包括支援センターで地域の集まりなどを紹介してもらい、お母さんに勧めてみてはいかがでしょうか。

本人が認知症と診断されているわけでもないのに、認知症の家族会には参加できないと考える方が多いのですが、そんなことはなく、主催者側としては大歓迎です。このままではお父さんは自信を失って引きこもってしまうかもしれません。今のうちに様々な場所と関わっておくことをおすすめします。

【まとめ】もの忘れが多く、できないことが増えてきた父を責める母。自信を失っていく父が心配

  • お母さんも高齢で変化していくお父さんを受け入れにくくなっていることを理解する
  • お父さんとお母さんが離れて過ごす時間をつくる
  • お母さんに地域で開催されている認知症の家族会などへの参加を勧め、同じ悩みを共有したり、気持ちを吐き出したりする場をつくってもらう

 

 

≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました。≫

あわせて読みたい

この記事をシェアする

この連載について

認知症とともにあるウェブメディア