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介護施設で、あるある探検隊♪

これ苦行?事務所の偉い人が無反応の介護レク あるある探検隊の活動報告9

「あるある探検隊」のリズムネタで一世風靡したお笑いコンビ・レギュラーの松本くんと西川くんは、いま介護施設をまわっています。テレビや劇場の一般客相手と違って、施設の利用者さんたちを笑顔にするのは、やっぱり難しい! そんな2人が見つけた、今日の介護現場の“あるある”は――。

レギュラーと介護施設のみなさん
写真は毎回、レギュラー公式マネジャーがスマホで撮影した「渾身」の1枚です!

「後出しジャンケン、じゃいけんほい!」

レギュラーの2人のかけ声に、表情ひとつ変えずに手を挙げてグー・チョキ・パーをつくる参加者たち……。介護レクリエーションを学んで5年あまり、“史上最大”の盛り下がりぶりだ。

実は、ここは2人が所属する吉本興業の会議室。この日、2人は吉本社内の営業担当者らに向けて、介護関係のイベントや講演会で実際にやっているネタをプレゼンテーションしていた。目の前には、営業部の社員がズラリ。

2人のスタイルは、聴衆を巻き込んだ体験型の介護レクリエーション。この日も同じように、吉本社員たちに向けて渾身のネタを披露した。

最初の出し物は、現場でも“場”を温めるためによくやる「後出しジャンケン」。舞台の2人が「後出しジャンケン、じゃいけんほい!」というかけ声で出したグー・チョキ・パーに対して、参加者が“後出し”で勝ったり負けたりするゲームだ。

一般の宴会ゲームとしても知られるこのゲーム、ルールは単純だが、認知症でなくても聞くほど簡単ではない。プレゼンテーションで強引に参加させられた社員らのなかには、さっそく間違える人も。これが介護施設ならば、「あ、間違えた!」などと本人が叫んで、まわりを笑いのうずに巻き込む場面だが、社員たちは自分が間違ったことに気がつくと、苦笑しながら何やらメモを書き込んでいる。なんとも言えない緊張感である。

しかし! ここで心折れたら芸人の名がすたる。2人のオリジナル出し物の「ギャグ体操」や、松本くんが口をアヒルのように閉じて発した料理の名前を当てる「満腹アヒルの大冒険」など得意ネタを進めるうちに、社員たちも徐々に楽しみだしてきた。

「はいっ! 麻婆豆腐!」

最終的には、さっそうと手を挙げて、得意げに「満腹アヒル」の正解を答えるのだった。

松本くん これまで僕らも、要介護度が高い人たちばかりの施設とか、いろいろなタイプの施設に行ったけどな。この社内向けのプレゼンが、いままでで一番きつかったと思うわ。

西川くん 吉本には何千人も所属芸人がいるわけやからね。最近はお笑いライブだけじゃなくて、社会的な活動をしている芸人も多いから、それぞれの細かい活動までは会社も把握していないところがある。僕らのことなんて「介護施設にバイトしに行ってる」と思いこんでいた社員さんもいたらしいやん(笑)。

松本くん そこで、毎年やっているのがこの社内プレゼン。僕らは今回初めて参加したけど、所属芸人が普段どんな講演会などをしているのか、社内の営業担当の人なんかに向けて30分間で披露するものやね。

西川くん ま、営業担当といっても1人や2人やないで。吉本には「よしもと住みます芸人」といって、47都道府県にご当地芸人がいたりするやんか。営業さんも各地に計何十人もいてはるので、最初に聞いたときは、どんな大規模なプレゼンになるのかと思ったけどな。

松本くん 思った、思った。でも、いざ会議室のドアを開けたら……たった8人しかいなかったという(笑)。それも、僕らがこの世界に入ったときから気軽に声も掛けられないような偉い立場の人たちもいて……余計にきっつかったな。

西川くん そういう人たちの前で、介護レクリエーションを説明すると言ってもな。どう説明しようかと思って、ドアを開けたとたん頭が真っ白に。しかも最初の「後出しジャンケン」で、「これはデュアルタスクで……」とか介護における効果を説明しながらやっても、誰も乗ってこない。真顔で見ているだけやったし。

松本くん いつもの講演会と同じようにやったけど、いままでこんなに反応がない現場はなかった。本当にあくびをしてる人もいたやん(笑)。どんなに要介護度が高くても、おじいちゃん、おばあちゃん相手にやったほうが、ずっとノリがよかったんと違うかな。

西川くん この日は僕ら以外にも十数組の芸人さんたちがプレゼンしてたね。たとえば、高学歴コンビ・田畑藤本の2人は「身の丈にあった勉強法」についての講演会を30分のコンパクト版にしてやっていた。

松本くん そうそう。そうした人たち後に急に僕らの「後出しジャンケン、じゃいけんほい!」みたいな、“強制的”な参加型プレゼンが出てきて、最初は「なんやねん」と思った人も多かったんやろうな。

西川くん まさに「場違い」という言葉がぴったり! ところが、もうどうにでもなれと開き直っていつもの調子で続けていたら、だんだんみんな乗ってくれて、ほんまによかったわ。僕なんて、いつも以上に大汗かいてしまったもん。でも、最後の質疑応答でうれしい反応があったね。

松本くん 偉い人が僕らのプレゼンを一通り見て、「ええパッケージやね」とめっちゃ誉めてくれはった。初めて会社から僕らの活動が“お墨付き”をもらったみたいなもんやんか。うれしかったね。

西川くん 世の中はすでに高齢化社会やからね。会社のお墨付きをもらった上に、「これからは、もっと活動を広げられるんじゃないか」というお言葉ももらった。

松本くん こりゃ大変や。これで、一気に介護レクリエーションを広める機会が増えるかもしれんで!

西川くん 松本くん、それはたしかにアルな!

(編集協力/ Power News 編集部)

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