85歳店長が生ビールで歓待。認知症の人も、そうでない人も集う居酒屋よいよい
取材/朝日新聞編集委員 清川卓史
![「居酒屋よいよい」開店。店長・みねおさん(写真中央)の音頭で乾杯した=清川卓史撮影](http://p.potaufeu.asahi.com/e16f-p/picture/16334220/b4f15c5d280ead0037fd0aa64a35fdfa.jpg)
認知症の人も、そうでない人も、飲み仲間として語り合える。そんな飲み会が、東京・八王子でも始まっています。名前は「居酒屋よいよい」。地元で「社会参加型就労」に取り組むデイサービス「DAYS BLG!はちおうじ」のメンバーさんたちが、お酒や料理を準備して、参加者をもてなしてくれます。乾杯の音頭をとる「店長」は85歳。「誰でも居酒屋」シリーズ番外編としてご紹介します。
「はい、卵焼き、おまたせっ」「遠慮なく、ご注文お願いしますよ」
3月中旬、土曜日の夜に開店した「居酒屋よいよい」。ビールサーバーの前に陣取った、「店長」みねおさんの声が響く。御年85歳。
場所は、京王線北野駅にほど近い地域サロン。コンロなどの厨房もある。認知症や高次脳機能障害の本人や家族、医療や福祉の仕事をしている人、行政マン、学生。30人ほどが詰めかけて、ほぼ満席状態だ。
![お酒と料理を楽しんで、みな笑顔に=清川卓史撮影](http://p.potaufeu.asahi.com/43ef-p/picture/16334222/1729350a9eafd3dba54fff6ab3cdc26a.jpg)
テーブルのメニュー表には、シェフ「みなみちゃん」が腕をふるう「ベーコンときのこのソテー」「チーズ竹輪のカレーマヨ焼き」などなど、こだわりの手作り料理が並ぶ。飲み物も、ビールサーバーでみねおさんが注ぐ生ビールのほか、焼酎、ハイボール、日本酒は「高尾山」「獺祭」などの銘柄が並んで、本格的だ。
![「居酒屋よいよい」の料理担当はみなみちゃん(写真右から2人目)=清川卓史撮影](http://p.potaufeu.asahi.com/a2e4-p/picture/16334223/0f9bc1fb32c36533f66891163f16b62a.jpg)
メニューの考案、仕込みや調理、接客まで、八王子で活動する介護保険のデイサービス「DAY BLG! はちおうじ」に通うメンバーさんが担当している。みねおさんも、その一人だ。「生ビール、おいしいところお願いしますー」。次々におかわりの声がかかって、席を温める間もない。
![ビール担当の店長・みねおさん。おかわりの注文が続々と=清川卓史撮影](http://p.potaufeu.asahi.com/1fdc-p/picture/16334225/569fefbf227869dc7548c9d1c4c139e2.jpg)
飲み食いする人の参加費は3千円。3回通うと500円割引になるポイントカードももらえる。今年1月に初めて開催し、3月は2度目の開店だった。
それにしても、どうしてデイサービスの仲間で居酒屋なのか。
「DAYS BLG! はちおうじ」を運営する守谷卓也さんによると、きっかけは、みねおさんの一言だった。
みねおさんは長年、近所の人や同級生を自宅に呼んで、毎週のようにカラオケ大会を開いていた。そのカラオケ大会が最近、事情があってできなくなった。みねおさんは、楽しみがなくなって急に元気がなくなってしまったという。
「みねおさんに『なにがしたい?』とBLG!で聞いたら、『みんなをもてなしたい』と。じゃあみんなで居酒屋でもやろうかって話になりました。
「もてなす側のメンバーさんたちにとっては働く場でもあるので、黒字がでれば、そこからささやかながら『お給料』もでます」
みねおさんは「よいよい」という店名の発案者でもある。
「年齢的にもう『よいよい』しているから、『居酒屋よいよい』がいいんじゃないかってね。酔うともひっかけてさ」
(次回も番外編。店長みねおさんのインタビューをお届けします)
![](http://p.potaufeu.asahi.com/nakamaaru/img/nakamaaru450_450.gif)