介護の裏ワザ、これってどうよ?

ばーちゃんと母の愛憎劇 フィナーレはこれだ これって介護の裏技?

青山ゆずこです! 祖父母がそろって認知症になり、ヤングケアラーとして7年間介護しました。壮絶な日々も独学の“ゆずこ流介護”で乗り切ったけれど、今思えばあれでよかったのか……? 専門家に解説してもらいました!

ばーちゃん「まったく親の顔が見てみたいみんだね!」ゆずこ母「うるさいわね! 鏡でも見ときなさいよ」

理不尽な仕打ちに、ついに母がブチ切れて!?

突然の暴走や暴言も、本人の中ではなにか理由やきっかけがあるのでしょうが、毎回それを必死になだめる家族もなかなか大変です。
わたしは「おばあちゃんと孫」という、ある程度の距離があったのでなんとか冷静さを保てましたが、厳しかったのは母のケースです。
母の中では、元気で世話焼きだった昔の“母親像”が色濃く残っていて、認知症になって日々変わっていくばーちゃんをいつまでも受け止められないでいました。
相手との距離が近いからこそ、愛情が強いからこそ受け止められなかったのかも知れません。でも認知症の方の介護は、介護する側が現実を受け止められないとすぐに心が潰されてしまいます。

母は月に2回、仕事終わりに高速道路を3時間近く飛ばして介護に来ていました。ただでさえ現実を受け入れられないのに、疲れ切った体で家事をしたりお風呂やごはんの介助をして、さらに「お前は私たちを捨てて嫁にいった!」「あんたの世話にはなりたくない!」と興奮したばーちゃんの罵声をもろに受けます。わたしも間に入って何度も止めていたのですが、「ありがとう」の一言もなければ反対に「出ていけ」と怒鳴られる。逆上したばーちゃんは、バックやスマートフォンなど母の荷物を「出ていけ!」と言わんばかりに玄関の外に投げ捨てることもありました。
そして、「これも“オマケ”にいらないよ!」とついでに投げ捨てられたのは、ゆずこのサイフと買ったばかりのカバン。なんかオマケってしょぼくないか(グチグチ)。

分かっていても、言われるのはつらい

そしてすぐにばーちゃんと母のバトルが勃発します。だから同じ土俵で戦っちゃダメだってば。
じーちゃんvsばーちゃんのケンカのように、こうなったらとにかくお互いを引き離してなんとかクールダウンさせるしかありません。そんなときに母に、「ばーちゃんは認知症なんだから、振り回されないようにこっちが立ち回ろうよ」と声をかけるのですが、すると母は「認知症だからって、そう言われたら私の逃げ場がないじゃない!」と、よりヒートアップするのです。
この「認知症だからしょうがない」という言葉は、実はあまりわたしも好きではありません。気持ちの落としどころを作るために、自分が言う分にはいいのですが、人から言われると本当に逃げ場がなくなってしまうのです。
「わかってるんだけど……わかってるんだけど、どうにもできないんだよ!」と頭を抱えてしまう。
ばーちゃんも理不尽なことを言ったり暴れたりするけど、決してわざとではない。
母やばーちゃんを思うとやりきれない気持ちでいっぱいになりますが、わたしも最初から柔軟に対応できていたわけではありません。

こっそり泣いて、ストレスで暴飲暴食して、悔しさに耐えて、苛立って餃子をヤケ食いして、ストレスで体調を崩して、気分転換にホールのケーキ食べて……あれ? 食ってばっかだな。

「ごめんね」は自分を守ってくれる言葉。

とにかく、ばーちゃんの突然の暴言や暴走をきっかけにバトルが勃発すると、そのたびに必死に母をなだめたり距離を取らせることしかできませんでした。本当はもっと何かやり方があったのでしょうか。
東北福祉大学福祉心理学科の教授で日本認知症ケア学会の理事、そして『認知症になるとなぜ「不可解な行動」をとるのか』(河出書房新書)の著者である加藤伸司先生にお話を聞きました。

「ゆずこさんのお母さんの、やりきれない気持ちも痛いほど分かります。昔の思い出が色濃く残っているからこそ、現実を受け止められないのでしょうね。でも、現実を受け止めるということは、相手に振り回されずに“自分を守ってあげる”ことに繋がるのです。
なるべくストレスを減らすためには、暴言や暴走を短い時間で止めることが大切です。そこで有効なのは、自分が悪くなくても『ごめんね』と謝ってしまうことです」

一度それもそれも試してみたんです。ばーちゃんを落ち着かせるために、とにかく謝っちゃおうって。でも母は、「なんで私が謝らないといけないの!」「私は悪くない」と突っぱねてしまって……。

「そう、一見すごく理不尽ですよね。でもこれが結果的に自分を守る術でもあるんです。相手の怒りが長引いて、精神的にもっと大きなストレスを与えられる方が辛いはずです。
だから悪くないのに謝るという理不尽なことでも、『口先だけの謝罪は、一つのワザなんだ』と割り切ってしまう。心は込めなくていいんです、その一言が自分を守ってくれるんだと思えば意外と言えるものです。真っ向から戦うのではなく、言葉をうまく使ってひらりとかわす。自分を守ることも、決してないがしろにしないでください」

「ごめんねー、ごめんねごめんねー(気分はU字工○)」「あんた・・・(怒)」

介護も大切ですが、自分も大切です。ちなみにわたしは、お笑い芸人のU字工事さん並みに「ごめんねごめんね~~~♪」と軽くばーちゃんに言ってしまい、「ふざけてるんじゃないよ!」と余計に怒られました。軽すぎるのも逆効果のようです。
ごめんねごめんね~……。

加藤伸司先生
東北福祉大学総合福祉学部福祉心理学科教授。認知症介護研究・研修仙台センターセンター長。日本認知症ケア学会副理事長。近著に『認知症になるとなぜ「不可解な行動」をとるのか』(河出書房新社)、『認知症の人を知る―認知症の人はなにを思い、どのような行動を取るのか』(ワールドプランニング)など

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