認知症になった私たちから発信していく

僕たちはなんでもできる 認知症を前向きにとらえて~認知症当事者のしゃべり場3

認知症フレンドリーイベントでのトークセッション

認知症になっても誰もが安心して暮らせる社会を目指して、「認知症フレンドリーイベント」が922日、東京コンベンションセンター(東京都中央区)で開かれました。

トークセッションでは、福田人志さん、辻井博さん、春原治子さんの当事者3人がこれまでの体験や日々の暮らしについて、1時間じっくり語り合いました。コーディネーターは認知症介護研究・研修東京センター研究部部長の永田久美子さんが務めました。3回に分けてお伝えする最終回です。

永田久美子さん(以下、永):治子さんや、辻井さんや、福田さんみたいに、自然に暮らしてた延長の中で、こういう病気になったけど、今もこうやって自分なりにやってるんだというのを、自然に物語れるってすごく大事なことかなって。今日も会場に来られた方の中で、福田さんの「メディアに期待すること」という話を聞いたことで、ちょっと前に進む勇気が出た方がいてくださいましたよね。

イベントで話す福田人志さん
イベントで話す福田人志さん

福田人志さん(以下、福):午前中お話をさせてもらった後、お声を掛けていただきました。認知症の疑いがあって、家族は病院に連れていきたいって思われてるんですけど、本人がやっぱり拒んでるっていうことだったんです。診断がくだってしまえば、周りの目線が変わるんじゃないかなっていう、すごい心配をされてるんですね。だから病院に行きたくない。

「明日、病院行くよ」と声をかけられた

その方が「自分は拒んでたんだけど行ってみようかな。明日行くよ」と声をかけて帰られました。認知症のイメージが変わった方、たくさんおられると思うんですけど、今日僕らここで3人、当事者としてお話ししてるんですけど、少し「認知症になっても大丈夫」と、前向きな考えになっていただければ、特にいいなと思いましたね。

:病院が目的じゃなくて、これからのせっかくの時間を、もっと素敵にいい時間にしよう、病院はそのきっかけです。治子さんもこれからの暮らしの中での希望とか、こんなことを願ってるみたいなことをお話しいただけますか。

イベントで話す春原治子さん
イベントで話す春原治子さん

春原治子さん(以下、春):私は今やってることを続けていきたいなって。大正琴をもう10年もやってるんですけど、発表会に出たりコーラスをやったり、料理教室に参加して一緒にお料理したり、しています。介護予防体操を、うちの近くで月2回やってるんです。手話ダンスをみなさんに教えたりしてます。それから歌が大好きなので、月1回カラオケ教室にも通って歌を歌ったりしてます。いろいろ自分が今したいことを、できるだけ続けて、あと10年先くらいまではなんとかやっていきたいなという希望を持って暮らしております。

:長年自分がやってきたこととか、今までの仲間と一緒に過ごすとか、そういうことを大事にしてくれる地域や社会だといいですよね。辻井さん、いかがですか、これからの希望。

まだ働ける 元の会社に戻りたい

辻井博さん(以下、辻):これからの希望ですけど、やっぱり僕は仕事を進めていきたいというのが、今の気持ちの中でメインです。5253なので、これから10年位はまだ働けるかと思ってますので、なんとか元の会社に戻りたいというところが、今の希望です。

イベントで話す永田久美子さん
イベントで話す永田久美子さん

:60になっても、70になっても、働きたい人が働きやすい町になれるかどうかが、けっこう大事じゃないでしょうかね。自分にも町にも合った新しい働き方ってきっとあると思うから、ぜひ、これから一緒に。福田さんはこれからの望み、どうでしょうか。

:僕の場合は、自分の認知症になってからの人生をちょっと変えてくれたものがあります。「認知症 壱行の歌」といって、病気になって喜怒哀楽の言葉をノートにたくさんしたためていたのを、清書してもらったんですね。それを展示したことがきっかけで、絵を付け出し始めました。みなさんに少しでも励みになっていただくならと思って、展示したり、ちょっとお分けしたりしてます。楽しみながら毎日時間があればスケッチしたり、色んなものを見て言葉を考えたり、自分なりで自分の楽しみをもってさせてもらってます。なんでも楽しみを持つことが一番大事ってことですかね。ここにいる僕らも、自分で楽しみを見つけて続けていくっていうことが大事と思うので。

認知症当事者集いの場
イベント会場には、当事者が気軽に集まって情報交換できるように「集いの場」スペースを設けました

:やっぱり医療や支援も大事だけど、自分の楽しみ、自分を取り戻すことが凄く大事なんだろうなっていうか。

「認知症は何もできない」というイメージを、過去のものに

:やってるときは僕ら、当たり前なんですけど認知症なんて考えてないです。今日の夜のこと、今度休みがあったらどうしようとか、そういう普通のことをちゃんと考えてやっていて、何もできないっていう考え方は過去のことにしていただいて、僕らはなんでもできるっていうイメージを持っていただければ。

:認知症になったら忘れたりできなくなったところばかり見られがちだけど、治子さんみたいにいっぱい楽しみを持ちながらの時間も過ごせる、もっと堂々と暮らせるんだっていうところを、もっとみんなに知ってもらいたいですよね。あと一言ずつ、ぜひ、みなさんにこれからも自分たちなりに前向きに暮らしていく、そんな一言メッセージ、どうでしょうか。

イベントで話す辻井博さん
イベントで話す辻井博さん

:「認知症だからこうなんだよね」っていう考え方はちょっと外して、認知症だからこれはできる、できないっていうことを少し外した状態で接してもらえばいいと思います。でもこれは無理だっていうのは、それは含んだ上でお付き合いをしていただければと思います。

:私も思うんですけど、自分は認知症だっていうことを、早く地域の方に知ってもらって、周りの方々に困ったことをお願いしたり、助けていただいたりすることを、まず私は自分から「エプロンの会」のみなさんにお話したいし、また私がそれをやることによって、みなさんも気軽にいえるんじゃないかなと思います。

認知症になっても、自分から発信していく 地域の絆を深めていく

みんなが安心して暮らせるように、自分が認知症になっても、自分からそれを発信していくことが大事で、できることをみんなで助け合っていくという絆づくりを、これからもっともっと深めてつくっていかなければいけないかなと思っているところです。まず自分が石を投げていきたいなと思っております。

:今日はありがとうございました。聞いていただいて、僕ら当事者側の気持ちが少しでも、みなさんの胸に響いてくださいましたなら、本当に今日は頑張ったかいがあると思います。どうか僕らの今の思いを受け止めていただいて、みなさんのこれからの日々に活用していただければと思います。

認知症フレンドリーイベントでのトークセッション
認知症フレンドリーイベントでのトークセッション

:ありがとうございました。必ずみなさんの住んでる町のすぐそばにも、みなさんの地域の福田さん、辻井さん、治子さんのような方たちがきっとおられる。認知症と共に日々を大事に生きてる方たち、必ず周りにいらっしゃると思います。今日のように、一人ひとりの声に耳を澄まし、一足先に歩んでおられる人の体験からちょっとヒントをもらいながら一緒に前を向いて生きる、そんな地域をこれからみんなで丁寧につくっていけたらいいなって願ってます。もう一度3人に拍手をしたいと思います。ありがとうございます。

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