ご近所さんの私へのとげのある言葉 デイへ行く母を見送った後に流れる涙
《介護福祉士でイラストレーターの、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
今日は母の検診。
医師は私の顔を見て、やさしく言った。
「娘さんおひとりで、お母さんの介護をよく頑張られてますね」
私は慌てて、
「私なんて、たいしたことしてないですよ」と、
笑顔で否定した。
だって、私より大変な介護をしている人は、
ごまんといるはずだ。
今朝は、母のデイサービス。
でもご近所さんには、
「元気なお母さんなんだから、
家にいさせてあげればいいじゃない」と、
何度も言われて、迷っている。
そうなのかな、
私は楽をしすぎているのかな?
ひとりになった途端、崩れる笑顔。
流れる涙。
なんの涙かはわからないけど、
ふと、気づく。
私は今、もうじゅうぶんに、
私なりの介護を頑張っているんだ。
何度書いても、書き足りないと思っているのが、
介護者さんの、ご苦労のことです。
なぜなら、
「私は、誰よりも介護を頑張っている」
と、おっしゃる介護者さんにお会いしたことがないからです。
多くの方が「私なんて、人と比べたらたいしたことをしていない」と、遠慮がちに言います。
「うちの家族は要介護度が高くないから、介護しているなんて言えない」と恥ずかしそうに言う方もいらっしゃいます。
私は今まで、訪問介護ヘルパーとして数多くのお宅に入らせていただきました。
「この高齢者さんはお元気だから、介護者さんは比較的、楽だろうな」と、
一見思われるようなご家庭でも、
介護者さんのそれぞれの1日や事情を知るうちに、
訪問介護ヘルパーであっても簡単に口出しなどできない、と気づかされました。
どんな介護にも、その介護者さんなりの大変さがあると知ったからです。
だからこそ大切なのは、介護者さんがご自身で、
その頑張りを認めてあげることだと思います。
そうすることでようやく、自分の気持ちを第一に、
手を抜けそうなところは、誰に気がねすることもなく、調整していけますし、
周りにも「助けてほしい」が言いやすくなります。
空が高くなる秋に入った、今日このごろ。
どなたもひと息ついて、
今日ここまでやってきたご自身を、
いたわってあげてはいかがでしょうか。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》