認知症の家族が介護の限界を感じる前に 専門家が助言する相談の場
構成/熊谷わこ
Q. 認知症と診断された夫(60歳)を、私一人で介護しています。認知症の家族の会があると聞きました。入会した方がいいのでしょうか(58歳・女性)。
A. 認知症の方を介護しているご家族は孤独で、さまざまな悩みを抱えることが少なくありません。そのため家族同士が支え合い、交流を深めようと、全国各地で家族会が立ち上がっています。若年性認知症、レビー小体型認知症や前頭側頭型認知症など、病気別に特化した会もあります。
家族の会は、介護を担う家族の救いになることが少なくありません。その理由は、まず家族会を通して、認知症の方が利用できる制度や、医療、介護などの情報が得られること。そして同じ経験をした家族同士が気持ちを共有し、理解し合えること。
とくに若年性認知症は患者数が少ないですし、またレビー小体型認知症や前頭側頭型認知症などは認知症の多くを占めるアルツハイマー型認知症とは症状も対応方法も異なるため、家族は戸惑ってしまうことが多々あります。そのような時に家族会でつらい気持ちを吐露したり、経験者から有益なアドバイスを受けることができれば、問題の解決につながります。
以前、若年性認知症と診断された夫を介護する女性が「夫がデイサービスに行ってくれない。あなたは認知症なんだからと言えばわかってくれるんでしょうか?」と相談に来たことがあります。夫に認知症だと自覚させてデイサービスに行かせるなんて、そもそも無理ですよね。しかし「それは意味がないですよ」という正論を伝えたところで、家族の救いにはなりません。相談に来られた方もそんな正論を求めていないんです。
でも「以前同じ思いをなさっていた方がいらっしゃいます。お話を聞いてみたいなら連絡を取ってみましょうか」とつなぐことはできます。家族の悩みにこたえられるのは家族だけという部分もあるんですね。
悩みにぶつかったときに利用して、「自分だけではない」と気が楽になることもありますし、社会保障に関しても家族会で情報を共有している場合が多く、どの病院がいいかとか親身になってくれる医師は誰とか、我々が持っていないような情報を持っていることも多いのです。
インターネットで探すとたくさん家族の会が出てきますが、トラブルを抱えているような会も含まれているので、地域包括支援センターや、若年性認知症であれば若年性認知症総合支援センターで情報収集をしてみましょう。地域の情報が得られるように地域密着型、病気別など、さまざまな視点で自分に合った会を探してみてください。
〈つぎの質問を読む〉認知症カフェはどこも同じ?