親の認知症介護 実家のリフォーム費用を兄が拒否します 専門家の回答
構成/中寺暁子
介護事業に携わる井上信太郎さんが、介護経験を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。
Q.一人暮らしの母(82歳)が認知症になりました。母は家を離れたくないというので、今後もなるべく一人で暮らせるように家をリフォームする予定です。費用は母のお金だけでは足りず、兄と私で分担したいのですが、兄に断られてしまい、納得がいきません(55歳・女性)
A.まず、住宅改修の制度の話をしたいと思います。介護保険で要介護認定されると、住宅改修のサービスが利用でき、20万円までは、実際の住宅改修費の9割相当額が支給されます。支給限度額を超えた場合は自己負担になりますが、要介護度が3段階以上上がったときは、再び上限20万円の支給を受けられます。このため、一気にリフォームするのではなく、まずは今の生活を安全に継続するためのリフォームだけをして、要介護度が上がった際に追加でリフォームするという方法もあります。また、独自に追加援助する仕組みがある自治体もあるので、お住まいの地域の自治体に問い合わせてみてください。
現状どのようなリフォームが必要か、どこまで先の安全を見据えるのかといったことを、ケアマネジャーとよく相談してみてください。
次にお兄さんとの意見の相違ですが、お兄さんはなぜ費用を負担することを断ったのでしょうか? リフォームは必要ないと思っているのか、必要だと思っているけれど費用が負担できないのかによって、解決策は大きく違いますよね。必要ないと思っているのなら、兄妹の間で必要性について気持ちを合わせていかなければなりません。ただしご家族の中だけで話し合わないほうがいいでしょう。身内だからこそ譲れないことってありますよね。相談者がケアマネジャーと決めたことを一方的にお兄さんに伝えるといった方法ではなく、ケアマネジャーや事業所などに間に入ってもらい、一緒に話し合ったり、双方の話を聞いてもらったりすることをおすすめします。
兄弟姉妹の間で、介護計画に関して思い描く方向性が違うことはよくあります。私自身もよくこうした相談を受けますが、大事なことは兄妹間の意見の相違ではなく、一人暮らしのお母さんの生活を守ることですよね。そこに集中すると、解決の糸口が見つかるかもしれません。
【まとめ】兄弟姉妹の間で介護計画の方向性が異なる
- 制度を利用する
- 家族の間だけで解決しようとせず、ケアマネジャーや事業所に間に入ってもらう
- 認知症本人の生活を守ることを一番に考えて計画する