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夜道に見知らぬ高齢者、かみ合わぬ会話 それでも高校生は寄り添った

感謝状を受け取った伊藤陽翔さん(左)と群馬県警大泉署の友野久志署長=2022年3月8日、群馬県警大泉署、中村瞬撮影

 夜道で見知らぬ男性から警察署への道を聞かれ、高校生は立ち止まった。

認知症の症状 中核症状と周辺症状(BPSD)

 3月3日、午後8時すぎのことだった。群馬県太田市の高校2年生・伊藤陽翔(はると)さん(17)は部活動が休止中だったため、市の運動公園で自主練習を終え、自転車で帰宅していた。

 運動がてら、普段は通らない邑楽(おうら)町内を走っていると、自転車を引いた70代の男性から声をかけられた。

 「ラーメン屋で自転車のライトをとられた。大泉警察署はどこか」。男性が尋ねると、伊藤さんは立ち止まり、スマートフォンで経路を調べて説明した。

 でも、男性は理解できていない様子。不安になり、自転車を押して署まで一緒に行くことにした。

 署までの数百メートルの間、男性に名前や住所などを尋ねたが、同じ質問でも違う答えが返ってきたり、答えに窮する様子を見せたりしていたという。

 ちょうどその頃、男性宅を訪れたケアマネジャーが、男性がいないことに気づき、署に行方不明者届を出したところだった。

 2人が署に到着した後、署員が「さっき届け出が出された男性ではないか」と気づき、同一人物だと確認された。男性は大泉町で一人暮らしだという。

 大泉署は8日夜、伊藤さんに感謝状を贈った。友野久志署長は「親切で思いやりのある行動。重大事案に発展しかねなかった」。伊藤さんは笑顔で言った。「困っている人がいたら助けたいという気持ちはある。たまたま通りかかったけど、無事で良かった」

(中村瞬)朝日新聞デジタル2022年03月09日掲載

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