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仲間という存在@きのこ〜BLGの活動報告

仲間との集いの場所

認知症の人と「ともに生きる拠点づくり」を進める100BLGは、同じ思いを持つ全国各地の事業所とともに「学び合いのプラットフォーム」となるネットワークをつくっています。各事業所は、それぞれの土地柄や文化に合わせたかたちで運営されています。今回は、岡山県井原市にあるBLGきのこ(在宅複合施設「西部いこいの里」)からの報告です。

皆さん、こんにちは。BLGきのこの川崎です。
季節はすっかり春。日中はぽかぽか陽気で、「寒い寒い」と厚着をしていた人も薄着になり、過ごしやすい時期となりました。
「天気がいいから外に出たい」という、メンバーさんの声も徐々に増えてきた今日この頃です。

これまでメンバーさんとの時間を過ごす中で、いろいろな話をしてきました。
振り返ると、地域貢献がテーマの真面目な話から、学生時代の昼休みか!!というようなたわいもない話まで、幅広く語り合ってきたような気がします。
その中でも今日は一つ、心に残ったメンバーさん同士の語り合いについてご紹介できればと思います。

実は最近、メンバーさん同士の本音のやりとりが垣間見える場面に遭遇したことがありました。それは昼食後の出来事で、私がメンバーさんらの集いの場から一時離れ、戻ってきたタイミングでした。

突然、Aさんが「なぁ、わしは認知症のレッテルを貼られてるんやけど、なんかおかしなこと言いよるかな?」と、Bさんに質問しました。
「おかしいことねーよ、わしも認知症じゃ」と、Bさんは答えていました。
2人がBLGきのこで出会ったのがちょうど1年前。これまでにも「認知症」という言葉が活動の中で出てくることはあっても、面と向かって語り合うような場を私が目撃したのは、その日が初めてでした。
「いつから認知症になった?」「アルツハイマー?」「どこで言われた?」「これからどうなる?」など、これまでの思いのたけをAさんがBさんにぶつけていきながら話は進んでいきます。
Bさんはその思いを受け止めながら一言、「なったもんはしょうがねー、楽しく生きんといけん」と少し笑顔で返していました。
Aさんは思わず苦笑い。
「そういえばここに来だしてから認知症が進んでないような気がする。くよくよしても仕方ないか!!」
そう言って話しは次の話題に変わっていきました。

活動を終え一息つくメンバーさん
活動を終え一息つくメンバーさん

文字だけをみると、当たり前のやりとりに感じるかもしれません。
しかし、この当たり前ができるようになるまでの1年間には、多くの活動や場を共有し、思いを共有し、積み重ねてきた濃密な時間がありました。
だからこそ、「仲間」という存在になれたのだと思います。
認知症というレッテルを感じながらも、Bさんに思いを伝えたAさん。
その思いを聴き、自身の気持ちを率直に伝えたBさん。
当たり前ができるまでの道のりを知っている私にとっては、とても感慨深い気持ちになったことを今でも覚えています。

メンバーさん同士でしか分かり合えないことがあるのなら、私たちは、そうした分かち合いができるように寄り添っていくことが大切であると感じ、私自身の役割についてもう一度深く考えることができました。
AさんBさんありがとう。そしてこれからもよろしくお願いします。
春は出会いの季節。新しく始まるこの一年にも、素敵な出会いがありますように。

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