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認知症フレンドリー事業

見て知って、共に暮らす地域を考える 福岡県社会福祉協議会

路線バスのような公共交通機関を利用する場合に起こり得る困り事を再現したVR動画
路線バスのような公共交通機関を利用する場合に起こり得る困り事を再現したVR動画

朝日新聞社は認知症の人への理解を含め、ともに暮らす社会を考える「認知症フレンドリー事業」を展開しています。自治体や企業、学校などから依頼を受け主催者のみなさんと啓発活動に取り組んでいます。その取り組みの一端をご紹介します。

福岡県民に介護を身近なこととして考えてもらいたいと、福岡県社会福祉協議会は「認知症フレンドリー講座」を2020年度から採用。年4回の定期開催をしています。希望する県民は無料で参加できます。

2023年8月下旬、同県春日市の会場で講座が開かれ、約10人が参加しました。講座は約2時間。認知症の本人が率直な思いを語るインタビューや専門医の解説動画を視聴したあと、認知症の人の視界を再現した「認知症VR」を視聴しました。
内容は、階段の段差が下りづらくなる状況を再現した「階段を下りる」に加え、記憶障害や判断力の低下によって路線バスの乗車時に戸惑うポイントを再現した「バスの乗車」、③目の前に見えているものを他のものに見間違える「錯視」の3部構成。参加者は視聴用のVRヘッドセットを着けて、認知症の人の視界を体験しました。

5年前から高齢者向け介護予防教室の指導員を務める牟田ひろみさん(60)は、「認知症VRを見たかった」と初参加。「『錯視』や『階段』ではゆらゆらする感じがして、認知症の人の視点を体感できました。人それぞれだとわかってはいても驚きでした。『バスの乗車』では、小銭が出せない状況が再現されていましたが、『思わず千円札を出す』という話をよく聞きます。体験することで『そうなんだ』と納得できるところがありました」と話します。
事前に知識があれば適切に対応できるとして、「ほかの職員にもぜひ見てほしい」と感想を語りました。

 本人の気持ちを察する 「見える化」した教材

担当の福祉・介護研修センター・加藤伸代さんは開催の狙いについてこう話します。
VR体験はもちろん、それに関連付けた講師の解説や、認知症のご本人の思いが聞けて、高齢者の課題を知る第一歩になると思っています。参加者は介護経験がある人も多く、新たな知識を得ることで気持ちがリセットするようです。『今日は家族と夕飯を笑顔で食べられそう』と感想をおっしゃる人もいて手応えを感じています」

VR動画の監修などを担った筑波大学名誉教授の朝田隆医師は「これは認知症の人の気持ちを『見える化』した高齢社会のわかりやすい教材といえるでしょう。本人の気持ちを察することができれば、人は自然に手を差しのべるし、声がけができる。個人の病気の背景には多様性があるものの、その一端を知ることにつながるのではないか」と話しています。

福岡県社会福祉協議会は23年度からは「認知症フレンドリー講座」に加えて、「認知症フレンドリー市民上映会」を組み合わせてさらに多角的な視点から実施しています。

■開催日 2020年~2023年
■イベント名 県民向け介護講座
■実施内容 認知症フレンドリー講座

※「認知症フレンドリー事業」の詳細はこちら

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