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旅人になって認知症の世界を歩き回ろう オンラインゲーム体験会リポート

認知症世界の歩き方Play!

認知症のある人が日々の暮らしの中で経験していることを知ることができると、大きな反響を呼んでいる書籍「認知症世界の歩き方」。この書籍をもとに、楽しみながら認知症について学ぶことができるオンラインゲーム型プログラム「認知症世界の歩き方Play!」ができました。初めての体験会が、なかまぁる編集部も協力し、12月2日に開催されました。参加者みんなで、認知症の世界を歩き回った様子をリポートします。

Zoomに集った参加者に、ファシリテーターの青木佑さん(画面右側の左上)がプログラムについて説明した
Zoomに集った参加者に、ファシリテーターの青木佑さん(画面右側の左上)がプログラムについて説明した

初の体験会には、行政や福祉の現場で認知症に関わっている方や家族介護者、メディア関係者など18人が集いました。松浦祐子・なかまぁる編集長も参加しました。参加者はオンラインミーティングツール「Zoom」でつながり、ファシリテーターの進行に導かれて、ゲームを進めていくことになります。

まず、このプログラムのねらいについて、ファシリテーターの青木佑さん(イシュープラスデザイン)が「認知症のある方が暮らしの中で体験する出来事、地域の資源や人とのつながり、お役立ちアイテムを知ることで、楽しみながら認知症について学ぶことを目的としていること」「医療者・介護者視点でなく、本人視点で認知症に関する知識を身につけてもらうことを目指していること」などを説明しました。参加者同士の対話の時間も設け、仲間と一緒に知識を深め、さまざまなバックグラウンドを持つ参加者同士がつながる機会ができるように工夫したとのことでした。

認知症世界を巡る「旅人」になりきって

3マス進みます。すごろくの要領で認知症世界を旅します
すごろくの要領で認知症世界を旅します

いよいよ、ゲームの開始です。

プレイヤーは、「アート好き」や「料理好き」など様々な特徴と、「アートの島を訪れたい」「料理教室を開きたい」といった目標をもった「旅人」になりきり、すごろくの要領で認知症世界を旅します。この設定には、認知症になっても、それまでと変わらずに持っている好きなことや取り組みたいことに加えて、認知症になったからこそ持つ夢や目標があるのだ、ということを参加者に知ってもらいたいという思いがあります。

旅の中では、さまざまなスポットを回りながら、認知症のある方が日常的に遭遇する出来事を体験します。認知機能や周囲の環境によってもたらされている困りごともあれば、新しい仲間との出会いや嬉しい出来事も。暮らしを豊かにしたり、時に困りごとを解決したりしてくれる地域の資源や人とのつながり、お役立ちアイテムを知りながら、「認知症とともに生きる」ことを本人視点で学んでいきます。

その過程で、旅人の目標達成に必要なカードを集めていくとともに、「しあわせメーター」が増えたり、減ったりもします。

アート好きな旅人・青木。旅人の目標 家族と憧れのアートの島を訪れること。旅人ごとに、旅の目標が設定されている。しあわせメーター8
旅人ごとに、旅の目標が設定されている

ルーレットを回して移動した先のスポットでは、様々な仕掛けが設けられています。

映像を通じて認知症世界を体験できる

スポットの一つ「七変化温泉」。認知症の人の中には、身体の感覚がその時々で変化することがあることを示しています
スポットの一つ「七変化温泉」。認知症の人の中には、身体の感覚がその時々で変化することがあることを示しています

旅をしながら、認知症世界のちょっと不思議なスポットをアニメーション映像で楽しむことができます。ストーリーは全部で13本。どのスポットに立ち寄ることができるか、お楽しみに。

各スポットで遭遇する困りごとやイベントは190種類以上

困りごとの一つ「ATMの操作方法がわからない」。「入金」「出金」「振り込み」などのボタンの中で、どれを押せばお金がおろせるかわからない。操作手順もわからず何度もやり直しになる。窓口に行っても「ATMの方が早い」と案内されて困る。この出来事の背景:抽象的言語・概念・記号の表す意味を想起できない。慣れ親しんだ手続き・習慣を、想起・実行できない。次へすすむ
困りごとの一つ「ATMの操作方法がわからない」。こうした困りごとをそのような工夫で乗り切るのでしょうか?

認知症のある方が実際の暮らしの中で経験する出来事に遭遇。大変なこともあれば、嬉しい出来事や新たな出会いもあります。

ボイスチャットでリアルタイムに対話ができる

旅の途中で、同じスポットに止まった仲間とはオンライン上で会話をしながら、手元にどんなアイテムが揃っているか、どんなスポットに止まったか、お互いの状況や感想を音声で共有できます。

スポットに止まると、画面に説明や指示が表示されます。アルキタイヒルズ。思い出のタイムトラベルから、抜け出せるか!
スポットに止まると、画面に説明や指示が表示されます

松浦祐子・なかまぁる編集長の感想

以前、イシュープラスデザインの事務所で行われた、対面で行うリアル形式の「認知症の世界の歩き方Play!」のデモンストレーションに参加したことがありました。この時には、自身がすごろくのコマのようになって動いていったのですが、それをオンラインゲームではどのように表現するのか? 表現できるのか?と興味をもって、今回の体験会に参加しました。

リアル形式から形を変えて新たに開発されたオンラインゲームでは、スポットに立ち止まる度に、認知症世界を表現したアニメーションや解説動画をじっくりと見ることができます。楽しみながらも、しっかりと認知症について学べる構成になっていると思いました。スポットには、大きく分けて、ちょっと不思議な認知症世界が体験できるところと、福祉施設や相談機関、認知症カフェなど役立つ情報が得られるところがあるのですが、圧倒的に「認知症世界」の方が新たな発見があり、好奇心をかき立てられる内容で、認知症への怖さも和らげることができるように感じました。

旅人の目標達成に必要なカードを集めは、完全に運頼み。私は、同じカードばかり集まり、必要な最後の1枚が得られず、目標が達成できませんでした。一喜一憂しながら、同じスポットに立ち寄った参加者に、うまくいかないことへのグチを聞いてもらうのも、楽しい時間となりました。

スポットの一つ「ミステリーバス」
スポットの一つ「ミステリーバス」

参加者の感想

  • 認知症世界を堪能することができました。独特な世界観と、知っておくべき情報がバランス良く組み合わさっていたと思います。
  • 楽しんで参加することができました。書籍よりもさらに、ゲームのほうが認知症のある方の困りごとをわかりやすく知ることができたかなと思います。自分がその世界を旅したら…と情景を想像することで、より理解が進みました。
  • プレイヤーごとに目指す目標やバックグラウンドの設定が異なっていたことが印象的だった。同じ認知症当事者でも、大切にしているもの、好きなもの、目指したいことは一人ひとり異なるという前提が、素敵だなと感じました。
  • 知ることで理解できるし、他の人にも伝えたい。知恵や出会い、つながりがあると、さまざまな困りごとも解決に近づくことを体験できました。
  • ゲームの中に「まちの電気屋さん」「なじみの喫茶店」など地域の資源が登場し、関係性が組み込まれていることがよかった。
  • イラストやツールのデザインが工夫されていて、認知症について知らない人でも楽しく学ぶことができました。

*「認知症世界の歩き方play!」の詳細や体験会情報はこちら

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