認知症とともにあるウェブメディア

お悩み相談室

「認知症を隠して働いているがミスも…」 お悩みに専門家が答えます

Q. 2年前に認知症だとわかりましたが、会社(一部上場企業)には隠して仕事を続けています。しかし最近、周りからミスを指摘されるようになりました。あと数年で定年退職なのですが、思い切って告白するべきでしょうか。(59歳男性・会社役員)

 

A. 認知症だということを職場でオープンにするか否かは、ケースバイケースです。

オープンにしていないけれど、周囲が何となく察してできない部分をフォローし、うまくいっているケースもあります。この場合、オープンにすることで職場も何らかの結論を出さざるを得なくなる可能性もあり、必ずしもオープンにすることが良いとは言えません。

相談者の場合は周囲からミスを指摘されるなどすでに業務に支障が出ている状態なので、隠しておくのは難しいと思います。「定年まであと数年、言わないまま乗り切りたい」という気持ちも理解できますが、隠しておくことで逆に不利益が生じる可能性もあるからです。病気によるやむを得ないミスを人格の問題にされ、ご本人やご家族が深く傷ついた事例も見てきました。企業側も限られた予算の中で戦力として社員を雇っている以上、病気とは言え業務に支障が出るような状況は避けなければなりません。そのためには、会社側に現在の病状やこれから予想される病状を伝えて、対応を話し合う必要があるでしょう。

 

職場に信頼できる上司がいるなら、まずその人に相談してみてください。信頼できる上司というのは、ふだんから相談者に対して不利益な扱いをしない人ですね。そんな上司なら、一緒に最もいい方法を考えてくれるはずです。

残念ながらそんないい上司はいないという場合は、直属の上司や所属長、人事担当などと話し合いをすることになりますが、産業医や認知症専門医など医療者、若年性認知症支援コーディネーター、社会保険労務士といった認知症に詳しい専門家に同席してもらうといいでしょう。

部署が多く人員にも余裕がある大企業なら、配置換えや休職など何らかの対応を期待できますが、企業の規模や仕事内容によっては退職を余儀なくされるというのが現実です。しかし退職になるにしても「その先の生活」を見据えてできる限り社会保障の制度を活用するなど、有利な条件で退職できるように交渉することが大事です。交渉したことで、障害年金の受給のめどが立つまで退職を待ち、それまで傷病手当を受け取れるよう勧めてくれた会社もありました。交渉を有利に進めるためにも、専門家の力を借りましょう。

〈つぎの質問を読む〉30代です。認知症を疑っています

あわせて読みたい

この記事をシェアする

この連載について

認知症とともにあるウェブメディア