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【寄稿】当事者はこんな風に感じています ともに生きる工夫とは

関西在住で、認知症本人の会「ピア(Peer)」や、認知症カフェの事務局担当などの活動をしている牧田喜久夫さんから、エッセーの寄稿です。

認知症とともに生きる、誰もが自分らしく生きられる未来へ

今から僅か5年前、2015年のこと。認知症のことを知らない私が、認知症を知りたいと思い調べた時のこと。認知症とは、街の中をさまよい歩く人(いわゆる徘徊)、スーパーの食料品売り場の食品を手当たり次第に口にする「窃盗」を平気でする人、他人や家族に対して殴りかかったり暴力的行為をとる人、所かまわず用を足す人、ウンチを手に取り家中に塗りたくる人、今言ったことを理解できず何一つ覚えられない人―――といった症状が「必ず現れる」とした本や情報が溢れていた。

■「アルツハイマー病になった人には何を言っても意味がない」という人がいた

ドラマや映画でも、「認知症になると、このような状態になるのだ!」という内容のものばかりで、原作者自身が「アルツハイマー病になった人には何を言っても意味がない!勉強なんざ意味がない!」と言い放っている講演会もあった。僅か5年前の出来事。

2004年に国際アルツハイマー病協会(ADI)の国際会議が日本で開催され、「日本でも認知症の本人から声が上がった」と伝えた記事があったようだが、結局、その後もそれ以前となんら変わっていない。書店には、医師や認知症中等度以上の家族介護者による、介護の惨状のみを取り上げた書籍が並んでいた。

11月に開催された「認知症カフェひまわり」の様子

2014年10月11日、「日本認知症ワーキンググループ(Japan Dementia Working Group)」が設立されました。その後2017年春にADI国際会議が京都にて再度開催され、その秋にはJDWGが「日本認知症本人ワーキンググループ」と改名され一般社団法人として登録されました。日本国内でも認知症本人の著書が出版され、各地で本人発信の講演会が開かれています。しかしまだ、認知症介護は辛く地獄だと言った本があり、報道に至っては「ひどい状態が認知症の現実だ」といった映像表現を好んで放送している。そんな状態のなか、認知症と診断される人が今も増えている。

医療関係者の人でも、「認知症の診断を受けると、そんなふうになってしまう」と言う人は多い。それは報道やメディアから、未来がないような情報しか流れてこないからだと私は感じている。

■私たちは工夫をしながら、それまでの生活を続けている

実際の私たちは、生活の中で、認知症の症状としてできなくなってくることはあるが、それらに対して工夫をしながら生きている。それを繰り返す中での違和感を、医療の観点から見ていただいたときに、「生活上の認知機能に障害がある」と医師が認めたら認知症という診断がつく。それだけのことなのに。認知症と診断されたからといっても、すぐに生活できなくなるわけではなくて、それまでの生活を続けていくことができる。

たとえば主婦として料理が苦手になった方は、味付けに問題があるならば、それまでずっと食べてきて味を覚えている家族の舌に頼ればいい。運転も家族の世話になればいい。自分のペースでは動けないが、そこは仕方がないと諦めよう。出来なくなったこと、苦手になったことは、周りを頼ろう。そうすれば随分と生活が楽になります。

今でもまだ、認知症に対するイメージは座敷牢の時代からさほど変化がないかもしれないが、認知症と診断された本人と、その家族がいちばん、本当の症状を分かっているのだから、そんな間違った認知症観に惑わされることなく人生を歩んでほしいと願います。

新型コロナウイルスの感染拡大前に開かれた「認知症カフェひまわり」の様子

■「本人を支援する」は「一緒に楽しむ」ことだと思う

認知症の人のご家族から、こんな声をよくお聞きします。

  • 家族が認知症になったから旅行に行けなくなった
  • 家族が認知症になったから外出できなくなった

できなくなってしまったことを嘆き後悔しているんだね。
諦めることで、自分を保っているんだね。
でも、このようなことを、事あるごとに家族から言われる本人は、自分を情けなく感じ、いつも自分を責めてしまうんだ。

「認知症の人を支援する」と銘打った活動では、「やってあげる」が高じて本人より先に先に色んなことをやりすぎてしまうことがあります。でも私は、「認知症とともに生きる人を支援する」ということは、認知症とともに生きる人と、ともに楽しむことだと思います。

たとえば、こんなことです。

  • 服を着るのに時間がかかる人は、どこが難しいのか? それを当事者と共に考え、どうすれば着替えがスムーズになるのかを一緒に考えてください。
  • 床のタイルや横断歩道のゼブラゾーンが立体的に見えて、まるで底なし穴に落ちるような気がして1人では前へ進めない人もいます。その手を取って、一緒に一歩踏み出し、その勇気を支えてください。
  • 旅行やショッピングにだって行きたいです。1人では難しいとき、家族だけでは難しくなったとき、どうすれば旅行に行けるのか?どんな工夫が必要なのか?一緒に計画を考えてください。

■ウキウキワクワクが止まらない出会いをつくろう

当事者のみなさん、認知症の原因疾患も、病気なのだから、進行はします。そういう心配ごとも、話せる仲間は案外そばにいますよ。あなたも勇気を出して、外の世界へ踏み出してみてください。
近くに見つからないならば、または近くで探すのが嫌ならば、隣県や隣市を探すこともできます。
家族も同じです。相談できる場所が数多くあります。本人よりも家族の相談できる場所はめちゃくちゃ多いです。

きっと出かけていった先には、いっぱいの笑顔があり、楽しいひとときが待っています。その笑顔に出会ったら、もう心の底からウキウキワクワクが止まらない。そんな出会いが待っています。
そんな笑顔のために、一緒になって頑張ってくれている、支援してくれる、ともにいてくれる人が沢山おられます。

ともに歓び、楽しいことを考えてくれて、一緒に活動してくれる仲間を作りましょう。
そんな場所に出会うキッカケを求めましょう。
ほんの少しの勇気がきっと出会わせてくれますよ。

牧田喜久夫
1963年生まれ、関西在住。自動車販売会社に在職中、指示されたことを記憶できず業務に支障をきたすことがあり、病院を受診。病状に改善の見込みがないことから「任せられる仕事はない」と勤務先から戦力外通告を受け退職。2015年、退職後に認知症との診断が出た。2017年から参加する「認知症カフェひまわり」で、現在は事務局を担当。また、NPO法人「播磨オレンジパートナー」では、「本人の生きがい支援事業」の一環として2019年から「本人の会 ピア(Peer)」を担当している。

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