飲み会盛り上げる85歳。認知症をオープンに語る「店長」にインタビュー
取材/朝日新聞編集委員 清川卓史
前回に続く番外編、「居酒屋よいよい」です。東京・八王子で社会参加型就労に取り組むデイサービス「DAYS BLG!はちおうじ」のメンバーさんたちが、お酒や料理を準備して、参加者をもてなしてくれます。今回は、85歳の「店長」みねおさんのインタビューをお届けします。八王子空襲も体験した最年長のメンバーさん。「若いうちは、酒場でみんなの話を聞いているだけでも、いいもんですよ」。そう語ってくれました。
――「居酒屋よいよい」開催のきっかけは、ご自宅で開いていたカラオケ大会ができなくなって、みねおさんの元気がなくなってしまったから、とうかがいました。どのぐらいの頻度で集まっておられたのですか?
「近所の人や同級生が自然にウチに集まるようになって、週2回のペースでやってました。参加者は毎回7、8人かな。通信カラオケの機械まで入れちゃってね。お酒は持ち込みで会費制でやってました。家内もずいぶん協力してくれました」
――週2はかなりの頻度ですね。もともとご近所や友人との交流、つながりを大切にされていたんですね。
「そうですよ。歌とお酒が元気のもと。人との会話が大事だね」
――本物の居酒屋にもいくのですか?
「週1回だけいきつけのお店に行ってますよ。飲み過ぎたらいけないから週1回に減らしたんです」
「若いうちは特にね、酒場で飲みながらみんなの話を聞いているだけでもいいもんですよ。ぜひ今度一緒に飲みましょう」
――「居酒屋よいよい」ではカラオケはしないんですか?
「やってみたい気持ちもありますよ。でも、歌の嫌いな人もいるしね」
――「居酒屋よいよい」、2回開催していかがですか?
「いくらかアルコールが入っているから会話が正直になってね。和気あいあいで、いいんじゃないですか。酔っ払ってそそうをするお客さんもいなかったしね」
――「食べたいものがあったら、ちゃんと注文してくださいよ」と私(記者)にも声をかけていただいて、店長としての目配り、気遣いを感じました。
「雰囲気を盛り上げたいという気持ちが強いんですよ。みんな楽しんでるかな、と気になる。現役のときは公務員でしたから、居酒屋の店長は見よう見まねでね」
「これからは注文用に紙のチケットを用意しておくとか、さばき方も工夫してやっていこうと思っています。そういうこと考えるの、好きなんですよ」
――「よいよい」ではあまり飲んでおられなかったように見えました。
「店長だから、責任があるからさ。ちょっとは飲むけど、酔っ払うような気持ちにはなれないんです。こっちはしっかりしてないと」
――どなたが認知症やご病気の方なのか、みんなで飲んでいるとわからないですね。
「区別がわからないでしょう。私自身も自分が認知症だという意識が強くないですから。もの忘れが多くなってきたかなって感じるぐらいで。家族に言われても自分はそんなつもりがない。あ、だから病気なのかなとも思うけど。ときには自分でもあれ?と思ったり、ごまかしたりすることもある。でも、飲み会の予定は忘れないよ(笑)」
――認知症を隠す方がまだ多いなかで、みねおさんはオープンにして前向きに活動しておられますね
「遅かれ早かれ、みんなそうなっていくんだから、隠したって仕方がない」
――「店長」を引き受けて、いかがですか
「自分にとってはいい経験だなって思ってます。つい年だからって逃げたり、ごまかしたりしがちなんだけどね。なんでも首突っ込んでやってみようっていう気持ちを持てば、あまり認知症も重くならないんじゃないかなと思ってます」
「これからも店長としてできる限りのことはしたい。のれんやちょうちんでもつくろうかなって思ってるんですよ」