「認知症保険」、選ぶ前に調べよう。担当者に商品の狙いを聞いてみた
村井七緒子
「認知症保険」を聞いたことがありますか?生命保険各社が最近、新商品を相次いで売り出しています。公的な介護保険は要介護認定を受けるとショートステイや訪問介護といったサービスを受けられるのに対して、認知症保険は認知症と診断されることなどに対して保険金が支払われる仕組みです。医学的には、科学的根拠に基づいて認知症の予防に有効と言い切れるものがない現状で、私たちが個人として、どのように備えていくべきかは悩ましい問題です。それぞれの保険商品がどのような狙いで開発され、どんな人が加入できて、どんな仕組みなのか、各社の担当者にそれぞれの特徴を聞きました。
太陽生命は検査費用を2年ごと給付
業界で初めての認知症保険は、太陽生命が2016年3月に発売しました。保障内容を認知症に特化し、60代以上の人が加入しやすいように持病があっても入れるようにしたところ、大きな反響があったそうです。現在までに累計40万件以上を販売し、同社の主力商品になりました。
2018年10月には「ひまわり認知症予防保険」にリニューアルし、「予防」のためのサービスを加えました。加入者は契約から1年後、その後は2年ごとに、2~3万円の「予防給付金」を受け取ります。加入者は、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)の発症リスクを調べる血液検査を受けることができます。検査はあくまでも任意ですが、「『予防給付金』を出すことで検査の受診を促し、早期発見、早期治療につなげる」ことがこの商品の狙いです。
この保険は、「認知症にならない仕組みを保険でつくれないか」と2年間かけて構想したそうです。太陽生命の広報担当者は、「MCIの状態で対処すれば症状が改善するという最近の研究結果もあります。これまでのように認知症になってから保険金をお支払いするだけではなく、認知症にならないための備えもサポートしていきたい」と説明します。
ひまわり生命は軽度認知障害の診断で一時金
損保ジャパン日本興亜ひまわり生命が2018年10月に売り出した「リンククロス 笑顔をまもる認知症保険」も、早期治療を意識した商品設計になっています。最大の特徴は、軽度認知障害(MCI)と診断されると一時金10万円が支払われること。認知症へと進行しないように気をつけてもらうのが狙いで、提携先のパートナー企業による認知機能低下の予防サービスを利用することもできます。
また、この損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険を傘下に置くSOMPOホールディングスは2017年9月に国立長寿医療研究センターと提携し、認知症への取り組みに力を入れています。同社の広報担当者は、「早く見つけて対処することで、認知症になる人を少しでも減らしたい」。グループ会社が介護事業にも参入し、保険だけでなく介護の現場からも認知症と向き合っているといいます。
2018年4月には、SOMPOホールディングスの社内に「認知症プロジェクト推進室」を新設しました。「認知症という社会課題の解決を、新事業の核として位置づけています。生命保険や介護といった事業の枠を取り払って、認知症という課題に何ができるかを考えていきたい」と、広報担当者は話します。
第一生命はスマホアプリのサービス充実
生命保険大手の第一生命も、2018年12月に認知症保険に参入しました。認知症と診断され、かつ、公的介護保険の要介護1以上と認定されたときに保険金が支払われます。全国で要介護認定者が増えており、要介護状態の原因で最も多いのが認知症であることから、保障は介護の際の負担軽減に重きを置いています。
加入者向けのさまざまなサービスも用意されています。スマートフォンを使って目の動きを分析することで認知機能を年1回測れるほか、スマホアプリで日々の食事や運動量の記録、脳トレなども利用できます。また、離れて暮らす家族に代わって警備会社のALSOKが加入者宅を訪問して状況を確認するサービスも無料で受けることができます(利用回数に制限あり)。
こうした商品が生まれた背景について、第一生命の広報担当者は「従来は幅広く保障する介護保険が主流でしたが、最近は特定の保障だけに特化した保険へのニーズが高まっています。少しでも健康に長生きするための保険として、認知症保険を活用してほしいです」と話しました。
認知症とお金の関係を考える