認知症の母が喜ぶ毎日ごはん

食欲増す料理が白黒の世界をカラーに変えた 認知症の母が喜ぶ毎日ごはん

フードライター大久保朱夏さんが、認知症のお母さんとの生活のなかで見いだしたレシピを紹介します。にんじんのオレンジやブロッコリーのグリーン。食が細くなった人に、たくさん食べてほしい彩り豊かな料理です。

※料理は普通食です。かむ力やのみ込みに配慮した介護食ではありません

牛肉と野菜のマヨポン和え

父の死後、母は六十の手習いでモノクロ写真を撮り始め、師匠の暗室に弁当持参で通い詰めていた。書棚に木村伊兵衛、森山大道などの写真集が並び、家の片隅で写真展のチラシやチケットの半券を目にすることが多くなった。手焼きプリントは、67歳でアルツハイマー型認知症と診断されてからも数年は周囲の手を借りながら続けていた。

しかし、ある年、熱帯夜に暖房をつけて寝たり、早朝に近所の家を訪問するなどの出来事が立て続けに起こる。母から片時も目が離せなくなったため、しばらく夫と別居し、実家に戻ることに。

母はだいぶ痩せていたので、肉も野菜もたくさん食べてもらえるように料理の彩りを工夫した。たびたび食卓に登場したのが、「牛肉とせん切り野菜の和え物」。毎回「色がきれいね、手早く作るのはさすが」と喜んでくれた。

同居して半年が過ぎたころから、母はクーピーで線や模様を描くようになった。気分のいいときはまるで草間彌生のように何時間もイキイキと鮮やかな線を描いた。「この絵、どう?」とコメントを求められ、数枚の絵を並べながら感想を言い合う時間は豊かだった。モノクロの世界からカラーに変わったのは、母が孤独感から解放されたということだろうか。本当のことはわからないが、老人ホームで暮らす現在も、母は絵を描き続けている。

牛肉と野菜のマヨポン和え

私が学生時代にバイトしていたレストランの調理長が教えてくれた「まかない料理」です。余りがちなブロッコリーの茎を細切りにして使い切れるのがポイント。ブロッコリーの芯がおいしいと母が喜んでくれたのでよく作りました。春雨でボリュームアップして満足感を高めます。ぽん酢とマヨネーズで和えて、まろやかな味にまとめます。

材料 2人分

牛こま切れ肉(またはしゃぶしゃぶ用) 160g
ブロッコリーの茎 1株分
にんじん 20g
春雨(乾燥) 20g
マヨネーズ 小さじ1
ぽん酢 小さじ2
白いりごま 適量

作り方

  1. 牛肉はゆでて火を通し、キッチンペーパーの上に並べて水気をきる
  2. ブロッコリーの茎はゆでてかたい部分を除いて細切りにする。にんじんはせん切りにして軽く塩をふる
  3. 春雨はゆでて戻し、食べやすい長さに切る
  4. ボウルにぽん酢、マヨネーズを入れて混ぜ、水気を絞ったにんじん、牛肉、ブロッコリー、春雨を加えて和える
  5. 器に盛り、白ごまをふる

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