「周辺業務?」「介護助手?」やりがいや誇りを持って働いてもらうには……新たなネーミング考えました
取材/廣石裕子
アクティブシニアは、介護現場の「周辺業務」の担い手として活躍が期待されています。これまで「周辺業務」の担い手は、「介護助手」など様々な名称で呼ばれてきましたが、この仕事の魅力を十分に伝えられていないという声も出ていました。1月21日、「未来をつくるkaigoカフェ」代表の高瀬比左子さんを中心に、全国の介護関係者など15人がオンラインでつながり、ワークショップを開催しました。
※ワークショップの模様は2021年2月27日の朝日新聞朝刊でも紹介されました。
全国の介護関係者がオンラインでネーミングを考えるワークショップ開催
- 企画:高瀬比左子(たかせ・ひさこ)さん
- 「未来をつくるkaigoカフェ」代表。介護福祉士・社会福祉士・介護支援専門員。小中高への出張カフェ、一般企業や専門学校でのキャリアアップ勉強会や講演、コラボレーション企画の提案やカフェ型の対話の場づくり、勉強会の設立支援も行っている。
介護の仕事の本質を伝えるステキな言葉を見つけたい
ワークショップを始めるにあたり、高瀬さんは自らのこれまでの活動と、今回の企画趣旨を次のように説明しました。
「私はこれまで介護の魅力を伝えるため、介護にまつわる様々な名称を考えるワークショップを、仲間と一緒にカフェ形式で開催してきました。参加者にとっては、介護に対する自分の思いや、介護という仕事の本質にあらためて向き合う機会になっていると思います。私自身も、これまでのワークショップを通して見いだした、自分自身の信念を表現する言葉を、2枚目の名刺に記載しています」
「『周辺業務』や『介護助手』といった言葉は、何をする仕事なのかがわかりにくく、雑用だと誤解されている面もあると思います。そうではなく、その業務に当たる方それぞれの特技や経験を発揮できる仕事であることを見える化し、住み慣れた地域でいきいきと働くことを望むアクティブシニアの皆さんと、介護現場をマッチングさせることが求められています。今日は皆さんに考えてきていただいたネーミングを共有し、その活用方法なども探ってみたいと思います」
ワークショップには、高瀬さんと交流がある全国の介護現場で働く人たちや介護にかかわる仕事をしている人が集まりました。15人が三つのセッションに5人ずつ分かれて行う「グループワーク」と、そこで出た意見を代表者が発表し全員で共有する「全体共有」の組み合わせで実施されました。前半は各セッションで、「(アクティブシニアの人たちに)誇りをもって働いていただくためには」をテーマに意見を出し合った後、各自がネーミングのアイデアを披露し、その後に全体で共有しました。後半は「新しいネーミングの活用方法」をセッションごとに話し合い、同じように全体で共有しました。
介護現場で経験を生かして輝いてほしい!
「誇りをもって働いていただくためには」という問いかけに対しては、各セッションとも介護現場を知る人たちならではの意見が多く出ました。また、「ケア」や「ライフ」といった言葉に、「パートナー」「サポーター」「キャスト」「クルー」などを組み合わせた案が多く出された一方、日本語をもじった個性的な名称も挙がりました。
「一般の人にはあまり知られていないけれど、介護は楽しんでできる仕事です。笑いながら働けるのは介護現場ならではだと思います。この明るいイメージを伝えることが誇りにつながるのでは」という意見をまとめたセッション1のメンバーは、笑顔を意識した「スマイルサポーター」、働く人が輝くという意味での「ケアスター」、支援する相手を年代で区切った、「ブロンズガイド、シルバーガイド、ゴールドガイド、プラチナガイド」などのアイデアを発表しました。
「自分の事業所では『支援員』という名称でアクティブシニアの人たち12人が働いてくれています」「初任者研修の参加者の最高齢は88歳でした」「『介護助手』の勉強会を機に3人が仕事につきました」など、現場からの報告を交えて発表してくれたセッション2では、「いつまでも輝いて働きたいという人はたくさんいて、現場で働くことがその人たちの誇りにつながると思います」と指摘。「くらしのサポーター」「ケアアシスタント」「アソシエートケアラー」「ケアフロンティア」「ワンアーム」といったアイデアを披露しました。
高瀬さんも参加したセッション3では、「専門職と助手という上下関係の壁を取り払いたい」「スポットライトが当たることでプロ意識や誇りが生まれるはず」という意見で一致。ネーミングのアイデアとしては、孫の手とシルバー世代をかけた「銀の手さん」、優しさで包む「こづつみさん」、セカンドライフの先の人生に寄り添う「サードライフパートナー」、つなぐ意味の「ケアコネクター」、人生を創造する意味での「ライフクリエーター」などを提案しました。
ほかに、「ケアという言葉より、ライフやソーシャルのほうが幅広い意味で使えるのでは」「団塊の世代は横文字好きだからカタカナ語にしよう」「ケアマネジャーをケアマネと呼ぶように、ライコネ(ライフコネクター)、ケアジョ(ケアジョブ)など略して使える名前にしたい」といった意見も出て共感を呼んでいました。
各セッションからの発表を受けた高瀬さんは、前半をこう締めくくりました。
「文字から浮かび上がる意味もあるので、ここで出たアイデアはすべて文字にして並べてみたいと思います。全体としては、日本語より英語のアイデアが多く出ました。また、アシスタント的な言葉より、パートナーのような、ともに歩むイメージの言葉が主流になりつつある気がします。ただし、サポーターに徹したいといった考え方もあり、こうでなくてはいけないというものではありません。引き続き考えていきましょう」
記念日や統一ユニフォームなど定着へのアイデア続々
後半のテーマは、「ネーミングの活用法」です。三つのセッションは後半も同じメンバーで、新しいネーミングを活用してどのような発信ができそうか、どんな媒体が活用できそうかを具体的に話し合いました。
セッション2では、「どんなにネーミングが良くても浸透しなければ意味がない」という考えを共有し、「目につく場所」「ビジュアル的なものをいかす」「楽しく広報する」といったキーワードで対話。書籍になった『生協の白石さん』のように『介護の◯◯さん』という本をつくる、QRコードで広める、ネーミングに沿ったゆるキャラをつくってピンバッジなどでアピールする、統一したユニフォームにして広報効果を狙う、といったアイデアをまとめました。「『勤老感謝の日』をつくって流行語大賞を狙おう!」など大胆な意見も飛び出しました。
セッション3で最初に話題になったのは、「『周辺業務』や『介護助手』という言葉の意味を知らない人にどう伝えるか」でした。「求人を入り口にする」「折り込みチラシの活用」のほか、「名前を決めること自体をイベントにできないか?」というアイデアも出ました。メディアを活用するほか、川柳を募集して飲料水のラベルで発表する、バズるようなポスターでアピールする、テレビ番組とタイアップして間接的に伝えるなど、幅広いアイデアが出ています。
セッション1は、「地域性や世代によって発信方法が違ってくる」ことに着目し、それぞれに合わせた伝え方が必要と考えました。SNSに頼るだけでなく、町の掲示板、チラシの配布、郵送といった方法も大事だと指摘。キャッチーなポスターをつくる、CMのようにイメージしやすい方法をメディアの力を借りて考えるなど多様な提案がありました。ただし、「アピールするからには介護の仕事が本当に魅力的でなければいけない」と、報酬など待遇面の改善が必要であることを付け加えました。
こうした発表に対し高瀬さんはていねいにコメントし、以下のように呼びかけました。
「事業者単位でできる発信と、業界全体ですべき発信があります。それらを分けながら、引き続き考えていきましょう!」
最後に、参加者それぞれが一押しのネーミングを画面に掲げて記念撮影。これからも仲間として一緒に行動していくことを約束し、この日のワークショップは終了となりました。
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