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そこに何があるのか@横須賀~BLGの活動報告

昔、趣味で庭園活動していたスタッフを中心にメンバーさんとともに庭作業
昔、趣味で庭園活動していたスタッフを中心にメンバーさんとともに庭作業

認知症の人と「ともに生きる拠点づくり」を進める100BLGは、同じ思いを持つ全国各地の事業所とともに「学び合いのプラットフォーム」となるネットワークをつくっています。各事業所は、それぞれの土地柄や文化に合わせたかたちで運営されています。今回は、神奈川県横須賀市にあるBLG横須賀(認知症対応型デイサービス「スマイルデイサービス長坂」)からの報告です。

BLG横須賀の下田です。
2006年からデイサービスをしていますが、BLGとして活動を始めたのは今年の10月です。
あっという間に1カ月が過ぎました。ただ、まだまだ、活動は手探りです。
こうしたことから、今回は、まず「BLGに取り組む前のこと」からお伝えしたいと思います。

我々(私自身)がBLGについて初めて知ったのは、2018年7月に出た厚生労働省の事務連絡の文書でした。そこには「はたらくデイ」としてBLGの活動が紹介されていました。“はたらくデイって良いよな”と感じたことを覚えています。けれど、その時は、それだけでした。

繰り返し、繰り返し行った研修風景
繰り返し、繰り返し行った研修風景

動き出したのは、ちょうど1年前の今ごろでした。
思うようなケアができず、お客様数もなかなか増えず。悩んでいた我々の事業所に対して、社内から「BLGの活動に取り組まないか?」と打診がありました。
「あのBLGに取り組むの?」「今、デイサービスに参加してくださっている人はどうなるの?」などなど疑問がたくさん浮かび上がりました。
100BLGが実施した立ち上げ研修では、まずは“BLGとは何だろう?”というところから始まりました。“アッ、素晴らしい取り組みだ”とは思うものの、どこか他人事のような感じで、初回はまだまだ疑問を持ちながらの参加でした。2回、3回と回を重ねるごとにだんだんと、働くということは手段であって社会とつながることがお客様(メンバーさん)の生きがいになるのだとBLGについて理解していきました。

いざ、BLGとして活動を始めると周囲の方々からは「良い取り組み」「協力する」と前向きな意見がたくさんきましたが、「はたらくデイ」という言葉ばかりが先行してしまい、地域の活動になかなか入るのが困難であったり、スピード感がないことに社内からもプレッシャーがあったりし、押しつぶされそうになりました。

最初は、行政やケアマネジャーとの連携もなかなかうまくいきませんでした。そこで、あるケアマネジャーに誠心誠意「ご本人の気持ちがケアプランになるのではないでしょうか?」とお伝えしたところ、その言葉に共感を頂きました。そこから少しずつですが、理解して頂けるケアマネジャーが増えてきました。

「味付けはこれで良いかね?」とやり取りするスタッフとメンバーさん
「味付けはこれで良いかね?」とやり取りするスタッフとメンバーさん

BLGでは、デイサービスのお客様のことを「メンバーさん」と呼びます。
けれど、このメンバーさんという呼び方に変えることに一苦労でした。
これまで、我々の会社では「お客様」と呼んできたのです。
ただ呼称を変える、ということなのですが、それがなかなかできませんでした。
管理者が積極的にスタッフに対して「メンバーさん」と呼ぶことの意義を伝えていきました。

スタッフとの間でも一悶着(ひともんちゃく)ありました。
はっきり言って、これまでもスタッフとの間でうまく連携が出来ていないところがありました。
そうしたところに、さらに新しいことに取り組むことになったのですから大変です。
不安からなのか、することと、やらないことについてスタッフの間で意見が割れ、亀裂が走り、現場が最悪の雰囲気になった日もありました。
そんな雰囲気をくぐり抜け、メンバーさんがしたいことがスタッフもしたいことだったり、スタッフの意外な得意なことなどがわかったりと、新しい発見もありました。

そういったことを、時間はかなりかかりましたが乗り越えて、今があります。
幸い BLGの取り組みに対して多くの問い合わせをいただき、たくさんのメンバーさんが参加してくださることになりました。
電話をしていると、後ろからメンバーさんのにぎやかな声が聞こえてきて、電話の会話が聴きとれないこともしばしばあります。
それでも、メンバーさんには“生きている”ことを表すたくさんの声を発して頂きたいと思っています。そこにこそ、「スマイル」があると思うからです。

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