夜道に見知らぬ高齢者、かみ合わぬ会話 それでも高校生は寄り添った
朝日新聞社
夜道で見知らぬ男性から警察署への道を聞かれ、高校生は立ち止まった。
3月3日、午後8時すぎのことだった。群馬県太田市の高校2年生・伊藤陽翔(はると)さん(17)は部活動が休止中だったため、市の運動公園で自主練習を終え、自転車で帰宅していた。
運動がてら、普段は通らない邑楽(おうら)町内を走っていると、自転車を引いた70代の男性から声をかけられた。
「ラーメン屋で自転車のライトをとられた。大泉警察署はどこか」。男性が尋ねると、伊藤さんは立ち止まり、スマートフォンで経路を調べて説明した。
でも、男性は理解できていない様子。不安になり、自転車を押して署まで一緒に行くことにした。
署までの数百メートルの間、男性に名前や住所などを尋ねたが、同じ質問でも違う答えが返ってきたり、答えに窮する様子を見せたりしていたという。
ちょうどその頃、男性宅を訪れたケアマネジャーが、男性がいないことに気づき、署に行方不明者届を出したところだった。
2人が署に到着した後、署員が「さっき届け出が出された男性ではないか」と気づき、同一人物だと確認された。男性は大泉町で一人暮らしだという。
大泉署は8日夜、伊藤さんに感謝状を贈った。友野久志署長は「親切で思いやりのある行動。重大事案に発展しかねなかった」。伊藤さんは笑顔で言った。「困っている人がいたら助けたいという気持ちはある。たまたま通りかかったけど、無事で良かった」
(中村瞬)朝日新聞デジタル2022年03月09日掲載