隣で一緒に@丹南~BLGの活動報告
認知症の人と「ともに生きる拠点づくり」を進める100BLGは、同じ思いを持つ全国各地の事業所とともに「学び合いのプラットフォーム」となるネットワークをつくっています。各事業所は、それぞれの土地柄や文化に合わせたかたちで運営されています。今回は、福井県越前市にあるBLG丹南(福井県民生協 丹南きらめき)からの報告です。
こんにちは。BLG丹南の上田紀子です。
私は、2020年4月のBLG丹南の立ち上げからメンバーさんと一緒に参加をしています。
そんな私には、好きな時間があります。
それは、メンバーさんと昼食を食べ終わり、茶碗洗いを一緒にする時間です。
午前中の活動を終えて昼食を食べ終わると、
すぐに茶碗をシンクに持ってきてそのままくつろがれる方、
ご自分の茶碗のみを持ってこられ自分の分だけを洗う方、
テーブルに茶碗をおいたまま隣の方としばしお話をする方、
そのままうとうとされる方、
自分の茶碗を片付けるのと一緒に隣に座っていた方の茶碗も、シンクに持っていく方など、
メンバーさんの食後の過ごし方はさまざまです。
BLGでは、茶碗を誰が洗うべきだとか、いつ洗うべきだとか、特にルールはありません。
絶対洗う役割を担う〝お母さん〟がいるわけでもないのです。
気づくとシンクに山積みになった茶碗があったりしますが、メンバーさんが自分の茶碗をシンクに持って行かれたついでに、という感じで他のメンバーさんの茶碗も洗ってくれます。
気づくと順次茶碗をもってくるメンバーさんが自然と横に並んで一緒に茶碗洗いをしています。
私も大きな意味ではBLGのメンバーの1人なので一緒に洗い出すと、メンバーさんから
「手伝うよ」
「やってまおっさ」
「1人より2人のほうが」
と、言ってくれます。
言葉はなくても、すーっと隣に来られてすすぎをしてくれるメンバーさんもいます。
同じシンクに向かい肩を並べて立ち、茶碗を洗い、終わると隣のメンバーさんに話しかけながら茶碗を手渡すという茶碗リレーのような感じになります。
そうすると、いつのまにか茶碗洗いが終わっています。
洗う茶碗がもうなくなっても、話し込んでその場で立ち話を続けられるメンバーさんもいます。
普段言葉数が少なめな男性メンバーさんが洗いながら
「家でも洗うんや。かあちゃんに頼まれるしな」
と、少し照れたような表情で話し始め、そこから奥さんに感謝している気持ちのお話をされたこともありました。
反対に、メンバーさんが私の子どもについて聞いてこられた時、
「最近、子どもがあんまり話してくれなくってちょっとさみしかったりするんですよー」
と日常の中のちょっとしたことを、茶碗を洗いながら話たこともありました。
いつから聞いていたのか、茶碗洗いをされていなかったメンバーさんも来られて
「男はあんまり、かまいすぎんほうがいいんやー」
と、相談にのってくれたこともありました。
気づくと、これまであまり交流がなかったメンバーさん同士が茶碗洗いしながら話をしていたりします。
向かい合って改まって「お話聞かせてください」よりも、なんとなく隣で同じ方を向いて一緒に何かをしながら、たまにチラッと視線をあわせつつ・・・。
そういった“場”は不思議と心地よい感じになるように思います。
また、いつもよりほんの少し話したい気分になったり、聞いてもらいたくなったり、その方のことを知りたくなったりするので、不思議です。
聞いたり、知ったりすることは、何かアクションしなければと思いがちですが、
気づくと、日常の暮らしの中でメンバーさんと過ごす中で、いつものことを一緒に同じ方向をむいて、何かをしている時のほうが、多くを得られているように思います。
メンバーさん同士も同じことが言えると思います。
そういった時間の積み重ねによって、メンバーさんがお互いの内面や、メンバーさん自身の人間性を知ることができる環境や状況が自然と生まれるからかもしれません。
「ねー教えて」「ちょっと、見てみてー」「どれどれ、かしてみて」
と、頼りあうメンバーさんの会話を聞くとうれしくなります。
頼ったり、頼られたりという関係性がここではたくさんあります。
その関係性を築くうえで、“隣で一緒に”をこれからも大切にしていきたいです。