ふさぎ込む母に本人直伝サクサク鮭フライ 認知症の母が喜ぶ毎日ごはん
撮影/百井謙子
フードライター大久保朱夏さんが、認知症のお母さんとの生活のなかで見いだしたレシピを紹介します。サクサクの衣をリズムよく噛めば、生きる力が心と身体にみなぎります。
※料理は普通食です。かむ力やのみ込みに配慮した介護食ではありません
母が「私はバカだ、もう死んでもいい」などと言ってふさぎ込んでいる日は、私も気が滅入る。不機嫌に大きな声を出している日のほうが、元気でよかったと思えてしまう。
母は食卓のイスに腰掛けてじっとしているので、私は、から揚げやフライなどふだんやらない揚げ物をして気分転換をしていた。
食事の支度がほぼ終わったころ、「お母さんの髪は年齢のわりに白髪がないのね」と、話しかける。漆黒の髪は、若いころから母の自慢だった。
母が、うなだれていた頭を上げた。
私はすかさず「爪を見せて」とお願いする。「爪、すぐに伸びちゃうの」と、落ち込んだ口調で言うので、私は「爪の伸びが早いのは栄養がいい証拠。体のすみずみまで栄養が行き渡っているから爪が伸びるんだよ。髪の毛も爪もたんぱく質だから、肉や魚をしっかり食べればまだまだ元気でいられるよ」と励まし、母の自尊心を高める。
子どものころ、母がよく作ってくれたさけフライを食卓に並べた。どうか「私はバカだ、もう死んでもいい」なんて言わないで、しっかり食べて、萎んでしまった生きる力が大きくなりますように。さけの遡上のように力強く!
ひと口鮭フライ
ふっくら、サクサク! 肉よりもやわらかくて食べやすい魚のフライ。ひと口大に切っておくと、食欲に合わせて数の調整ができます。さけは刺身用として販売されているサーモンを使うと、半生でも安心していただけます。
材料 2人分
生サーモン 160g
塩 適量
小麦粉 大さじ2
溶き卵 1個分
パン粉 1カップ
揚げ油 適量
作り方
- サーモンは一口大に切り、塩を振って5分ほどおく
- サーモンの水気をキッチンペーパーで取り、小麦粉を薄くまぶし、溶き卵にくぐらせ、パン粉をつける
- 170度に熱した揚げ油で2を揚げて、油をきる