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高齢母の暮らしの質が向上 「リフォームして正解」の4つのポイント

自宅をリフォームした駒﨑五恵(さえ)さんと、設計を担当した娘の本間ゆりさん
駒﨑五恵さん=左=と本間ゆりさん

一人暮らしの高齢者が増えてきている今、年を重ねても住みやすい住環境に注目が集まっています。6年前に自宅をリフォームした埼玉県在住の駒﨑五恵(さえ)さん(76)は、建築士である娘の本間ゆりさんに設計を依頼しました。「リフォームして大正解でした」と話す駒﨑さんの今の暮らし、そして本間さんがリフォーム時に大切にしたポイントについて伺いました。

高齢母の生活の質(QOL)を上げるために

築100年以上、延べ床面積約140平方メートルの一戸建て。玄関の引き戸を開け、広いたたきで靴を脱いでリビングに入ると、明るい太陽光の入る大きな窓が目に飛び込んできました。「こんにちは」と笑顔で出迎えてくれたのは駒﨑五恵さんです。かつては家族7人で暮らしている時期もありましたが、今は76歳の駒﨑さんが1人でこの家に暮らしています。

過去に改築して42年が経った2014年、駒﨑さんの娘であり1級建築士の本間ゆりさんが設計を担当し、リフォームしました。その経緯について、本間さんはこう話します。

「過去に一度改修をしたことがある自宅ですが、その後42年経ち老朽化が進み、お湯が出なかったり、アリが発生してしまったり、とにかく設備系の不具合がひどく、生活しづらい環境になっていました。高齢の母のQOLを上げて、予後は楽に暮らしてほしいと思ったのがリフォームをする決め手となりました」

Kuraci design(クラシデザイン)1級建築士事務所代表。
本間ゆりさん。Kuraci design1級建築士事務所代表。コンサルティング型の片付け支援の資格「ライフオーガナイザー」と「レジデンシャルオーガナイザー」を持っている

そこで、水回りの設備など最低限の改修を最優先にすると決めた上で、本間さんは駒﨑さんのこだわりを聞きました。駒﨑さんがこだわった点は、愛着があり歴史のある和室はそのまま残したいことでした。

その希望をかなえた上で、本間さんがリフォーム時の軸としたのは、①暖かさ、②動線の短さ、③新しい設備への変更 の3点でした。

リフォーム後のリビング兼ダイニング。日中は陽光が差し込む。
リフォームしたリビング兼ダイニング。日中は陽光が差し込むため暖かい

冬でも暖かい空間に

まず①の暖かさについて。老朽化が進んでいたため、冬場は家全体に隙間風が入り込んでいました。また、リビング兼ダイニングと台所、それらをつなぐ廊下がドアで区切られていたため、暖房の利きが悪いのが難点でした。

そこで、床下全面に断熱材を設置し、部屋を区切っているドアを取っ払うことにしました。その結果、暖房の行き届きもよくなり、広く暖かい空間に変わりました。

以前は個室だった台所。シンクは逆側に位置していたが、リビングの方が見えるように向きを変更した。
以前は個室だった台所。シンクは逆側に位置していたが、リビングの方が見えるように向きを変更した

次に②の動線についてです。前述の通り、各部屋のドアをなくしたことで、ドアを開ける手間がなくなりました。リビング兼ダイニングと台所の壁の一部を貫通させたことで都度食事を持ち運ばず済むようになり、「配膳が楽になった」と駒﨑さんは話します

また、トイレの配置も変えました。以前は洗面所と脱衣所を通った一番奥にあったトイレを、洗面所の向かい側に位置する広い風呂場の面積を半分にして空いたスペースに移しました。その際、従来の奥にトイレを設置するのではなく、廊下に面した場所に作ったことで、出入りが楽になりました。ドアは80センチ幅にしたため、車椅子でも行き来できます。

リフォーム後のトイレの扉は開閉がしやすい折り戸にした。
トイレの扉はドアタイプではなく、開閉のしやすい折り戸にした

最後に③の新しい設備についてです。以前の風呂場は昔ながらのタイル貼りで、脱衣所の間に段差がありました。そこで、タイル張りの在来工法からユニットバスに変え、暖房乾燥機を取り入れました。段差はなくしてドアを引き戸にし、バリアフリーにした結果、冬は寒かった浴室にも今では1年中快適に過ごせる空間へと変わりました。
「冬場でもお風呂に入るのが面倒ではなくなった」と駒﨑さんは話します。

リフォーム後の洗面所と脱衣所。
リフォーム後の洗面所と脱衣所。以前は一番奥にトイレがあり、このスペースを通らなければ辿り着かなかったが、廊下に面した場所に移動した

新しい環境の順応に時間がかかった

実はリフォームをするにあたり、「断捨離」をした駒﨑さん。自ら車を運転して、近所にあるゴミ集積所に不用品を捨てに何往復もしました。

これからも断捨離をしていこうと考えている駒﨑さん。
「部屋がきれいになり、朝晩に掃除機をかけるようになりました。これからもっとモノを処分していきたいと思っています」(駒﨑さん)

リフォーム後の生活を改めて振り返る駒﨑さんは「以前の間取りがどうだったか、もう忘れてしまいました」と笑う一方、「6年前にリフォームして大正解。娘のおかげです」と真剣な表情で話します。

「もし今の年齢でリフォームすることになったら、(身体的にも精神的にも)厳しかったと思うので、本当にやってよかったと実感しています。リフォームをするなら、なるべく早い方がいいと思います。私はトイレの場所が変わり、これまでしみついた習慣で前にあった場所に行こうとしたことが何回もありました。新しい環境に慣れるのに1、2カ月はかかりましたから」

建築当初からある和室はリフォームをせずに残した。
建築当初からある和室。思い入れがあるため、リフォームの対象から外した

使う人の「住みやすさ」が何より大切

今回の例だけでなく、高齢で一人暮らしをしている人やその家族からリフォームの依頼を受けることがあるという本間さんは、まずは相手の困っているポイントを把握し、老後の生活に合わせて設計することを意識していると言います。

「特に認知症の方の場合は習慣が大事だと思うので、トイレや洗面所の位置など変えなくていい動線はそのままにした方がいい。ドアを引き戸にするだけでも変わりますし、まずはその住宅を使う人の『住みやすさ』が何より大切です。最近の設備は優れているので、床暖房や浴室暖房など積極的に取り入れるのはいいことだと思います。優先順位を建築士と話し合ってみてください」

リフォームには時間も費用もかかりますが、介護保険制度の一環の「居宅介護住宅改修費」や、自治体が支援している「高齢者自立支援住宅改修給付」などを使える場合があります。本間さんは「手すりをつけるとか、スロープをつけるとかの小規模ではなく大々的な工事だったため申請しませんでしたが、小額でも、もっときちんと調べて申請すればよかった」と振り返ります。少しでも関心があった場合、親が感じている困りごとや理想の暮らし今から聞いてみたり、補助金制度について調べてみてはいかがでしょうか。

リフォーム後、QOLが上がり、快適な一人暮らしを楽しむ駒﨑さん。
今年77歳になる駒﨑さんは「この年でも、毎日忙しく充実した生活を送っています」と話す

一人暮らし高齢者リフォーム時のまとめ

・リフォームする箇所の優先順位を決める
・動線は可能な限り変えない方がいい
・リフォームには体力と新しい環境への順応力が必要になるため、するのなら早いに越したことはない
・ 介護保険や自治体の支援制度が使えるか確認する

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