介護の裏ワザ、これってどうよ?

認知症で病院嫌いのばーちゃんに捧ぐ創作ウワサ話 これって介護の裏技?

青山ゆずこです! 祖父母がそろって認知症になり、ヤングケアラーとして7年間介護しました。壮絶な日々もゆずこ流介護で乗り切ったけれど、いま思えばアレでよかったのか? 裏ワザとして正解だったのか? 同じヤングケアラーとして奮闘している仲間におススメできるのか!? 専門家に解説してもらいました。噂話ってみんな好きでしょ? んなことない?

ウワサ話大作戦で対応

食事をとらない、お風呂に入らない、そんなじーちゃんばーちゃんに対して、「わたしを風呂に入れて~」と、自分がダメ人間になることで誘導するテクニックを前回 紹介しましたが、ほかにも、病院に行くのを嫌がったり薬を飲まなかったりなど、ゆずこの介護はトラブル山積み状態。さらに、やっと貰えた薬をドサッ!っと袋ごと捨ててしまったり、自慢の怪力で孫の部屋の荷物も外に投げ捨てちゃう。いくら自分がダメ人間を装ったところで、それだけでは解決できない問題もまだまだあります。そこで新たに思いついたのが、“ウワサ話大作戦!”です。

「くっ…!薬が全部捨てられてる…」

「病院や薬を嫌がるばーちゃんがいるらしいよ」「迷惑なばーさんだね」

方法はいたって簡単。例えば世間話などでも、「〇〇さんのお宅、嫁姑問題でこんなことがあったらしいわよ」「あらやだ~大変ねえ……」など、こんなやりとりがありますが、じーちゃんばーちゃんの行動を、第三者の行動として本人に話しちゃうだけ。
例えば、薬がもうなくなりそうなのにいくら説得しても病院に行くのを嫌がるときはこんな感じです。

ゆずこ  「ねえばーちゃん、友達から聞いた話なんだけどさぁ、病院にかからないといけないのに、『私には必要ない!』『人の世話にはならないよ!』って意地をはって行かないばーちゃんがいるんだって。家族が相当困ってるみたい」
ばーちゃん「それは迷惑なばあさんだね」
ゆずこ  「でしょ~!? もらった薬も即効でゴミ箱に捨てちゃうらしいよ」
ばーちゃん「なんだいそれは。もったいない」
ゆずこ  「本当大変だよねえ。でもばーちゃんはそんなことしないでしょ?」
ばーちゃん「当たり前だよ! 私をそんな迷惑ばーさんと一緒にしないでおくれ!」
ゆずこ  「そうだよねえ、ばーちゃんなら素直に病院に行って薬もちゃんと飲むもんね」
ばーちゃん「当たり前だよ!」 
ゆずこ  「さすが!やっぱりばーちゃんは違うねえ♪ よし、それじゃ病院行こ」
ばーちゃん「う……」(素直に行く)

「あ、あたしは人の言うことを聞くよ!」「へぇ~」

ウワサ話を聞いて一緒に批判してしまった手前、「まさか自分も同じことをやらかす訳にはいかない」と思うのか、態度が急変。別人か!?と思うくらい、素直に動くじゃありませんか。
しかも、病院の受付のお姉さんに向かって、「本日はお世話になります。〇〇町の青山でございます!」と大声で挨拶までしちゃったり。ウワサ話の効果はてきめんでした。

本人に直訴は効果ナシ!“ウワサ”程度でちょうどいい

あくまでウワサ話で盛り上がって、“人のふり見て我がふりなおせ”な、この作戦。介護や認知症の専門家の方々からはどのように見えるのでしょうか。横浜相原病院の院長で、『認知症は接し方で 100% 変わる!』(IDP出版)の著者である吉田勝明先生にお話を聞きしました。

「薬を捨ててしまうのも、病院に行かないことに対しても、もちろん正論で攻めたところで効果は期待できない。ましてや、『家族はこれだけ困ってるんだよ?』『〇〇して欲しいと思ってるんだ』と直接訴えても、行動を否定された本人のプライドを傷つけてしまうだけです」
いくら相手(要介護者)の行動が矛盾していたり、筋が通っていなくても、「それを突き詰めたところで、良い結果は何も生まれない」と吉田先生。

「認知症の患者さんの多くは、自分の状態を把握できていません。頭ごなしに注意をしても、本人を追い詰めるだけです。それならば、出来ない、したくない本人を説教するのではなく、『今、出来ること』に目を向けて褒めてあげると、それがやる気(活発に行動する、精神の安定など)にも繋がります」(吉田勝明医師)

たしかに今回わたしがとった策の中で、一番重要なのは「他人」のウワサとして話すことでした。そして、その後もウワサ話作戦を駆使して、病院に連れていったり薬を飲ませたりがスムーズにできるようになったのですが……

ちょっとしたトラブル勃発です!

ウワサ話が大好きなばーちゃんは、目を輝かせて毎日毎日「そういえばあの迷惑ばーさんはどうなったんだい(笑)」「続きを聞かせておくれよ」「また家族に迷惑かけてるんじゃないろうね?でもどこか憎めないんだ」と続報を催促してくるようになってしまったという! しかも何か勝手に愛着持ってるし。「それ、自分だし」なんて絶対言えないし。

その催促っぷりといったら、自分が物凄く売れっ子作家になった感覚を疑似体験できるほどの圧力です。自宅で24時間敏腕(?)鬼編集者に追われる孫。

ウワサ話は便利ですが、ほどよく使いこなすこともポイント。わたしもまだまだ修行中です……!

〈つぎを読む〉プライド高い認知症のばーちゃんにダメ人間作戦 これって介護の裏技?

<span>吉田勝明先生</span>
吉田勝明先生
横浜相原病院院長。日本老年精神医学会専門医・精神科専門医。「今を楽しく」をモットーに、認知症の患者と全力で向き合う。著書に『「こころ」の名医が教える 認知症は接し方で 100%変わる!』(IDP出版)など。

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