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歌って踊って理解促進「認知症アンバサダー」のご当地アイドルに会ってきた

認知症とアイドル。一見まったく関連性のない組み合わせですが、「いま群馬県を中心に、病院や高齢者の介護施設への慰問活動に力を入れているアイドルグループがいる」という噂を耳にしました。一体彼女たちは何者なのか。なぜ高齢者をターゲットに!?

ライブで歌うあかぎ団
大盛り上がりのライブ。歌の上手さとダンスのクオリティがとてつもなく高い!

実態を調査すべく、夫婦揃って認知症の祖父母の介護に約7年間携わった、私ヤングケアラーの青山ゆずこ(なかまぁるで連載中!)が現地に乗り込みました。私の目は厳しいぞ。
※編集部注:青山さんは本来、低姿勢なタイプです

何度会っても「はじめまして」の関係性

彼女たちの名前は「あかぎ団」。群馬県で活躍する、ご当地アイドルです。メンバーは7歳から30代までとかなり幅広く、20名が在籍しています。
この日は高崎市内でメンバーの生誕祭ライブが行なわれており、ライブ直前のコアメンバーを捕まえて直撃インタビューをしました。

「こんにちはー! あかぎ団ですっ(キラリ)」
可愛らしい衣裳に身を包み、キラキラした表情で目の前に現れた彼女たちは、全国区のアイドルに引けをとらない、まさに王道のアイドルです。はちきれんばかりの笑顔に、私一人に対して全力の挨拶までしてくれる。やばい、好き。そして顔がめっちゃ小さい。

聞けば彼女たちは、群馬県のPRのほか、活動の一環として高齢者施設へ慰問し、利用者と一緒に歌やダンスなど“本物のアイドル直伝”のレクリエーションを行っているとか。

ゆずこさんとあかぎ団
ライブ直前のあかぎ団のコアメンバーと、青山ゆずこ(左から杏さん、加藤さやかさん、ゆずこ、磯干彩香さん、天田真未さん、彩舞季さん)。「アイドルだからこそ、理解を広められる可能性もあると思います」と磯干さん

「歌って踊るだけのアイドルじゃなくて、元々のコンセプトが『色んな角度から地域貢献ができるグループを目指す』だったんです。それで月に数回、病院や施設へ伺ううちに、認知症の方々と出会いました。正直私たちの両親やおじいちゃんおばあちゃんもまだ若くて、認知症が身近とはいえませんでした。でも、だからこそもっと勉強したいという思いが強くなったんです」と話すのは、ハキハキとしっかりメンバーの思いを伝える、お姉さん的存在の磯干彩香さん。
そっかあ……「知らない」で終わらせず、「理解したい」と一歩踏み出せるのはスゴイ!

今では7歳をはじめとするメンバー全員が、認知症を理解し周囲を応援する認知症サポーターになったといいます。全員の手首に、サポーターの証のオレンジリングが光っていました。
この日の生誕祭ライブの主人公であり、柔らかい笑顔が特徴的な天田真未さんいわく、「施設への慰問活動では、私たちは利用者さんたちの“孫”になります。一緒に笑って、歌って、踊って。でも何度会っても私たちの存在を覚えてもらえないことも時々あります。だから毎回が『はじめまして』。新鮮な気持ちで出会いを楽しめるんです」。透き通ったまっすぐな目でそう語る天田さん。こんなに明るくて元気いっぱいな孫に囲まれたら、確かに幸せだろうなあ。毎回会うたびに「はじめまして」から新たな刺激がある。最高じゃないですか。

認知症のおじいちゃんの壮大なツンデレにびっくり?

「孫と認知症のおじいちゃん、おばあちゃん」という言葉を聞くと、私ゆずこも夫婦揃って認知症のじーちゃんばーちゃんと過ごした怒涛の日々が蘇ります。ばーちゃんは感情をうまく表現できず、私の誕生日に「出て行け!」と暴れていたくせに、その日の夜、私の布団の中に大量のぬるいビールと餃子を入れてくれたっけ……(ばーちゃんなりの祝い方)。
そこまで突飛な行動はなくても、感情表現や言葉で伝えることが苦手な利用者さんと向き合うのはそう簡単なことではないはず。そんなぶっちゃけ話を聞いてみると――。

「レクリエーションのとき、最初はぶっきらぼうでとっつきにくいおじいちゃんもいますよ。強い言葉をぶつけられることもありますが、でもね、歌と踊りが始まると表情は変わらなくてもちゃ~んとやってくれるんです。無表情でも誰よりもノリノリだったり(笑)」と、楽しそうに話す彩舞季さん。端正な顔立ちで、そりゃあこんな美人な“孫”に優しくされたら、おじいちゃんも言うことを聞いちゃいそう。

まさにそれはツンデレだ……と私が呟いた瞬間、前出の磯干さんが物凄い勢いで頷きました。

慰問に訪れたのあかぎ団
高齢者施設に慰問中のあかぎ団。無表情ながら踊ってくれるツンデレさんもいるとか(オリエンタル・ジャパン提供)

「そう! もの凄く壮大なツンデレです!(笑) そんな風に右往左往しながら自分たちなりに認知症の方々と触れ合っていて、現場で一つひとつ経験したからこそ学んだこともあります。例えば、何度言っても話を理解してもらえないときに『何で分からないの?』『さっきも言ったよ〜』とか、相手を否定したり自尊心を傷つけてはダメということ。私たちは軽く言ったつもりでも、利用者さんはショックを受けてしまうかもしれません。何かを言うんじゃなくて、寄り添ってあげること。それが一番大事なんだなって」

私が7年の在宅介護で習得したものを慰問活動で吸収するなんて、若いのにマジ尊敬です。

ご自身のおばあちゃんも認知症だという杏さんも、胸の内を語ってくれました。
「88歳のうちのおばあちゃんも軽い認知症と診断されたんですが、慰問活動の体験があったからこそ、自分の家族にもどう寄り添うべきなのか分かった気がします。認知症は誰でもなる可能性がありますよね。だからこそ、若い年代の人も『自分には関係ないもんね〜』じゃなくて、両親やおじいちゃんおばあちゃんがなったときに、どういう症状でどう寄り添えばいいのかを知っておいて絶対損はないと思うんです。だから私たちが慰問活動で学んだ経験を若い人たちにも伝えたいなって。病院や施設での慰問活動のほかにも、ショッピングモールなどで認知症の理解促進イベントをやっているんです」

ゆずこさんのインタビューを受けるあかぎ団
メンバーの手首には、認知症サポーターの証のオレンジリング。ひと言も聞き漏らすまいと、取材に熱が入りました(手前がゆずこ)

促進イベントとは、「あかぎ団と認知症について考えよう」というテーマのもと、ライブとトークがセットになったもの。歌やダンスの披露のほか、実際に認知症の家族を介護している方々をゲストに招いて、ステージ上でトークライブをするのだとか。あかぎ団のメンバーも、そういった家族の生の声や体験談を聞いて、ファンと一緒に認知症への理解を深めるようです。
杏さんが言うように、症状や寄り添い方を知るのに年齢はまったく関係ないですもんね。

アイドルだからこそできる、認知症へのアプローチ
ゆずこが速攻でファンと意気投合できたのは“あかぎ団マジック”か

そんな献身的な活動を続けていた2017年9月21日、認知症に関するイメージ向上と県民の理解を促進する大使として、群馬県独自の「認知症アンバサダー」に任命されました。こちらの記事の写真にもしっかり写っています。
「認知症は誰にとっても身近です。私たちと同年代の子たちや、『今はまだ、介護や認知症って全然身近じゃないし』と思っている人たちにも、『決してみんな他人事じゃないんだよ』って知ってほしいですね」(杏さん)

ところで大変失礼ながら、アイドル活動では毎日ではないですよね? 介護をしつつへとへとになりながら仕事をしていた私としては、生計が気になるのですが……。
「成人しているメンバーはラジオのパーソナリティや障害者支援施設の支援員、そして一般職など全員が二足のわらじでアイドル業をやっているんですよ」とぶっちゃけてくれたのは、人生経験豊富なお姉さん、加藤さやかさん。
「私たちはどっちも本業で、どっちも本気。さらに歌も踊りも慰問活動だって全力投球です。こんな風に認知症の理解を広めるアイドルがいても面白いはず。私たちは群馬県から新しいアイドルの形と可能性を発信したいです」と、磯干さんも夢を語ってくれました。

誰が何の仕事をされているのか、ここでは割愛させていただきますが、「どちらも本気」と語る彼女たちのステージはすべてが全力投球。インタビューの後、ステージの後ろで目立たないようにライブを見守っていた私も、アップテンポの曲がかかる度に体が自然と前に……。
もうこの時点で、すっかり彼女たちの虜です。そして「2011年のデビュー以来、彼女たちを応援している」という男性ファンの方々となぜか一瞬で打ち解け、ちゃっかりペンライトをお借りしてライブを満喫しました。ライブ後、思わず取材を忘れてファン同士で「飲みに行きましょう!」と言いそうになるほどの盛り上がりよう。あかぎ団恐るべし!
認知症とアイドル。今後さらに彼女たちから目が離せなくなりそうです。

あかぎ団のライブで盛り上がるゆずこさん
なんでも、数人のファンでペンライトを合わせて「あかぎ山」を演出するポーズがあるそうで、にわかファンながら本気でやらせてもらいました!

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