認知症の「新しい時代」、アジア国際会議で日本の若者が発信

YEPの参加者全員で記念撮影

8月、日本の若者6人が、マレーシア・クアラルンプールで開かれたADI(国際アルツハイマー病協会)アジア太平洋地区の会議(マレーシア会議)で、これまで自分たちが取り組んできた認知症対策を発表しました。「ユース・エンゲージメント・プログラム(YEP)」と名付けられたプログラムは、ADIで初めての取り組み。マレーシア会議では、これまで各国で実施されてきた認知症ケアや街づくりの発表が慣例でした。今回発表したのは日本の他、インドネシア、ブルネイ、マレーシアの若者たち。認知症の人のケアを各国の若者で共有し、若者が地域に深く関与することが目的です。

アジア各国の認知症関係者に新風を吹き込んだ日本の若者6人と、彼らを現地でサポートした「認知症の人と家族の会」の鷲巣典代理事が、8月16日~18日までクアラルンプールのイスタナ・ホテルであった会議の様子をリポートしてくれました。

発端は「世界中が認知症にやさしく、地球は平和に…」という妄想

鷲巣典代(「認知症の人と家族の会」理事)

プレゼンする近畿大チーム
プレゼンする近畿大チーム

「マレーシア会議で若者が地域づくりについて発表する」という企画は、昨年12月に開かれた認知症フレンドシップクラブの「多世代まちづくりプロジェクト(学生とともに考える認知症にやさしいまちづくり)」の打ち上げパーティーから始まりました。参加者や主催者の皆さんとワイワイ話しているうちに、「こんなすばらしい日本の若者と世界の若者が仲良くなれば、世界中が認知症にやさしくなり、地球は平和に……」など、どんどん妄想が広がっていきました。そして思いついたのが、8月に開催されるADIアジア太平洋地域マレーシア会議での発表でした。

会場には、発表者の顔写真が入った大きな案内ポスターが立てかけられた
会場には、発表者の顔写真が入った大きな案内ポスターが立てかけられた

その場にいたフレンドシップクラブ理事の徳田雄人さんらにもちかけると、すぐに賛同してくれ、直ちにマレーシア会議の組織委員会に連絡しました。すると向こうも若者が参加できる企画を考えていたとの返事。そこから、認知症の人と家族の会と認知症フレンドシップクラブが共同して、「マレーシア会議若者参加プロジェクト」がスタートしました。また費用については朝日新聞厚生文化事業団や損保ジャパン日本興亜福祉財団などからの助成をいただくこともできました。

若者あっちの元気が、大人に前へ進む勇気をくれた

クアラルンプールへの出発当日には、台風10号が関西に接近。また経由地の香港空港では市民デモによる空港閉鎖など、想定外の出来事が発生しましたが、何とか全員無事に到着できました。

新潟看護大チームは、宿泊先で深夜までプレゼンの練習をした
新潟看護大チームは、宿泊先で深夜までプレゼンの練習をした

発表第1日目は100席ある会場は立ち見が出るほどの盛況でした。海外の参加者に英語でプレゼンするというプレッシャーにも関わらず、皆、余裕の笑顔で発表しました。一方の私たち引率者は「授業参観」さながら、ドキドキしながら見守っていました。無事、プレゼンが終わった時には、胸がいっぱいになりました。

2日目はさらに大きな会場でしたが、3チームとも内容も表現も前日よりもグレードアップした感じでした。
インドネシア、ブルネイ、マレーシアの若者たちは、みな流暢な英語でプレゼンをこなしましたが、日本チームのプレゼンもひけを取らず、内容的にも心に響くものがあったと思います。海外参加者からも「彼らの生活の中で実際に活動していることが、とてもよく伝わってきた」と言ってもらえました。

プレゼン後の質疑応答をサポートする鷲巣典代さん
プレゼン後の質疑応答をサポートする鷲巣典代さん

日本の若者たちは、様々な分野の多世代がアプローチする、いわば「認知症の新しい時代」が始まっていることを、世界に向けて力強く発信できたと思います。あきらめや妥協に陥りやすい私たち大人に、彼らは元気いっぱいの笑顔で前に進む勇気を与えてくれたと感じました。彼らのことを本当に誇りに思います。

今回の成果をもとに、来年3月にシンガポールで開かれるADI国際会議に向けて、すでに第2回若者参加プロジェクトの企画が進んでいます。各国の若者が活発に交流し、認知症の人にやさしい地域づくりが世界中に広がっていくことを多いに期待します。

帰国便がベトナム・ホーチミンまで一緒だった新潟県立看護大チームと、近畿大チームでお別れ前の最後の1枚!
帰国便がベトナム・ホーチミンまで一緒だった新潟県立看護大チームと、近畿大チームでお別れ前の最後の1枚!

最後に、日本の若者たちの発表への各国のADIメンバーからのコメントの一部を添えます。

グレン・リーズ(ADI 議長)

彼らの発表は本当に素晴らしかった。自分たちがどのように認知症に関わっているか、心を込めて話すのを聞いて、とてもうれしい。もっとたくさんのことを話し合いたかった。

ジャッキー・ウォン(マレーシア会議若者参加プログラム担当)

日本チームはすごい! 日本で、若者世代への認知症啓発が様々な分野で取り組まれていることを多いに学んだ。

ビダヤ・シャノイ (インドアルツハイマー協会ムンバイ支部代表)

彼らが発表した取り組みは、すべて創意にあふれとても刺激を受けた。そして、どの発表も、認知症の人と介護者に対する深い理解に基づいている。

DY・スハルヤ(ADIアジア太平洋地域事務局長)

日本チームはクアラルンプールで、社会貢献、ボランティア、権利擁護など、認知症に関わる長い道のりに出発しました。彼らが今後作り上げる環境の進展を楽しみに見守っています。

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