認知症とともにあるウェブメディア

なかまぁるクリップ

高齢者ホームのディスコに潜入 令和のダンシングクイーンは誰だ!?

2019年7月9日、特別養護老人ホーム・陽のあたる丘MISONO(横浜市)で、入所者やショートステイの利用者を対象に「DJ OSSHYディスコショー」が開催されました。ディスコが日本で大流行したのは、1970年代から80年代のこと。当時から、選曲やレコードの再生操作、おしゃべりなどでディスコを盛り上げる「DJ(ディスクジョッキー)」として活躍してきたOSSHY(オッシー)さんによるイベントです。どんな賑わいになるのか、編集部がちょっとのぞいてきました。

左から介護福祉士ダンサーの野毛美邦さん、DJ OSSHYさん、全日本応援協会の理事の朝妻久実さんと白石加奈さん
左から介護福祉士ダンサーの野毛美邦さん、DJ OSSHYさん、全日本応援協会の理事の朝妻久実さんと白石加奈さん

曲がかかると同時に会場が一体に!

梅雨の雨雲が垂れ込める昼下がり、陽のあたる丘MISONO の広々とした多目的スペースに昼食を終えたお年寄りたちが続々と集まってきた。前方には音楽の再生機材がずらりと並び、集まったお年寄りたちはこれからどのようなイベントが始まるのか、興味津々だ。
その期待に応えるように、クリーム色のスーツに身を包んだOSSHYが登場。
「みなさん、こんにちはー!! DJ OSSHYです。元気で健康になれるディスコショーの始まりです!」
高らかに開会宣言をすると、音楽が流れ始める。
「令和初の開催。記念すべき一曲目は『ダンシング・クイーン』。スウェーデンのコーラス・グループABBAが歌い、1970年代に大ヒットした曲です。さぁみなさん、踊りましょう!」
とOSSHYさん。すぐ横でスタンバイしていた介護ダンサーの野毛美邦さんが
「両手を挙げて、左右に揺らしまーす。はい、ひだりー、みぎー…」
と声を掛けながらお手本を見せると、お年寄りたちは自然に手を挙げて揺らし始めた。高く手を挙げることができる人、体の拘縮があるため胸の手前で小さく動かす人…やり方はさまざまだが、右に左に揺れる手がウェーブのようになり、会場は不思議な一体感に包まれた。

曲がかかると、うつむいていた顔も手も上げて踊り出した
曲がかかると、うつむいていた顔も手も上げて踊り出した

高齢者にもおなじみのあの曲が!

「お年寄り世代にもディスコの楽しさを伝えたい」というOSSHYさんの思いを込めた「高齢者ディスコ」は、2017年からさまざまな介護施設で開催され、陽のあたる丘MISONOで6か所目。今回はテレビ朝日福祉文化事業団による福祉イベントの一環で行われた。
オープニングからフィナーレまで約1時間。途中休憩をはさんで流す17曲のうち、3分の2は、1970年~80年代に流行した海外のディスコミュージックだ。残りの3分の1は、「365歩のマーチ(水前寺清子)「東京ブギウギ(笠置シヅ子)」など、高齢者にもおなじみの日本の曲を流す。
「ディスコ本来の臨場感を味わってもらうのが目的なので、あえて洋楽を多めにしています」
とOSSHYさん。ナイト・フィーバー(ビージーズ)やY.M.C.A.(ヴィレッジ・ピープル)のように、テレビ番組やCMなどで頻繁に流されたり日本人歌手によってカバーされ、お年寄りに『この曲、どこかで聞いたことのある』と親近感を持ってもらえる曲をセレクトしているという。

音楽に合わせて手を振り、終始楽しそうにしていた人が多かった
音楽に合わせて手を振り、終始楽しそうにしていた人が多かった

陽のあたる丘MISONOの入所者は、要介護4または5が大半を占める。ディスコに参加したお年寄りはほとんどが車いすだが、上半身だけで踊れる振り付けばかり。また、認知機能レベルが落ちている人や認知症と診断されている人も少なくないが、1曲につき1つの動作の繰り返しで構成され、複雑な動きはなく、わかりやすい 。OSSHYさんによる振り付け内容の説明も「くるくる手を回して、糸巻のポーズです」「機関車の車輪みたいに、両手を体の真横で動かして…はい、シュッシュッポッポッ!」などと、お年寄りがすぐにイメージして体を動かせるように工夫されている。

大笑いのお年寄り 104歳の女性から花束も

きよしのズンドコ節(氷川きよし)では、「芋ほりダンス」を指南した。
「DJ界の氷川きよしがやってまいりました! 鍬を持って後ろから前へ。はい、掘ってー掘ってーまた掘ってー。いっぱい芋を掘りましょう。掘ったら担ぎます、よいしょ!」
OSSHYさんがテンポよく繰り出す振り付けの説明に、お年寄りは大笑い。曲が進むにつれてどんどん笑顔が増えていく。「疲れて途中でやめてしまうのでは…」という予想は大きく外れ、多くのお年寄りが1時間体を動かし続けていた。

施設最高齢104歳の女性から花束を受け取り、OSSHYさんの笑顔も最高だった
施設最高齢104歳の女性から花束を受け取り、OSSHYさんの笑顔も最高だった

フィナーレはボーイズ・タウン・ギャングの「君の瞳に恋してる」。OSSHYさんが
「今この時間、僕は本当に幸せです。ディスコタイムを日常でも。末永く元気な毎日をお過ごしください。またお会いしましょう!」
と挨拶をすると、自然に大きな拍手が沸き上がった。踊り終えたお年寄りたちに多少の疲れは見えるものの、笑顔でいっぱい。
お年寄りたちを各部屋に送り届けた施設長の小岩井成夫さんはこう話した。
「認知症の方もみなさんニコニコしながら最後まで参加されていて、とても楽しそうでした。いっぱい体を動かしたから、今夜はぐっすり眠れるのではないでしょうか」

OSSHYさんのインタビューはこちら

プロフィール
DJ OSSHY(ディージェイ・オッシー)
1965年、東京都生まれ。DJタレント。国立音楽大学特別講師。MCとミキシングを両方こなすDISCO DJのスペシャリスト。80′s ディスコ伝道師。「ファミリーディスコ」「高齢者ディスコ」など、三世代で楽しめるイベントを主催、安心・安全・健康的でクリーンなディスコの魅力を全国に伝えている。テレビ司会の第一人者、押阪忍の長男でもある。「ディスコの日」(7月22日)制定者。

あわせて読みたい

この記事をシェアする

この連載について

認知症とともにあるウェブメディア