認知症とともにあるウェブメディア

みんなが心開いて「素」になれる場所 

秋と言えば・・・?@きのこ~BLGの活動報告

収穫を楽しむメンバーさん
収穫を楽しむメンバーさん

認知症の人と「ともに生きる拠点づくり」を進める100BLGは、同じ思いを持つ全国各地の事業所とともに「学び合いのプラットフォーム」となるネットワークをつくっています。各事業所は、それぞれの土地柄や文化に合わせたかたちで運営されています。今回は、岡山県井原市にあるBLGきのこ(在宅複合施設「西部いこいの里」)からの報告です。

皆さん、こんにちは。BLGきのこの川崎です。
暑さもすっかりやわらぎ、季節はもう秋本番となりました。
「秋と言えば?」と、メンバーさんに尋ねたところ、
「やっぱり食欲の秋じゃろ~」
「わしは食べるの専門じゃ」
「季節なんか気にしたことがねー」
「そんな飽き飽き(あきあき)すること言いなさんな」
と、いつものように自由な会話が飛び交いました。

ちょうどその頃、施設の厨房(ちゅうぼう)調理員さんからある仕事のお願いが飛び込んできました。
まさに今の時期にぴったりな、さつまいも掘りの依頼でした。
さっそくメンバーさんに報告をすると、
全員が顔を上げ、「それはいい!ぜひやろう!!」と即答。

「子どもの頃によく手伝わされて掘ったことがある」
「したことないやつはおらんじゃろ」
「わしはシティーボーイじゃからしたことがない」
など、しばらく芋トークで盛り上がる空間。
それは、今まで提案してきた活動の中で、メンバーさん全員が一番いい反応であり、一番いい表情であり、一番やってみたいことのように感じられました。

現地に到着後、説明を聞いてさっそく仕事にとりかかるメンバーさんたち。
「わしは、鎌でツルを刈りますわ」
「じゃあ自分たちは芋を掘ろう」
「スコップで掘りすぎると芋に傷がつくから慎重にせんといけん」
「あー、楽しいのー」
など、声を掛け合いながら、おのおのが汗をにじませ収穫の楽しみを味わいました。

幼少期にしたさつまいも掘りを思い出しているかのような姿。
当時は手袋などしていなかったのでしょうか?
手袋をつけて作業していたはずの5人中3人が、
いつの間にか素手になり、手は泥だらけになっていました。
このため、スタッフは芋掘りよりもメンバーさんが外し、土に埋もれた手袋を掘ることとツルを刈ることに必死でした。

収穫した芋を乾燥中
収穫した芋を乾燥中

収穫分はいただけるとのことで、現在は乾燥させて甘みが増すのを、
今か今かと待っている状態です。
「ポテトチップスや焼き芋、芋の天ぷらで食べてみたい」との声があがりました。
今後、女性メンバーさんに協力をお願いし、調理をし、
施設内の他事業所の方にもお裾分けしていく予定です。

これまで「仕事」という言葉でメンバーさんになにかを伝えた時、
責任感や使命感が芽生え、「よし、頑張ろう!」と意気込む一方で、
「きちんとしなければいけない」「自分にできるだろうか」という緊張感や不安感が生まれる場面を見て感じることがありました。

今回のさつまいも掘りのように、協力し合いながら「あー、楽しい」と感じ、
同時に達成感や満足感を得られるような体験を通して、
地域の中で自分にもまだ出来ることはあるのだというやりがいや喜びを、
メンバーさんと見いだしていきたいです。

あわせて読みたい

この記事をシェアする

この連載について

認知症とともにあるウェブメディア