LINE駆使して仲間も頼る 忘れても大丈夫~認知症当事者のしゃべり場2
構成/岡見理沙 撮影/上溝恭香
認知症になっても誰もが安心して暮らせる社会を目指して、「認知症フレンドリーイベント」が9月22日、東京コンベンションセンター(東京都中央区)で開かれました。
「認知症当事者のしゃべり場~認知症のひとにやさしい街」では、福田人志さん、辻井博さん、春原治子さんの当事者3人がこれまでの体験や日々の暮らしについて、1時間じっくり語り合いました。コーディネーターは認知症介護研究・研修東京センター研究部部長の永田久美子さんが務めました。3回に分けてお伝えする2回目です。
永田久美子さん(以下、永):今までやってきたことをできるだけ続けていけるように、(春原)治子さんは、カレンダーに書き、大きいノートに書き、さらに普段の小さいノートに書くみたいな、工夫を重ねてらっしゃるということですね。みなさんの工夫も聞いてみたいと思います。福田さんはふだん、工夫していることはありますか?
福田人志さん(以下、福):治子さんと同じことが一つあります。僕の場合は、やることを二つのノートに作ってもらって、自分が持つノートと、もう一つ、後見人の中倉美智子に預かってもらっています。僕、LINEもちょっと覚えまして、音で知らせてくれて「ああ、そうか」と。迷子になりそうなときも、色んな意味でLINEを活用して。
ちょっとバスの話をしてもいいでしょうか。時刻表が読めないんですね。丸の時計のやつは、針で何時でということが分かるけど、デジタル式になってると、時間の感覚がダメなんですね。一回、僕はデジタルを丸時計に掘り起こさないと、バスの時刻表とか色んなものが分からずに、最初の頃は何回もバスに乗り間違いました。いまだにどうしてもバス停の時間を見るときに分からなくなってしまうことがあります。
時計はデジタルよりもアナログが見やすい バス停は
福:ついこの間までは、うちの佐世保のバスはあまり表示がデジタル化してなかったんですが、最近バスも進化してて、五つ先のバス停まで出るようになったんですよ。
永:今、どのあたりを走ってるかが分かる。あと自分が降りたいところが何個目かっていう、バス停の表示が早め早めに出てくれると安心できる。
福:準備ができるというのと、今どこにいるっていうのが確認できるんですね。あと3個過ぎれば自分が降りなきゃいけないバス停っていうのが分かって、随分助かりました。だからバスに乗るのが不安だったけど、今は表示が前もってしてくれて、自分が降りるバス停がだんだん迫ってくるというのが分かるので、それからは大分楽になりました。
永:バスだけじゃなくて、地下鉄とかJRもそうだけど、どのあたりを今走ってて、どの順番で駅が止まるのかがもうちょっと分かりやすければ、どれだけ安心できるか。一個一個の工夫があるかないかで、外に出やすさが全然違いますよね。辻井さん、うなずいてらっしゃるけど、思い当たることありますか。
辻井博さん(以下、辻):今、話聞いてて、僕も本当にそれに近いものがあったんですけど、問題は買い物なんです。今日はこれとこれとこれ、三つは分かるんですね。四つ、五つになってくるとだんだん分からなくなってくるんですよ。三つ目はようやく頭の中で分かるんですけども、四つ以降になると、「あれ、何買うんだっけかな?」と思っちゃうんですね。その度に自分でメモしていって、それを見ながら「今日はこれ買わなきゃダメなんだ」というのを確認しながらやってます。
永:忘れてしまいやすいなら、忘れるのを補うものがもっと色々使いやすいものが増えるといいですよね。メモもスーパーでゆっくり見ながら買い物しているのも、みんながいいよって、配慮してくれるようなゆっくりさが当たり前になってくるといいですよね。
買い物は、紙にメモしてクリア
辻:今日実は僕、午前中に買い物に行ったんです。洗剤と、あと二つぐらい。三つあったんですね。なかなか記憶の中に残らないんです。だからもうしょうがないんで、紙に書いてこれを買ってくるというのをずっとメモして、クリアしました。それが今後やっていくのに重要なのかなと思いました。
永:本人が開拓してる工夫って、他の人にもすごく役立つものがあるんじゃないかなと思います。自分なりの工夫が大事ですよね。それを誰か一緒に考えてくれる人がいると、楽な面もないですかね。自分だけで悩んだりしないで、「こんなことやれると、いいんじゃない?」とか、一緒にそういうことを考えてくれるみたいな方はおられますか。
春原治子さん(以下、春):この先もっと分からなくなったり、忘れたりするんじゃないかなってことは、すごく心配しております。そうしたときに、先ほどの「エプロンの会」の仲間の人がいますので、今から「もし私が、物忘れが激しくなって、認知症になったりしたら、助けてね」ということを早めに伝えて、今から協力体制をしておかなければ困るかなということは、ヒシヒシと感じております。
「助けて」 言い合える地域づくりを自分から
そういった地域でのつながり、助け合いということを、もっともっと私が認知症だということを、いずれ近いうちに会員のみなさんに伝えて、「助けてください」ということを自分からいって、お願いしていく。そういう組織づくりを、これから私も考えているところです。お互いに助け合えるグループにしていきたいなと思っております。
永:拍手をしたいような気持ちでいっぱいです。自分から「助けて」とか、「この先、何かあったらよろしくね」としっかりと言っておくことこそが大事で。そういう治子さんを、自然に周りもいいよいいよって。みんなが治子さんを一緒に見ながら、一緒に暮らしていく中で、仲間や絆が本当の意味で育ってる。認知症になるかもしれないけど、今まで通りやっていこう、そんなつながりがより深まる、それを育ててるのが治子さんなんじゃないかなって、お聞きしました。辻井さん、近所の人に「頼んだよ」といえる人が増えるといいですよね。
辻:いいですね。それは僕も本当感じますね。