自分の心の中にある壁に気づく
こんにちは、若年性認知症当事者のさとうみきです。
わたしは、よく「認知症に見えない」と言われてきました。
以前も、この連載で書かせて頂いたように
大学病院の研究でのPET(陽電子放射断層撮影)検査の結果などから、
3カ所の病院の医師から「あなたは、若年性認知症です」
との診断を受けています。
そもそも
「認知症らしくない」「認知症らしい」って、何なのだろう……
と考えさせられてきました。
やはりまだまだ重度になってからの認知症のイメージばかりが、
先行してしまうのでしょうか。
どんな病気にも、「初期」があることを忘れて欲しくないと思います。
わたしの中でも「認知症が誤診であったら…」
そんな気持ちもありましたが、
いまは認知症だからこそ出来る活動をさせて頂けていることを、とても楽しんでいます。
ひととのつながりにも感謝しています。
そして、たくさんの気づきがありました。
自分よりしっかりしているように見えたご本人さん(認知症当事者の方)を前にしたときでした。うらやましかったのか……。
いつの間にか、「本当に、認知症なのかな?……」と思ってしまったことがありました。
以前、同じ言葉を自分に対して言われて、嫌な気持ちになったことがあったのに……。
ご本人に対して言葉には出さなくとも、心のどこかで、そのように感じてしまっていた自分を恥じました。
認知症の種類、症状には、わたしもすべてを知ることができないくらい何十種類もあると聞いています。
当初、わたしはクリニックで「アルツハイマー型認知症」と診断を受けましたが、
受けている研究レベルの検査で見えてくることは異なることになるかもしれません。研究参加はあと4年行われます。
認知症の症状の出方など、ひとそれぞれで違うだけでなく、途中で病名が変わるといったこともあるようです。
わたしもそのひとりになるかも知れません。
「本当に認知症?」
「誤診ではないの?」
そんな言葉が、わたしの心の中で、様々な葛藤を生じさせていた時期もあります。
そして、つい自分の中で、作ってはいけない「本当に認知症?」の壁を作りかけている自分に気づきました。
「本当に認知症?」と、他の人から聞かれたとき、
「私自身が聞きたいのです」と嘆きました。
そう、診断をするのは自分ではなく医師なのです。
当事者に対する「あなたは、本当に認知症?」の言葉は、
もしかしたら「大丈夫だよ」という、思いやりの言葉の意味での声かけかも知れませんね。
しかし、ときに、当事者を混乱させてしまうのです。
わたしも、昨年は特によく言われました。
もしかしたら違うかも知れない……。どうすればいいのか……。
自分自身、そんな期待もありつつ、しびれの症状と一緒に検査入院をしました。
そして、改めて、やはり「あなたは、若年性認知症です」と伝えられました。
中には、最初の診断から何年か経って、画像などの変化が見られずに
「認知症ではありませんでした」と、
そんな診断を受ける方がいることは確かにあります。
ただ、現状では、わたしは、認知症を調べるPET検査で陽性です。
PET検査は高額で保険適用外です。
私自身も自分で数十万円を出してPET検査を受けようとは思いませんでしたが、
幸いにも、研究参加のため無料で検査していただけたのはありがたいことでした。
2025年65歳以上の約5人に1人は、認知症と言われています。
認知症は、誰もがなる可能性があるのです。
わたしは、みなさんよりちょっと早く、ひと足先に認知症と診断を受け、生きているだけなのです。
自分の気持ちにも、胸を張って(笑)
「わたしは若年性認知症です」
そして、想いを伝え続けていきたいと思います。